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507.塔の激闘

 ベティーナたちにとっては喜ばしいことなのかもしれないが、彼女と自分がここで出会ったとは言え、最初から相手の手の内で踊らされていたルギーレにとっては不愉快極まりない。

 だから礼を言われても何も嬉しくない、とベティーナを睨みつけながらルギーレは言うが、ベティーナはそんなルギーレに対してクスッと笑って続ける。


「そう……じゃあ、嬉しくなるプレゼントをあげるわよ」

「何だ、ここで降参すんのか?」


 そーやって騙そうったってそうはいかねえぞと身構えるルギーレだが、それ以上の「プレゼント」をベティーナは用意していたらしい。


「ううん……ここの調査のために一緒に来ていた騎士団員たちと私で、あなたたちに死をプレゼントするわ!!」


 やっぱり自分たちの敵であるのは間違いないらしい。

 そう考えたルギーレは、背中に背負った槍を自分に向かって突き出そうとしてきたベティーナを先制攻撃で思いっ切り前に突き飛ばし、階段の下に向かって前蹴りで彼女を蹴り落とした。


「きゃああっ!?」

「くっそ、一旦逃げるぞ!!」


 下の方から騎士団員の増援が来ているとなれば、この狭い通路の中で囲まれる展開は避けたい。

 階段はそれなりに広くなっているのだが、それも限度がある。

 何より、最初にあの魔術師の男が生み出した魔物の集団と戦った時のように、これだけの人数が階段で戦えば乱戦は必至。

 もしかしたら味方を誤って攻撃してしまうかもしれないし、それでなくても魔術で巻き込んで被害が及ぶかもしれない。

 その乱戦を避けるべく、パーティメンバーは来た道をまた引き返し始める。


「隅から隅までくまなく調べるんだ!!」

「お前たちはそっちを、俺たちはこっちを探す!!」

「ここにいることだけは確かだ。見つけたら絶対に逃がすなよ!! 特に聖剣使いの男は絶対に探し出せ!」

 聖剣使いの男といえば間違いなく自分のことだ、とルギーレは確信。

 複数の怒声が響き渡り、塔の至る所にバタバタと慌ただしい足音がいくつも響き渡る。


(まずいな!!)


 これは一刻も早く敵を倒して一階の出入り口を目指すべきだと思ったルギーレは、自分が覚えているその吹き抜けの場所へと足を進めて行く。

 これだけの高さの塔なのに階段が一か所しかないと言うのは明らかな設計ミスなんじゃないか? とルギーレは考えるものの、とりあえずそんなことを考察している場合でもないので先ほどの渡り廊下が沢山ある吹き抜けの場所に戻った。

 ここから先は階段が両側に一か所ずつあり、一部が崩れているとはいえ渡り廊下を通っての移動もできるので、戦う場所をなかなか選びやすい。

 しかし多勢に無勢なのはどうしても否めない。


「いたぞー!!」

「ちっ!」


 ベティーナの増援としてやって来た騎士団員たちに早速見つかったルギーレは、舌打ちをして踵を返してから階段を上る。

 その階段を上る途中でストップして身体の向きを反転させ、さっきのベティーナと同じく襲いかかってきた騎士団員を階段の下に蹴り落とした。

 更に続けて向かってきた騎士団員には、まず普通にしゃがんで攻撃をやり過ごし、そのまま勢いづいて真っ逆さまに落ちて行ったのを見届けてからルギーレは先へ進む。

 その階段から繋がっている通路は余り広くもないので、上っていく時の魔物と戦った要領で今度は騎士団員たちを相手にする、ルギーレを始めとするパーティメンバー。


(まだまだ戦いは終わっちゃいねえってことか!!)


 やっとレイグラードを上手く扱えるようになってきたルギーレも、そのレイグラードとキックを駆使して戦う。

 更に斬ったり突いたり蹴ったりするだけでなく、通路から続く部屋のドアに上手くその騎士団員の身体を挟み込んだり、更に上の階に向かってそこから下に敵の身体を投げ落としたりと、地形を存分に活用して戦力差を少しでもカバーする。

 ベティーナはこの塔を調べるのにそれなりの人数を連れてきているらしいので、その人数をここで減らせるだけ減らしておきたいと考える一方で、まだ気になることがルギーレにはあった。


(そういえば、ベティーナとあの魔術師みたいなやつって知り合いじゃねえのか……?)


 先ほどの反応を見る限り、どうやら本当にベティーナとあの魔術師らしい男は知り合いではなさそうだった。

 実際には彼女を問いただしてみないとわからないのだが。

 もしくはセバクターがこう言っていたので、セバクターに聞いてみればわかるだろう。


『そいつは……俺がずっと捜している男だ。あいつだけはどうしても逃がすまいと思って捜索を続けていたが、最近になって目撃情報があった。それで旅行を中断してこっちに来てみたら……そうか、あいつだな』

『知り合い……なのか?』

『知り合いなんてもんじゃない。あいつはこの世から追放するべき魔術師だ。生かしておいたら危険な存在だからな』


 そんなことを考えているルギーレの目に、恐ろしい素早さで肉迫してくる人物が映った。

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