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502.それでも進むしかない

 そのまま通路を抜けるとまた階段があり、ルギーレは十六階へと進む。

 今度はまた同じく吹き抜けの階層があるのだが、明らかにさっきの十階から一五階と比べると狭い。

 その代わり、壁や床の材質が気のせいか豪華なように見える。


「何か、雰囲気違うな……?」


 キョロキョロと周りを見渡してルギーレが呟く。


(なるほどな、ここから上までは障害物のない完全な吹き抜けか。正方形の吹き抜けが中央にあって、四方に通路が続いて色々な部屋があるみたいだ)


 吹き抜けから下を覗いて目を細め、十六階から上の階層の分析をして更に上の階を見据えているルギーレは納得の表情を見せる。


(そうか、ここから上の階層は重要人の御用達って感じだな。恐らくこの上はあれだ……この塔の中の権力者たちが住居とかで住むエリアなんじゃないか? ここから見えるだけでも向こうには鍛錬場とかがあるみたいだし、豪華そうな部屋も見えるし、壁とか床の造りも高級感が垣間見えるから、借りるのにもそれなりの金が必要になる階層じゃないか?)


 ルギーレはそう考えつつ、再びワラワラと現れた魔物の集団を倒していく。

 通路が狭いという状況を逆に活かし、突き攻撃主体の攻撃でなるべく直線的な戦い方を心かける。

 更には壁を蹴って魔物の頭上を飛び越えて後ろに回り込んだり、蹴って勢いをつけて斜め上から魔物の東部目かけて突き攻撃を繰り出したり、壁にアンデットの頭を叩きつけて粉々に砕いたりと壁にもこれだけの戦い方のパターンがある。

 かつては役立たずと罵られていた彼は、これまでの数々の敵との戦いを通じて少しずつ成長しているようである。

 そうしてようやく、通路を魔物の体液と血でビチャビチャに汚してひと段落つくルギーレ。


「はぁ……何とか、なったかな……」


 やはり広い場所と比べて、狭い場所では戦い方のパターンが限られてしまう。

 それに挟み撃ちにされてしまったら逃げ場がなくなってしまうので、戦うなら広い場所の方が苛立ちも溜まらない。

 敵の増援がやって来ない内に、ルギーレは吹き抜けの周りをグルグルと迂回する構造の階段を上って十七階、十八階と次々に踏破する。

 もちろん、今までのパーティメンバーたちが引っかかってしまったようなトラップがあるかもしれないので用心することも忘れない。


 そうしてようやく十九階までやってきたのだが、ここまでであの魔術師はどこにもいなかった。

 となれば、残るは……。


「ここにもいねえってことは、この上しかねえよな。だけど俺はもう足が限界だ……」


 残っている二十階に進みたいのは山々なのだが、そもそも二十階建ての塔をこうして敵を倒しながら上がってきただけでも、脚にはかなりの負担がかかってキツい。

 しかもその上、あの二階部分で金属製の魔物たちを相手にしたことから始まって、デカブツの機械兵器から逃げ回り、その後も塔の各地で魔物たちを相手にしながら進んできた。

 それからあの魔術師(?)の男にトラップを仕掛けられ、レディク、ヴァラス、ガルクレスとパーティメンバーが次々に離脱して戦力が落ちたのだから、その分は残った彼の負担が大きくなるのは当たり前の話だった。


(ったく……これじゃマルニスとセルフォンに出会う前に俺がくたばっちまうぜ)


 壁を背にして二十階への階段の前で座り込んで体力を回復させるルギーレ。

 あの魔術師がまだ何かトラップを仕掛けていないとも限らないし、他にも攻撃の手段を持っているかもしれない以上、疲れた頭と身体で進むのはそれこそ自殺行為だと思ったからだ。

 他のメンバーのこともあって急ぎたい気持ちもあるのだが、それでも疲れには勝てない。

 しかし、そんな彼を容赦なく駆り立てる存在がまた現れる。


「ったく、休ませてくれない場所だな……ここは!!」


 バタバタと十九階に足音が聞こえてきたかと思えば、また魔物の軍勢が現れたのだ。


(でもやるしかないんだ。そうだろう?)


 心の中で自分で自分にそう言い聞かせながらルギーレは立ち上がり、突っ込んできた魔物をまた一刀両断して血と内臓もぶちまける。


「さぁテメェら、死にてえ奴からかかって来やがれえっ!!」


 そう言いながらレイグラードの力で魔物たちを殲滅して突き進み、その先にある階段を二段飛びで駆け上がってルギーレは最上階に辿り着いた。

 そこは今までの階層とは違い、どうやら部屋が一つだけしか存在しないらしい。

 ならばもう迷う必要はないとばかりに、ルギーレは両開きになっている豪華なドアを階段を上り切った勢いそのままで前蹴りを繰り出し、かけ声とともに蹴り破る。


「……でやあっ!」


 絶対にそこにあの魔術師(?)の男がいる……と思いきや、目に入ったのはもぬけの殻となっている豪華な部屋だけだった。


「あ、あれ?」


 キョロキョロと室内を見渡してみるが誰もいない。

 部屋の中は火の点いていない暖炉が設置されていたり、小さなカウンター席の酒置き場が設置されていたり、大きなテーブルが窓のそばに椅子とセットで置かれていたりと、まさにこの塔からの眺めを一望できる場所になっている。

 しかし、今の彼にとってはそんな眺めなどはどうでもいい。

 あの男がどこにいるのかが問題なので、もう一度注意深く部屋を見渡してみると「それ」が目に入った。


(……そうか、あそこが屋上に繋がっているんだな!!)

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