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500.上階の罠

 レディクをその階層に残したまま、更に一同はその階層を探索する。


「当然だが、まだまだ上があるんだよな」

「ああ。レディクを余り待たせちゃまずいから早く上に向かおう」


 メンバーが減って戦力がダウンした今、五人は塔の最上階まで早く突き進むしかない。

 だが、その上の階層に向かって塔の中を突き進む間にもまた魔物が通路で行く手を阻んでくる。


「どけええええ!!」


 ガルクレスが先陣を切って飛び込み、その後ろから残りの二人で援護する。

 メンバーが減ったことで後ろからのサポートが今までよりも少なくなるのは当然だが、空を飛び回るタイプの魔物に対しての攻撃手段が少なくなった方が痛い。

 幸いなのはこの階層を始めとして、屋根のある屋内が戦う場所なので自由に飛び回ることができる環境ではないことだろうか。

 しかし、その天井が低いことが更にこの後パーティメンバーを追い込む展開に繋がるとは、この時点では誰も知る由もない。


「よし、階段だ!!」


 基本的に、上の階層に進む階段はそれぞれの階層に一つだけ。

 それを見つけてしまえば上に進めるので迷うことはないのだが、例えばパーティを分ける形で上の階層へ進む……という作戦が使えないのはデメリットだ。

 パーティが固まって進めるメリット、戦力を分散できないデメリット。

 一か所に固まるということは、当然纏めて狙われやすいということでもあるので、階層にいる魔物と戦う時はなるべくばらけてそれぞれが戦うように心掛けている。


「くそ……あの魔術師みたいな奴は一体どこに行ってしまったんだ?」


 まさか自分たちが塔を上っている間に外に出てしまったのかもしれないが、元々ここにきた目的はルギーレがマルニスとセルフォンに再会するために必要……かもしれないアイテムを探すことなので、あの魔術師は別に倒しても倒さなくても良い存在かもしれない。

 その「かもしれない」の予想をしながら一行は九階まで上がってきたのだが、ここで次の事件が起こる。


「ふぅ……ここも片付いたな」

「ああ、それじゃあそこの階段から上に進むぞ」


 八階も制圧して更に上に向かうべく、一行は見つけた階段を上ろうとした。

 だが、今までずっと魔物と戦ってきて疲れと乳酸が身体に溜まっており、レディクを待たせていることもあって焦りもストレスも溜まっているこのパーティは、階段を見つけたことで心に少し余裕ができた。

 その「余裕」は言い換えれば「油断」になる。

 完全に階段の方にばかり注目していたパーティメンバーがその階段に差しかかった時、最後尾を歩いていたヴァラスが天井の違和感に気づく。


「……!?」


 階段と通路の境目の天井に、青白い魔法陣が張り付く形で唐突に展開される。

 それを見て、とっさにヴァラスは先を進む二人に向かって叫んだ。


「おい、危ないぞ!!」

「え?」


 振り向いたガルクレスを思いっ切り階段の方に突き飛ばし、その勢いを利用して自分は後ろに飛ぶヴァラス。

 その瞬間、魔法陣が爆発して天井がガラガラと崩れ落ちてくる!!


「うおおおおっ!?」


 突き飛ばされたガルクレスがルギーレも一緒に突き飛ばすようにして、階段に倒れ込んで難を逃れた二人。

 しかし、ガルクレスを突き飛ばしたヴァラスは……。


「お、おいヴァラス!! 生きてるのか!?」


 天井のガレキの向こうに消えて行ったヴァラスに対してガルクレスが呼びかけると、無事なトーンの声で返事が。


「ああ……私は何とか大丈夫だ。でも後ろに飛んだ時に腰を打ってしまったんだ」

「何だって!?」


 腰は人体のバランスを取るための大事な部分なので、そこにトラブルが発生すれば機動力は大幅に低下する。

 とにかくヴァラスの手当てのためにガレキを退けようとするルギーレとガルクレスだが、想像以上のガレキの多さでなかなか作業が進みそうにないのを見て、当のヴァラスは作業をストップさせる。


「君たちも疲れてるんだろう。それにガレキは見ての通り山積みで、そっちの階段の入り口も見えないから先に行け。この階層は殲滅したんだし、私はしばらくここで休みながら瓦礫を撤去していくよ」

「何言ってるんだよ、一緒に……」

「あいつに逃げられたら、レディクも私も悔しいんだよ!! だからさっさと行ってくれ!!」


 自分のセリフをヴァラスに遮られたガルクレスが「分かった、無事でいろよ」と言い残して、ルギーレを引き連れて階段を上り始める。

 ここにきてヴァラスとも分断され、更に進むパーティメンバーが減ってしまった。


「……あれで良かったのか?」


 自分を助けてくれたヴァラスを置いてけぼりにしたガルクレスに、若干トゲのある口調でルギーレが訪ねる。

 しかし、そこはガルクレスも迷っていたらしい。


「俺だって本当は連れて行きたい。だが、あいつの言い分も一理ある。ケガをした奴を無理に連れて行ってもカバーしきれるかどうかわからないし、早くあの魔術師野郎を追わなきゃならないしな。……くそっ……この塔の階段が、あの一階以外ではそれぞれの階に一か所にしかないっていうのがムカつくぜ……」


 ガツンとブーツの底で床を蹴るガルクレスだが、それを見て冷静にルギーレが呟く。


「床に当たり散らしている暇はないぜ。とにかくあいつを追うんだ。そしてヴァラスもレディクも早く助けてやらないとな」

「……ああ、そうだな」


 ルギーレのセリフに冷静さを取り戻したガルクレスを引き連れ、残った二人はその先の階段を上がって十階へ向かう。

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