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498.塔は続くよこれからも

 その疑問は一切解消されないまま、ルギーレとガルクレスはあの崩壊した渡り廊下の下を潜って迂回し、その先にあるシャッターの向こう側から降りてきたという階段を逆戻りする形で上がる。

 そして他の二人が戦っていたというシャッターの向こう側へと進むと廊下に繋がっていた。


「いかにも何か出てきそうって感じだな……」

「さっきは私たち二人であらかた出てきた魔物を潰したけど、まだいるかも知れないな」


 ヴァラスのいう通り、廊下の床や壁には魔物の死骸や体液がそのまま放置されていた。

 廊下の突き当たりには木製のドアが見えるので、さっきの金属的な魔物が沢山いた大部屋の階段も気になるものの、そっちは後回しにする形で一同はドアの先へ。

 ところが……。


「あ、あれ?」

「何だよ、ここってさっきの大部屋じゃないか!」


 木製のドアの先には、自分たちが最初に踏み込んだ金属製のドアの部屋に続いていただけだった。

 その木製のドアのすぐ横に上の階に続く階段があるので、どうやら渡り廊下で繋がれていたただの廊下、というだけだったらしい。


(設計者の頭の中を疑うぜ……)


 ルギーレはやれやれと無意識に首を横に振り、彼を先頭にして今度こそ三階へと向かう一同。

 すると、その三階部分には二階と同じような部屋――広さは一フロア丸ごと――があった。

 そこでも同じように金属的な魔物が闊歩しているので、二階部分と同じようにそれぞれ役割分担をして殲滅していく。


「良し、ここも大丈夫だな。だけどまた上もこんな感じなのか?」


 エルマンがそう呟きながら、部屋の奥にある上への階段を見据える。

 しかし実際に上に向かってみないとわからない以上、それが事実かどうかもわからないので用心しながら上へ進む。

 ……のだが、この時点で一行は何だか嫌な予感がしていた。


「なぁ、レディク……」

「うん、感じるね……これは明らかに殺意だよ」


 肌にビリビリと感じる、突き刺さるような圧力がたっぷりの気配の正体。

 この気配……殺意の出所は一体どこなのだろうかと、階段を上り切る手前で一行は前後左右上下に視線を巡らせる

 そして、その気配の出所を真っ先にキャッチしたのはルギーレだった。


「……おい、あれ」


 ルギーレが階段の先を指差すと、踊り場で仁王立ちをしている魔術師(?)らしき男の姿が。

 しかし、他の三人はこの塔に初めてきた時と同様にまたもや「見えていない」らしい。


「え? どこだ?」

「どこって……ほら、あそこにいるだろう。魔術師みたいな痩せてる男が……」

「いや、全然そんなの見えないよ?」

「……まさか、また僕たちに見えないものがあんたには見えているのか?」

「またか……」


 ルギーレだけにしか見えないという状況はこの塔の中でも続いているらしく、そのルギーレの反応と他の三人の反応の違いに魔術師(?)の男も気がついたらしい。


「ほう、僕の姿が見えるとはね……これは驚いたよ」


 今度はルギーレ以外の三人にも姿を見せたその魔術師の男が、感心した様子で一行の前に立ちはだかる。

 男は所々に金色の装飾が施されている紺色のローブを羽織り、その下に履いている黒い胴衣も、ローブと同じく金色の縁取りがされている。

 まつげの長い切れ長の赤い目に、ローブよりも黒い闇の色の長髪は腰に届く長さで、天井から差し込むライトに照らされている部分は青く輝いている。

 手には紫色の杖を持っているそのトータルコーディネートは、まさに「魔術師」と呼ぶに相応しい。

 ローブの袖から出ている日に焼けていない白い手には、それぞれ指に黒の不気味なリングを嵌めている。

 持っている杖と同じく、恐らくそれも魔術に必要な道具なのだろうか?

 それともただのアクセサリーなのか、パーティメンバーには判断が付きかねる物だった。

 だが、ルギーレが気になったのは彼の足元だ。


(……魔術師だったら、あんな金属製のブーツなんて履くかな……?)


 ローブの下から出ている足が金属で覆われているのを見て、違和感を覚えながらもルギーレは魔術師に向き直った。

 明らかに怪しさが満点のこの痩せ身の男だが、その男の一言を皮切りにして六人は一気に劣勢に追い込まれることになる。


「だけど、そう簡単に行くと思ったら大間違いだからね!?」


 男がそういうと、四人の足元に紫の魔法陣が広がり、そこから人型のガイコツ兵士……いわゆるアンデットを始めとして、小型ではあるものの狼やライオン型の魔物も多数一緒に姿を現わした!!


「うわあああ!! 何だこいつら!!」

「くっ! こんなトラップがあったなんて!!」


 四人はパニック状態になりながらも、下の大部屋と同じように役割分担で応戦できることにすぐに気がついたし、階段だからといって怯むことなく的確に一体ずつ潰して行く。

 しかし、倒しても倒しても魔物達は湧き出てくる。

 やはりここは、さっきまでルギーレにしか見えていなかったあの男をどうにかしなければいけないようだ。

 このままでは力尽きて殺されてしまうと考えた四人は、魔物を潰しながらも何とか男に接近しようとした。

 だが、先ほどの男のセリフは大口ではないようだった。


「甘いんだよ」


 魔物達の攻撃の隙を突いてヴァラスが男に槍を振りかぶるものの、男は魔術防壁を作ってしっかり槍を防ぐ。

 ならばとそこにガルクレスがロングソードで斬りかかるものの、これも同じく魔術防壁で防御されてしまう。


「くそっ、ダメだ!」


 男は自分をグルッと囲むようにしてドーム状の魔術防壁を張ってしまっているようで、武器による攻撃はおろか魔術もその男には届きそうになかった。

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