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496.しつけぇな

 何とかギリギリで受け身を取って着地した二人を尻目に、突っ込んできた機械兵器はさしたるダメージもないようだ。

 更に渡り廊下の被害がそこまで酷くないので、恐らくは背中の噴射口で速度の調節をしたのだろうとルギーレは判断。

 それなりの知能は持ち合わせているらしい。


「あれは一体何だ!?」


 興奮混じりにガルクレスに聞かれるルギーレは、ギラギラとした視線でその機械兵器を見据えながら呟く。


「あれが、俺が最初に入った部屋にいたでっかい奴だよ。とにかく今はあいつに敵として認定されちまったみたいだから、俺たちは逃げるしかなさそうだ!」


 三階部分まで吹き抜けになっているエントランスの一階部分をグルリと見渡してみると、あの最初にこじ開けたドアが目に入った。そしてそのドアの正反対の突き当たりに、どこかに続く通路も続いているのに気がついた。

 しかし、こじ開けたドアの方にその機械兵器が行く手を塞ぐように着陸してきたので、どうやら通路の方向に向かって逃げるしかなくなってしまったようだ。

 今までと違って、かなり精神的に追い詰められそうな展開であるのは間違いない。

 顔を見合わせて頷き合ったルギーレとガルクレスは、その機械兵器の追撃から逃れるために通路に向かって走り始めた。


「とにかく走れえええっ!!」

「うおおおおおおおっ!!」


 その通路は天井が高く幅も広く、直角になっているその通路の曲がり角を利用して機械兵器の追撃から逃れるべく、二人は右へ左へと移動を繰り返して逃げ続ける。

 だが、後ろの機械兵器もかなりしつこい。

 このままではいずれ追いつかれてしまう……と二人が諦めの感情を抱いたその時、唐突にこの逃走劇の幕が下ろされる。

 といっても、いい方の意味で幕が下ろされたわけではなかったのだ。


「……げぇっ!?」

「い、行き止まりだ!」


 無我夢中で逃げ続けた結果、何と裏口らしきホールの前に出てしまった。


「くっそぉ!!」


 ルギーレは半狂乱になりながらも逃げ道を探そうとしたが、探しているのは彼だけではない。


「きたぞ!!」


 ガルクレスのその声にルギーレが後ろを振り向けば、ついに機械兵器が自分たちを追い詰めてしまったことがわかった。


「……」


 ルギーレはその光景を見て、ゆっくりと機械兵器の方に向き直る。

 もちろんガルクレスもだ。

 だが、機械兵器にはさっきと違う部分がある。

 その機械兵器の周りには、小型の機械兵器が二~三体うごめいている。

 大きさは小型犬ぐらいだろうか。

 どうやら、この機械兵器は侵入者対策の警備用に造られたものだろうかとガルクレスは推測した。


(デカブツを取り巻くあの小さいのは、おおかた警備のサポート役の機械兵器って奴か?)


 機械兵器の突進攻撃を始めとして、二階の大部屋で戦ったあの金属で防御しているような魔物の集団による攻撃は普通に手強いものだった。

 そんなガルクレスを横で機械兵器と交互に見ていたルギーレは、副騎士団長の顔色が悪いことに気がついて声をかける。


「……どうした?」

「あのデカブツに立ち向かうのは俺じゃあ無理だ。小さいのなら何とかできると思うけどな」


 それを聞いたルギーレが納得した口調で呟いた。


「そうか……そのロングソードじゃ強度的にも威力的にも不安だな。だったらここは俺に任せろ」

「……大丈夫なのか?」


 流石にあんた一人じゃ無理だろうと思うガルクレスに対して、ルギーレは不敵な笑みを口に浮かべた。


「少なくとも俺のレイグラードの方がパワーもあるし、魔力だってそのパワーに上乗せできる」


 それを聞き、ガルクレスはこの場をルギーレに任せることに決めた。


「……感謝する。小さいのは俺でもいけると思うから、俺が小さいのを別の場所に引きつける。このデカブツは任せるぞ!!」

「任せとけ!!」


 役割分担も決定し、まるでこちらの様子を窺うかのように突進を止めていた機械兵器に二人は歩き出す。

 その動きに反応したのか、機械兵器も再び背中の噴射口を起動させ始めた。


「さぁ、来やがれってんだよ!!」


 戦闘態勢になったルギーレは威勢のいい声と共に、愛用のレイグラードを構える。

 ガルクレスはガルクレスで、小型のサポート機械兵器たちにそれぞれロングソードで攻撃を一発ずつ入れる。

 その攻撃で小型機械兵器たちのターゲットが自分に向いたのを確認してから、元きた通路を逆に走り始めて一旦この場から退却した。

 そのガルクレスの背中を視界に捉えつつ、ルギーレは突進してきた機械兵器の巨体を裏口ホールのスペースを目一杯使って転がって回避する。


(なかなかのスピードだけど、まだまだだな!!)


 心の中で相手の評価ができるぐらいの余裕があるが、次の瞬間その余裕が油断だったことをルギーレは思い知る。

 背中の噴射口の横に設置されている砲身のような場所がパカッと開いたかと思うと、その中から空気を切り裂いて何と筒状の弾丸が発射された。


「なっ!?」


 この兵器から発射されるミサイルを初めて見たルギーレはかなりの危機感を覚えて、とっさの判断で横の壁を蹴って宙返り。

 それによって何とかミサイルの爆撃から逃れた。


(はぁ、はぁ……あんなのってありかよ!?)


 相手がそんなえげつない装備を持っているのだから仕方がないとはいえ、ルギーレは思わず心の中で悪態をついた。

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