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488.どっちがおかしいんだ?

 そんな「~~だろう」の連続で推測でしかない会話を終わらせた一行は、ワイバーンに乗り込んで空に舞い上がる。

 これから自分たちが向かう三つ目の遺跡は一体どんなものなのだろうか、と不安と期待の入り混じった感情をルギーレは持ちながら、そろそろ夕暮れ時に差しかかっているこの世界の景色を下に見て進む。

 現在はガルクレスとレディクの二人で乗っている一匹と、ヴァラスとルギーレの二人で乗り込んでいる一匹で飛行している。


「そういえばあんたなら知っているか? 俺たちが向かおうとしている次の遺跡ってどんな所なのか」


 ルギーレがその同乗しているヴァラスに聞いてみた所、どうやら彼はもう一匹のワイバーンに乗っている三人よりも少しだけ知っているらしい。


「あー……こっちに来て色々と情報収集する内に聞いた話なんだが、それっぽい場所は西に向かった所のすぐ近くにあるにはあるんだよ。だけどそこ、どうにも空洞になっているらしくてな」

「空洞?」


 それはどこかにポッカリ穴が開いた洞窟なのか?

 まさかあの砂漠の地下迷宮のことじゃないだろうな? とルギーレはイメージしてみるが、実際はその更に斜め上を行くものだったようだ。


「いや……ええと、地面に穴が開いてるみたいなんだよ。それこそ底が見えないぐらいに深い穴が。でも、そこを調べようとすると見えない物体に阻まれて一向に調査が進んでいないらしくてね」

「見えない物体か……」


 それって、見えない壁に阻まれて進むことができないとか言われていた以前の遺跡と同じものなのかな、と今度は考えるルギーレだが、実際にその現地に行ってみなければわからないこともあるだろうと強引に納得してみる。


「何か仕掛けみたいなものがあるのかな?」

「さあねえ。少なくとも、まだその空洞の中に入ったことのない私たちにとってはわからないね」


 そんなこんなで紆余曲折(うよきょくせつ)あったものの、ルギーレたちは遺跡に近付くにつれて違和感を覚え始める。


「こ、これが遺跡だっていうのか?」

「どう考えてもただの穴だよね、これ……」


 ガルクレスとレディクのコンビが乗るワイバーンの上では、その場所の光景に思わず絶句してしまうその二人の姿。

 一方でヴァラスとルギーレのコンビが乗っているワイバーンの上は、ヴァラスの納得の声で溢れていた。


「あー、確かに私たちが掴んだ情報通りだな。どう見たってここからでは大きくて深い穴にしか見えないよ」


 しかし、ルギーレの言い分は全く違うものだった。


「……おい、何を言っているんだあんたは」

「え?」

「どう見たって、いかにも物々しくて高いタワーが目の前にあるじゃないか」

「へ? おいおい……君こそ何を言っているんだよ?」

「ん?」


 何だか会話が噛み合っていないので、一先ず穴から少し離れた場所にワイバーンを着陸させてパーティメンバーの四人が合流する。

 周りは見渡す限りの森で、木々の中から変な動物の鳴き声や鳥の羽ばたく音が聞こえてくる以外は葉っぱの匂いと土の匂いが風に乗って四人の鼻をくすぐる。

 しかし、そんな匂いや音に対して構っている場合ではない。


「……え? ここにでっかい塔があるだって?」

「ああ。俺には物凄く高い塔が見えるんだが……あんたたち三人には見えないのか?」


 ガルクレス、ヴァラス、レディクはそのルギーレの話に、疑いの視線を向けながらも自分たちの見えている光景を述べる。


「いいや、私にはこの黒くて大きな穴が向こうまでポッカリ空いているようにしか見えないぞ」

「俺もヴァラスと同じ意見だよ。レディクもそうなんだろう?」

「僕もそうだよ。君……一体何が見えているんだ?」


 この国の住人である三人から疑いと好奇の視線を向けられたルギーレは、腕を組んで考え込む素振りを見せる。


「え、あれ……? 俺がおかしいのか? いやでもここにこうやって俺の手にもちゃんと触ることができている訳だしな……壁がさ……壁……」


 自分以外の誰にも見えていない物が、自分だけには見えている。

 その衝撃的な事実に対して、ルギーレはどうやって説明したら良いのか途方に暮れているせいもあって、少し言動がおかしくなりかけている。


「と、とにかくよぉ……あんたがこの目の前で見ているままを俺たちに伝えてくれよ」


 そんな彼の様子を見かねたガルクレスが、自分の言葉で何でも良いから伝えるだけ伝えてみてくれとリクエストを出した。


「んー……一言でいえばかなり高い塔だよ。外壁の色は若干紫がかっている黒で、円柱を横に引き伸ばしたような、いうなれば楕円型の塔だな。で、そこに大きくて高い鉄の扉があって……多分それが出入り口だろうとは思う。窓は二階ぐらいからあるみたいだけど、四方を見る限りは一階部分に一つもないな。肝心の高さは……一……四……一一……わからん。少なくとも二十階はあるんじゃないのか?」


 階数を数えていたのだが途中でわからなくなってしまい、おおまかに答えるルギーレ。それ以外の説明もなかなかにおおまかだったが、それなりに自分の見えている光景は伝わったらしい。

 しかし、肝心のタワーの姿が見えないとなるとどうすれば良いのだろうか?

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