486.見えてきた野望
大体の話はルギーレにも掴めてきたが、もっと細かく掘り下げてもらわないとわからない部分もまだまだある。
「ちょっと整理させてくれ。あんたたち三人は帝都の騎士団って所からきた。そしてその皇帝の命を受けてこっちの帝国の調査をしていた。これで合ってるか?」
「ああ、大丈夫だ。それで俺たちはあの男……エリアスから定期的に情報を仕入れていたんだ。見慣れない剣の使い手が世界各国を旅し始めたとか、その見慣れない剣の使い手は元々有名な勇者パーティーにいたとかな」
どうやらエリアスは、ルギーレがこの国に入ってくる前の経緯までかなりの情報を収集していたようである。
「修練場に向かうからそこでその剣を持っている男……つまりあんたを仕留めてしまっても構わないように、部外者を装って自分が修練場の冒険者たちに善意の通報をした……とか色々こっちに報告してもらってたんだよ」
ガルクレスからの今までの経緯を聞かされ、少しずつルギーレもエリアスの行動を思い出しつつ納得する。
「エリアスが善意の……って奴だったか。俺も最初に会った時から怪しいとは思っていたんだが、確固たる証拠がないから決めつけることもできなかったんだよな」
何にせよ、エリアスが自分たちのことをギルドに色々と流していたとわかった。
しかし、彼は一体何者なのだろうか?
それをガルクレスたちに聞いてみないことには、ルギーレもまだ納得できないことが多くて仕方がない。
そもそも彼があの杖から生み出した、炎に包まれている巨大な生物のアディラートだかなんだかもよくわかっていないのに。
だが、騎士団の三人も実はよくわかっていないようである。
「それがさ……俺たちも少し前に初めて会ったばっかの奴なんだよな」
「へっ?」
「ガルクレスの言う通りさ。僕もヴァラスもあのエリアスとは最近知り合ったばかりの関係で、まだお互いのことをよく知らないんだ」
「冒険者ギルドに登録しているって話を私たちは聞いていたんだが、ギルドで確認してみたらそんなエリアスという人間はいないというし……何がどうなっているのか私たちにもさっぱりなんだ」
どうやら彼の今までの経歴こそが嘘に嘘を重ねていたものだったらしい上に、彼が使役していたアディラートという巨大生物もあの時初めて目撃したのだという三人。
当然このことは騎士団で共有せざるを得ないのだが、それと並行してやらなければならないことはもちろんあるわけで。
「それで、結局あの破片みたいな物は奪われてしまった訳だし、それ以外にもガルクレスがワイバーンと一緒に預けてきたっていうあの剣と盾も無くなっちゃってるんでしょ?」
レディクの確認にガルクレスは頷き、そして謝罪する。
「すまねえ、俺がもっと管理をちゃんとしていれば……」
ラーナの町の管理場所に、ワイバーンと共に荷物として預けておいたあの遺跡から回収したロングソードと盾が、エリアスが取りに来てそのままどこかに持って行ってしまったのだという。
「で、そのエリアスに渡してしまったっていう管理場所の職員は、エリアスがどっちに向かったかっていう話はしていなかったのか?」
「うーん……新たに一匹別のワイバーンを借りた後にそのまま東の方に飛んで行ったっていう証言があるぐらいだね」
「じゃあ、東に向かえば追いつけるかもしれないんだな」
だったら早く追いかけようとルギーレはパーティメンバーを急かすものの、なぜかここでガルクレスからストップがかかる。
「待てよ。あいつはまた絶対俺たちの前に現れるはずだ。それも向こうからな」
「なぜわかる?」
その理由を説明してくれないと納得できないルギーレに対し、ガルクレスはこれからのエリアスの行動を自分の推測と予想を交えて話し始める。
「あんたが回収したあの剣と盾……あれを持ち去ったってことは多分、考えていたあいつの予定が機密書物庫で狂ったんだ。三つ目の遺跡の封印を解いて、そこにあるだろう宝物をあんたが回収した時に自分の正体をバラし、そしてそれも一緒に持ち去る計画だったんだろうが、その前にラーナの町で自分の正体があんたにバレてしまった。そしてこれから俺たちはその三つ目の遺跡に向かう……後はわかるな?」
「つまり、俺たちが宝物を回収して遺跡から出てきた所を、ギルドの仲間を率いて大勢で狙えば……」
そういうことだ、とルギーレの呟きにガルクレスは無言で頷いた。




