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485.本当のことと嘘のこと(その2)

 本来、機密書物庫には侵入できないように高度な魔術で侵入対策をしている以上、もし自分たちに侵入されたとわかってしまったら騎士団に突き出されるのは目に見えていた。

 そこで、機密書物庫の件に関して図書館側から事情聴取がされるだろうと踏んだパーティメンバーたちはエリアスが主犯だという結論が望ましい、と判断してシナリオを組み立てた。

 そもそも、最終的にエリアスにああして破片を奪われてしまったのだから全部が全部嘘という訳でもない。


「でも、あんな細い男が一人で図書館の本棚を倒せるのかな?」


 この嘘のシナリオに関して、図書館の職員や警護担当の騎士団員たちの中には疑問を呈する者も居た。


「でもよ、それ言ったらルギーレだってレディクだってヴァラスだって本棚を倒せるような力はねえし、俺だって無理な話だぜ。それによ、俺はその騒ぎがあった後にこのレディクとヴァラスと一緒に図書館の中に入ったんだし、もしかしたらあの男以外にも誰か騒ぎを起こすのを手伝った仲間が居たんじゃないか?」


 逆にガルクレスからそう疑問をぶつけてみれば、一応それで納得はしてくれたようで図書館側からのそれ以上の追及はされなかった。

 こうして、嘘のシナリオで何とか事情聴取を切り抜けた一行は近くの平原に移動する。

 だが結局、せっかく騒ぎを起こした隙に潜入できた機密書物庫の謎の破片(?)も回収できたというのに、エリアスの目潰しと煙幕攻撃によってそれがギルドの連中の手に渡ってしまったのだから、それこそもう目も当てられない気持ちだ。


(敵を欺くにはまず味方から、とはよくいったもんだが……まさに今回はそれがピッタリ当てはまる結末になってしまったな)


 苦笑いも出そうにない今の状況で、自分たちがやるべきことがまた増えたらしい。


「とにかく、俺たちはまずあの地図の赤い場所に向かおう。そこが恐らく三つ目の遺跡だと思うしな。それからあの男の行き先を突き止めて、機密書物庫から奪われたあの破片を取り返すんだ」

「いや、あれは俺が奪った奴なんだが……」


 それはちょっと語弊があるんじゃないのか、とガルクレスの発言にルギーレは思うものの、ガルクレスを始めとする他の三人は特に気にしていない様子だ。

 しかし、ルギーレの方にはまだそれ以上に気にしていることがある。


「で……さっきの話の続きをしてくれないか?」

「ん、ああ……俺たちが騎士団の人間だってことか?」


 思い出したガルクレスが聞き返すその視線が、ギラギラとした目つきで睨みつけるルギーレの視線と絡み合う。


「ああ。あんたらはつまり、この国の騎士団員だということを隠してここまで俺と一緒にはるばるやってきたってことでいいのか?」

「ああ、それで合っているぞ」


 ガルクレスの隣に立っているヴァラスが頷くが、まだまだ信用するには至らないルギーレ。

 そのルギーレの信用できない気持ちはこの三人もわかっているらしい。


「まー、そりゃそうだろうな。俺もこの二人もギルドの冒険者だって偽って今までずっとこの王国の東から調べを進めていたんだしな」

「そうだね。僕たちは陛下から頼まれて別行動をしていたんだよ。その過程で上手くこの国のギルドの連中と接触することができて、あのエリアスっていう男から情報を流してもらっていたんだし」

「何だと?」


 ガルクレスとレディクの言い分、特に最後のレディクの「情報を流してもらっていた」という発言にまたルギーレは身構える。

 だが、それはレディクに手で制された。


「少しは落ち着いてよ。ピリピリする気持ちもわかるけど、最後までちゃんと話を聞いて」

「……くっ……」


 身構えるのを止め、ルギーレは立ち上がりかけた自分の身体を再び平原の草地の上に置いた。


「僕たちはあの図書館の町から離れて、わざわざこうやってワイバーンを飛ばして来て追っ手が来ないのを確認してまで話しているんだから大丈夫だよ」

「そうそう……それにこの辺りの原っぱだったら見通しがいいから、そうそう簡単に魔物に襲われる心配もないぜ」


 レディクとガルクレスからも説得を受け、ルギーレは黙ってまた話を聞く態勢に戻る。


「それでえーと……エリアスから情報を流してもらっていたのは事実なんだけど、それはこっちの作戦だったんだよ。この国が不穏な動きをしているっていうから調査をしてくれって、僕たちの国のギルドと騎士団から命を受けて、こうやって三人でやってきたんだよ」


 それを聞き、ルギーレは自分の記憶からピンと来るものを思い出した。


「不穏な動き……か。そういえばカインもギルドの統一がどうのこうのって話をしていたけど、それの話か?」

「そうだね。多分その話だと思う。その話に関して僕たちは西方面と東方面でそれぞれ調査を進めていた。元々は僕らも本当に冒険者だったから、その時の実績を武器にして依頼を請け負っていたら運よくエリアスと接触する機会があってね。その時に、不思議な剣を持っている男の伝達係を一緒にやってみないか……と言われて行動していたのさ」

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