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482.見つけた!!(色々な意味で)

 カインとティレジュが国立図書館へ向かっている時まで時間は遡り、ルギーレはその最上階の三階にある機密書物庫への潜入を果たしていた。

 封印がどうのこうのといわれていたが、入り口のドアの取っ手に手をかけて引っ張ってみれば、それだけで簡単に何の苦労もなく開いてしまったのである。


(うわ、こりゃ機密書物庫っていわれるのも当然かもな……)


 思わず口に出てしまうだけのことはある程に、年月の経った独特の本の臭いがする部屋がそこにはあった。

 機密書物庫の部屋自体は、自分が本棚を倒した図書館の三階とは比べものにならないぐらいに狭いがそれでもなかなかの広さである。


(この広さだと……ちょっとしたダンスホール並みっていえばいいのかな?)


 そのダンスホール並みの広さの部屋の天井に向かって本棚が壁に沿うように設置され、自分が蹴り倒した三階の本棚と同じくぎっしり本が入れられている。

 天井や壁には何個ものオレンジ色のランプが埋め込み式で設置され、窓が申し訳程度に部屋の奥の突き当たりにある以外には、光が差し込まない設計のこの部屋でも視力の低下を防げるようにできている。

 その部屋の奥には椅子とテーブルがセットで何脚か置かれており、どうやらゆっくりと調べものができたり本を読むことができるようにスペースを作っているらしい。

 奥の方だけにしかそういうスペースを作っていないのは、機密書物庫ということで立ち入る人間の数が少ないせいもあるのだろうか。


(ともかく、ここに何もなかったら今までの全ての作戦が全部水の泡だな)


 それだけは何としてもあって欲しくない結果だ。

 幸いなのは、先程自分が本棚を蹴り倒した三階のフロアに比べれば本棚の数が随分少ないこと。

 なので、ルギーレは本棚に挟まっているジャンル別の札を参考にしながらどこに何があるのかを探し始めた。

 だがその本棚をずっと部屋の奥まで辿って行くと、この部屋にある大量の書物よりも明らかに重要な物が置いてあることに気が付くルギーレ。

 それこそ美術館や展覧会などで見かける、四角くて透明の展示用のケースがあるのだが、その中に妙な物体が飾られているのだ。


(何だこりゃ?)


 何かの破片らしき、いびつな形状の黒い金属片のような物体。

 武器製造の過程で出るゴミと間違われても仕方ないシルエットと色だが、何でこんなものがここに置いてあるのだろうか? とルギーレは首を傾げる。


(でも、意味ありげにこうしてここに置かれているんだったら何かのヒントにはなりそうだけどなぁ?)


 既に帝国のギルドを敵に回している訳だし、ヒントになりそうなものなら回収しておこうと透明なケースを上に持ち上げた。

 ……が。


「そこまでだ」

「……!?」


 聞こえてきた声のする方にバッと顔を向けて見れば、そこにはルギーレが見覚えのある男二人が臨戦態勢で立っていた。


「どうやってこの封印を解いたか、じっくり私たちにもギルドで聞かせてもらおうか?」

「もう逃げ場はねえぞ? 大人しくここで観念するんだな、ええ? 魔力がないっていわれている人間のオッサンよ?」


 既に槍を抜いて構えるカインと、不敵な笑みを浮かべつつ愛用のハルバードを取り出すティレジュは、ルギーレにゆっくり近付きながら二人とも鋭い目つきで彼を見据える。


「……お前らもしつこい奴らだな」


 ルギーレにはその二人と面識もあり、彼らのセリフや武器を構えるその様子を見て即座にギルドの連中がここに集まりつつあるのだと察しがついた。

 だがそんなことよりも、問題はこの二人をどう退けてここから逃げ出すかだ。

 早く脱出しなければあの倒した本棚の修復が終わり、図書館の職員やら帝国騎士団員がこっちにきてしまうかもしれないからだ。

 展示ケースが置いてある場所から少し戻った、出入り口側の広い空間で両側から挟み込む形で、武器を構えたギルドの冒険者コンビに逃げ場をなくされるルギーレ。

 だが、もちろん彼もここで捕まる訳にはいかない。


「悪いが、俺の仕事はもう終わったんでな。別に俺はこれ以上あんたらに迷惑かけるつもりはないし、後はここから出させてもらうだけだ」

「迷惑は既に十分かけているでしょ。その言い分は通用しない……だから大人しく捕まって欲しいよなー」

「う……」


 カインのどことなく子供っぽい、それでいて怒気を含んだそのセリフに思わずルギーレもたじろぐが、気持ちを何とか持ち直して二人を睨み付ける。


「そんな睨まれたんじゃあ、どうやら大人しくする気はないみたいだな?」

「そうきるか。だったらこちらも実力行使に出させてもらうぜぇ!!」

「気をつけろよカイン……あの男の持っているロングソード、あれは何か嫌な気配がするんだ」

「わかってるティレジュ。そっちも油断すんじゃねえぞ!!」

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