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46.南へ向かった勇者パーティー

「おいべティーナ、こっちの方角で合ってんのかよ!?」

「ええ、きっと問題ないわ!!」


 エスヴェテレス帝国と国境を挟んで南に位置しているファルス帝国。

 この国に、ルギーレとルディアよりも先に入国した勇者パーティーの一行は現在大変な状況に陥っていた。

 エスヴェテレス帝国のギルドで見つけたいくつかの依頼。その中にはファルス帝国でやる仕事もあったので結果的にそれを選んだ一行だったが、、それがどうやら間違いだったらしい。

 なぜなら今、一行は道に迷ってしまっていたのだ。


「まさかこんなに深い森の中まで来るハメになるなんてね」

「仕方ないよ~。だってこの依頼はそういう類のものなんだから~」

「それにしてもよ。盗賊の簡単な討伐依頼がなんでこんなことになるのか、未だによくわからないんだけどね!」


 いつもの口調でなだめるライラに対し、リュドとベルタがやれやれと首を横に振って自分たちの不運を呪っていた。

 彼女たちが話している通り、今回の依頼は盗賊団の討伐なのでサクッと終わらせて帰る予定だった。

 だが、その盗賊団は凶暴でなかなか引き受けたがる人員がいないことが、今回の道に迷う結果につながってしまっていた。


「このギルドの情報ってまともに更新されていないみたいだから、盗賊団を探しに探し回ってようやくこの森の中にいるって情報を掴んだのに、これじゃ盗賊団に辿り着く前に私たちが餓死しちゃうわよ!!」

「というかさあ、こういうのってあれよね~、騎士団の人間たちがやらなきゃいけないことよね~」

「それは一理あるわ。盗賊団の討伐ぐらい、武人国家って呼ばれるだけの実力があるんだったら仕事の一環で片付けて欲しいものよね」


 仕事を請け負っている立場であるにもかかわらず、ブツクサと文句を垂れる三人。

 盗賊団の情報を求めて東へ行き、いないと分かれば西へ行き、町へと村へと移動を繰り返してきた疲労とストレスがこうして態度や言葉に出てしまっているのだ。

 一方、そんな三人の前方ではマリユスとべティーナがようやく御目当ての場所を発見していた。


「あっ、おい……あれじゃないのか?」

「んん……そうみたいね。さぁみんな、戦闘準備よ!」


 一行の目の前に現れたのは、森の深くに佇んでいる古い洋館だった。

 いかにも何かが出そうな雰囲気が満載だが、ここは空き家になっている状態が続いており、それに目をつけた盗賊たちがいつのまにか根城にしているらしいのだ。

 ここまで果てしなく長い道のりだったが、ようやくこれで依頼を終わらせて帰ることができると安堵する勇者パーティーの一行。

 しかし、安心したのも束の間だった。


「……危ないっ!!」

「うおっ!!」


 緊急回避。

 間一髪、何の前触れもなく飛んできた矢を回避することに成功したマリユスとベティーナだったが、その矢を皮切りに森の四方八方から殺気が漂ってくる。

 引き返そうにも後ろからも人の気配が多数感じられるので、どうやら囲まれてしまったらしいと察した五人。


「これは待ち伏せを食らったみたいだな」

「ええ、そうね……どうする?」

「まずは退路の確保をするぞ。それから少しずつ仕留めていくんだ。くれぐれも一人に時間をかけ過ぎるなよ!」


 リーダーのマリユスの指示によって、この囲まれている状況から抜け出すための行動を開始する。

 この森は盗賊たちのテリトリーなので、下手に森の中に踏み込めばそこに罠があるかもしれない。

 なのでなるべく散開しつつ、かと言ってはぐれてしまわないように戦うという絶妙な距離での戦い方を強いられてしまった。

 しかし、どうして自分たちがここにくるのがバレて待ち伏せを食らってしまったのか?

 最初に襲いかかってきた目の前の盗賊を、自慢のハルバードで一刀両断しながらマリユスは考える。


(まさか、俺たちがこの国のあちらこちらで聞き込みをしていたのが盗賊たちに伝わったんじゃ……?)


 いや、そうとしか考えられないだろう。

 自分たちは良くも悪くも勇者パーティーとして、世界中で名前が知られている存在だ。

 しかし、名前を知る者たちの中には自分たちの存在を良く思っていない人間だって当然いる。

 この盗賊たちもそういった連中の一角に当たるだろう。

 自分たちのテリトリーに無断で踏み込まれた上に、討伐して国に報告するのが仕事である相手を絶対に生かして返すわけにはいかないのだから。

 その妙な使命感が気迫となって伝わってくる盗賊団を相手に奮戦する勇者パーティーの一行だが、事前に仕入れていた情報よりも敵の数が多いことに焦りを覚え始めていた。


(くそっ、これじゃキリがないぞ!?)


 何人仕留めてもまるで敵が減らない。それどころかどんどん増えている気がする?

 これでは撤退する前にこちらの体力が尽きてしまうか、それとも武器が崩壊して体術と魔術のみでの戦いを強いられることになってしまうか。

 いずれにしてもこのままではこちらが圧倒的不利な状況であるマリユスたちは、ならばと一気に攻める姿勢に出る!

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