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479.国立図書館

(店で聞いた話によれば確かこの辺りだったはずだけど……あれか?)


 あの店の店主とその妻から聞いた、ルギーレが向かおうとしているその場所の情報。

 それはこのアーエリヴァ帝国のみならず、ヘルヴァナールという世界に関しての書物が多数保管されている、直方体型のシルエットが特徴的な黄色い外壁の建物の国立図書館だった。

 その国立図書館目指して、ルギーレはギルドの冒険者たちに見つからないようにしながらようやくここまでやってきた。

 思えばあのヴァラスの話をヒントにしてここまでやってきただけの話で、もしかしたらこの図書館には何もないのかもしれない。


(でも、ヴァラスがああいってるんだったら見るだけ見てみる価値はあるだろうな)


 できれば……いや、そんな中途半端な希望ではなくて「ここにマルニスとセルフォンに再会するヒントがあってくれないと困る」ぐらいの、上から目線ともいえるその希望を胸にやってきた国立図書館。


「はい、こちらが館内の案内図です」

「どうも」


 入り口のインフォメーションカウンターで館内の地図を借りて、そのついでにこの図書館に関しての色々な情報をルギーレは聞き出し始める。

 普通の図書館ではまず見られないような、それこそ厳重に甲冑に身を包んだ人間が、国立図書館の建物の外や中の至る所を警備している。

 彼らもまた帝国騎士団の団員だ。

 帝国騎士団からは今までメインの存在で追いかけられることはされていないのだが、カインと仲のいい帝国騎士団員ティレジュの息はここの騎士団員にも確実にかかっているだろうな……とルギーレは説明を聞きながら思っていた。

 国立、といわれるだけのことはあってこの図書館には数多くの貴重な書物が保管されているのだが、ルギーレはその説明を受ける中でかなり重要なヒントを手に入れることに成功した。


「あれ? この三階の機密書物庫……って書いてんのはどんな所なんだ?」

「そこは立ち入り禁止の場所です。国家機密になるような特別な書物が貯蔵がされている書物庫ですから、一般の方は元よりかなり有名な冒険者の方でも立ち入りが禁止されています。入室できるのは帝国騎士団員か、ギルドに登録されている方ですとSランクの冒険者のみとなります」

「へぇ、そうなのか……」


 それをインフォメーションの人間がベラベラ喋っていいのか? とルギーレは困惑するものの、それだけ大層な書物が貯蔵されているような場所であればやっぱり気になってしまう。

 ルギーレはまず一通りこの図書館を見回ってみて、そして隙を見て潜入することを目論み始めた。


(しっかし、国立図書館といわれるだけのことはあるんだな。どこもかしこも本ばかりだけど、この中から色々な話のヒントが載っている本をピンポイントで探し出すのはさすがにきつい話だ……)


 かなり広い図書館の内部を埋め尽くすかの如く並んでいる多くの棚には、その棚の数に見合うだけの本がギチギチに詰め込まれる状態で保管されている。

 その本棚の多さは、これからの情報捜索の困難さとプレッシャーをルギーレに与えた。それに、まだここにヒントがあると決まった訳でもないのだからますます気が重い。


(……ま、やるしかないだろうな……)


 この町にきて早々にあれだけの騒ぎを起こし、その上パーティメンバーとはぐれてまで自分はギルドの冒険者の連中から逃げてきた。いずれこの図書館にも、自分以外の逃げた四人を含めて捜索の手は及ぶだろう。

 だから時間を余りかけられないこともあり、ルギーレは地図を片手に図書館の中を歩き始めた。


 しかし。


(だーめだ、サッパリ見つかりそうにない……)


 そもそもこの図書館が広過ぎるんだよ、と図書館の利用客で賑わう一角でルギーレは悪態をつく。

 何かヒントになりそうな本はないか探していたのだが、およそ二十分ぐらいかけても収穫はゼロのままだった。

 これ以上時間をかけていたら、いずれはギルドの冒険者の連中までここにやってきてしまうのは想像に難くない。


(このままアテもなく探し続けても効率も悪いし、無駄に時間ばっかり食うだけだぞ)


 ブラブラと探し続けても見つからないとなれば、やはりあの三階にあるという機密書物庫しか気になる所は他にない。

 そもそも図書館の至る所で帝国騎士団の団員が目を光らせて見張っている以上、迂闊に本棚を探し回るのは怪しい行動として咎められるだろう。

 かといって機密書物庫に入り込むのもかなり難しそうだ。

「立ち入り禁止」と書かれた札を吊り下げてある、地球でも美術館らで良く見かける鉄製のポールの間にロープを繋げた、機密書物庫への簡易バリケードを突破するだけでは無理だ。

 国家機密になるような特別な書物が保管されている、とインフォメーションの人間からも聞いているのでまさに最高機密にふさわしい重要な場所だろう。

 となれば、その出入り口になっている扉の横に騎士団員二人がそれこそまるで美術館の彫像の如く、直立不動で警備をしているのも頷ける光景ではある。


(くそ……どうすればあれを抜けてあのドアの向こうに入って行けるんだ……?)


 何かいい手はないだろうかと考えていた矢先、「とある潜入作戦」がルギーレの頭を過ぎった。

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