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476.着いて早々

 バイブールの修練場からワイバーンを駆り、そのまま今度は違う町での休憩も含めておよそ三時間で北にあるラーナの町へと辿り着いた。

 ヴァラスがいうには、ここには国立図書館の一つがあるらしいのだが彼も正確な位置までは知らないらしいので、まずはその情報を集めなければならない。

 だが、そんな彼らの情報は既にこの町にも回っているようだった。


「……おい、ガルクレス」

「ああ、わかっている」


 目立たないようにルギーレを囲む形で町の中に入った一行だったが、自分たちに向けられている多くの視線が嵐の予感をさせるのにガルクレスもエリアスも気が付いている。

 そしてそれと同時に、町の出入り口付近から「いたぞー!」と声が上がる。

 その方向にパーティメンバーが目を向けてみれば、男女問わず明らかに殺気立った武装した人間たちが大勢で駆け寄ってくるのが見えた。


「あいつらが修練場を潰した連中だ、逃がすなよ!!」

「ぶっ殺してやらああああ!!」

「待ちなさいよ!!」


 修練場の単語が出てくるということはギルドの連中に間違いないので、その修練場の壊滅情報を受けたギルドではこうして男女問わず冒険者の連中にパーティメンバーの待ち伏せをさせ、何としてでもここで捕まえようという作戦らしい。

 思ったよりも早く回っている情報に舌打ちをしつつ、五人はやむを得ずこの土地勘のない町でバラバラに行動する破目になってしまった。


(ちいっ、来て早々にこれか!!)


 もう少し「」があってもいいんじゃないのかと思いつつも、ルギーレは身軽な動きでメインストリートの人混みの中に紛れる。

 北にある町の中では比較的大きな町だとヴァラスがいっていたし、ギルドの連中ばかりでこの町が構成されている訳でもないので、一般人の中に上手く紛れ込む形で追っ手のギルドの連中を振り切りにかかるルギーレ。


 やはり自分としては「人が隠れるなら人の中」という考えで、散り散りになってしまった他のパーティメンバーと違うルートをルギーレは進んでいく。

 しかし他のメンバーがどこにいるのかというのをルギーレは知らないし、他のメンバーもルギーレのいる位置がわからない以上は、自分以外のメンバーの行方をそれぞれ心配しながら人混みに紛れての逃走劇だ。


(せめてルディアがいれば探査魔術ですぐに他のメンバーの場所がわかるんだが……これじゃ図書館に行くどころの話じゃないな!!)


 一方で、カインやその裏切り者からの命を受けてルギーレたち一行を追いかけ回しているギルドの冒険者の面々は、後一歩の所で今までずっとルギーレたちを逃がしてしまっている。

 そのこともあって、自分たちの面子にかけてでも町の各地に逃げ出したパーティメンバーの五人を捕まえなければいけない。

 追跡部隊を分ける形で数人がルギーレを追跡している一方で、他のグループもまたそれぞれで小分けになって、この町中を散り散りになる形で探し回っていた。

 パーティメンバーの裏切り者が色々と捜索部隊の手筈を整えてくれているだろう……と追跡部隊の面々も考えてはいるのだが、英雄から詳しく連絡を受けているのはルギーレの話だけ。

 他の四人に関して、実際にその背格好や服装をよく知っているのはその四人の中でこちらと内通している裏切り者しかいないことも知っている。

 その裏切り者からは「本気で捕まえに来ないと自分が裏切り者だとバレてしまうから、自分のことも気にせずにみんなで追いかけてくれ」といわれているので、メンバーたちもそのカモフラージュのために本気で裏切り者を追いかけ回している。


(人の容姿をなかなか口で説明するのは難しいし、その情報を聞いて個人の受け止めるイメージも違うものだからな……)


 追いかけ回されているパーティメンバーの内、裏切り者は漠然とそんな考えを巡らせていた。

 自分がリーダーとして追いかけ回す立場だったら、事前に画家に頼んで似顔絵を作成して手配書を作ってもらうこともできる。

 だが短時間で町から他の町や村へと馬、時にはワイバーンで移動を続けている奴らに対してそこまでするほどの時間はない。

 もしそんな時間があれば、ぞの似顔絵を作って配布する前に他の四人のメンバーに逃げ切られてしまう可能性の方が高い。

 このラーナの町に追い込んだ今であればまだ町の外には出て行っていない筈だし、その町の出入り口には既に厳重な警備を配置するように、とギルドの冒険者に通達している裏切り者。


(これであのルギーレとかいう男も終わりか……)


 共に遺跡を回ったりして一緒に旅をしてきた時間はそれなりに長いようにも感じたが、それでも自分はギルドに所属している以上、カインからの銘は絶対といってもいい。

 カインも、それから騎士団員のティレジュも裏切り者の自分が抱いている野望の為に協力してくれていることもあって、ここでこっそりパーティを抜けるつもりでいるのだから。

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