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470.北の修練場

 相変わらず悶々としているルギーレの元に、およそ二十分ぐらいして三人が戻ってきた。


「どうだった?」

「遺跡の手がかりは少しだけどあったよ」

「本当か?」


 レディクのセリフに期待が高まるルギーレとヴァラスだが、その仕入れてきた手がかりというのがどうやら回り道をしなければならないルートのようだった。


「ここから北北西に向かった所に、バイブールの修練場っていう冒険者を鍛え上げるための大規模な施設があるんだって。そこの冒険者の連中は手練れ揃いで、大多数が北の方から集まってきているらしいから、北方面の情報ならそこにいけばわかるんじゃないか……って話だったよ」

「北北西か……でも冒険者が集まる場所だったら、それこそギルドの連中と繋がりがあるんじゃないのか?」


 そうなると迂闊に近づけないんじゃないか、というルギーレの懸念に対してヴァラスとガルクレスがこう切り返す。


「確かにそれはそうだけど、そこも私たちが情報収集するから任せてくれ」

「ああ。だからまたあんたは目立たない場所にいてくれれば俺たちで何とかする」


 山脈を時計回りに迂回するルートで進軍しているこのパーティにとっては、少しばかり山脈から離れなければならないらしい。

 まだ自分たちが逃げてきた東の帝都側を調べていないので、そのまま東に向かう訳にはいかないのは時間がかかる上に、余り回り道や寄り道をするとそれこそギルドの追っ手たちに見つかる可能性がある。

 ならば急いで近道をいくよりも、回り道をしてでも確実に進むことのできるルートの方が最後には成功ということも考えられる。


(焦って先に進もうとし、それで急いで失敗しちまったら意味ねえしな)


 そう考えたルギーレは、レディクとヴァラスの返答もあって北北西に進むことを了承した。


「わかった。ならそっちに向かおう。そこの施設の利用者たちから何か少しでも遺跡の情報を聞き出せるなら、当然それに越したことはないからな」


 この町で得られた情報は微々たるものだったが、今の自分たちは少しずつ真実に近づいていっているのだろうとルギーレは実感した。

 そんなルギーレを中心としたパーティは、この小さな町から二日ほど進んだ場所にあるバイブールの修練場を目指して、今度は何とワイバーンに乗っていくことになった。

 ワイバーンを使っての進軍の提案をしたのは、自らもワイバーン使いであるエリアスだった。


「ワイバーンを使うことができるんだったら借りて、さっさとそこに向かおう」


 しかし、それに対してヴァラスから反対意見が出た。


「ちょっと待ってくれ。それってどうしても目立つ可能性があると思うんだが」


 余り目立つような移動手段は避けて、それこそ馬を借りていけばいいんじゃないかというのが彼の意見だった。

 しかし、そこについてもエリアスはきちんと見越した上での提案らしい。


「目立つ……ギルドの連中にだろう? それは僕もちゃんと考えてあるから心配ないよ」

「口でいわれてもな……」


 具体的に説明してくれないと納得できないな、といわんばかりのヴァラスの表情。

 だがエリアスは「そこは機密事項だよ」と前置きした上で更に続ける。


「ルギーレがいっていただろう? この中に裏切り者がいるかもしれないって。だったらこっちも裏切り者の目を欺くために色々しなきゃね。だからここはワイバーンを使って、あえて目立つ作戦を取る」


 ギルドの連中の規模は大きいし、やろうと思えば村人や行商人に変装して少人数でこっそり近づいてくることもできる。

 もちろん大人数で数にものをいわせる形で追いかけることもできる。ならば少人数のこちらは、少人数なりの戦い方をするしかないだろう。

 そのエリアスの考えていることが自分にはさっぱりわからないが、果たして他のメンバーはわかっているのだろうか? とチラリと視線を巡らせるヴァラス。

 だが、ルギーレはもとよりレディクもガルクレスも複雑そうな表情だ。


(うーん、他の皆もわかっていないみたいだな)


 一方で馬を使うとなれば、それもまたギルドの連中が途中で追いついてくる展開があるかもしれないとエリアスは考えている。

 ならば連中を一気に振り切ってしまうべく、この町でワイバーンを二匹借りて北のバイブールの修練場に一気に飛ぶことにした。

 二匹のワイバーンにはそれぞれエリアス、ルギーレ、ヴァラスの三人とガルクレス、レディクの二人のチームでわかれて乗り込む。

 そこまではいいのだが、ルギーレにはまだ不安要素があった。


(こんなに急いで大丈夫なのか? なんか、余りにも急ぎすぎて逆に不安になってくるんだが……この不安が考えすぎじゃなければいいんだけどよ)


 そしてその不安が別の意味で現実になってしまうことを、この時点のルギーレはまだ知る由もなかった。

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