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468.狙われる理由と気になる噂

「……どうしたんだ?」


 ルギーレの様子を不審に思ったエリアスが声を掛けるが、ルギーレは黙ったままである。

 その様子からルギーレの思っていることに察しがついたガルクレスが、ルギーレに対して軽めの口調で食事を促した。


「別に毒なんか入れてねえよ。さっさと食っちまいなって」

「……ああ」


 結局空腹には勝てないルギーレは、ガルクレスに促されて恐る恐るといった動きでスープを口にしてみる。

 どうやら毒は本当に入っていないらしいので、そのまま黙って食べ続けるルギーレの周りは静かな空気に包まれた。

 パチパチと焚き火の音だけが、星の輝く夜空の下で響いている。

 その沈黙を最初に破ったのはヴァラスだった。


「聞いた。私たちの中に裏切り者がいるかもしれないっていうんだろう?」

「……」


 それには答えず、ルギーレは尚も黙ったままスープを木のスプーンですくって口に運ぶ。

 ヴァラスもヴァラスで最初から答えは期待していなかったのか、黙ったままのルギーレに続ける。


「私たちも最初、レディクから聞いた時は驚いたよ。でも話を聞いていく内に、その可能性はなきにしもあらずって思うようになった」


 そういいつつ、レディクは馬車の方をチラッと見る。


「裏切り者がもし私たちの中に居るのなら、その馬車の中にある盾を回収したっていうのもすぐに伝わる可能性があるってことだろう? それがもし、この先の町とか村とかにあるギルドの支部で本当に情報として私たちも聞くことになったら、それは真実になるだろう?」

「……」


 スープを飲み終えたルギーレは黙ったまま器をヴァラスに手渡す。そして再び訪れた静かな時間。それは十秒か一分か三分か。

 時間にしたら二十秒かそこらだった気もするが、ルギーレにとってはかなり長い時間に感じられた。

 そしてパーティメンバーからの無言の視線に耐え切れずに口を開く。


「俺だって……疑いたくはねえよ。けど、もし俺たちの中にギルドの連中に対して俺たちが今までどこにいっていたとか、何を手に入れたとか今はどうしているのかっていう情報を、それこそ逐一流しているメンバーがいるんじゃないかって話になったとしたら……俺はあんたたちを信用することができなくなってしまいそうだ」

「まぁ、それはそうなるよね。僕がもしあんたの立場だったら同じことを思うよ」


 考えてみれば、お互いに出会ってからまだまだ数日しか経っていないぐらいに日が浅いのもあるのだ。

 エリアスはそんなルギーレの気持ちがわかるようだが、ルギーレがわからないのは裏切り者の存在だけではなくまだ他にもあるようだ。


「そもそも、あのカインやらがなぜ俺にそこまで固執するのか……その理由がどうしてもわからねえんだ」

「確かにそれはそうだな」


 俺も同じことを考えていたよ、とコップに入っているお茶を飲みながらガルクレスが口に出す。


「多分プライドが高いとかそういうのは考えられるけど、でもあんたは不可抗力っていうか……魔物に襲われてそれを撃退した。そしてその結果、そのカインとやらの依頼を潰すことになってしまったのが全ての始まりだったんだろう?」

「ああ」

「でも、それはそれであんたが黙っていればカインが盗賊を撃退したって話になるんだからそれで話が終わり、あんたが狙われる理由も全くなくなるだろうに。自分で盗賊を倒せなかったのがそんなに悔しかったのかな?」


 そのガルクレスの予想を横で聞いていたヴァラスが、そういえば……と思い出したことがあるようだ。


「私の店に来る冒険者たちや騎士団員たちの噂でしか聞いたことがないんだけど……ギルドの統一化が進んでいるって話があるらしい」

「統一化?」


 聞いたことのない単語に戸惑うエリアスを始めとする他のパーティメンバーに、ヴァラスは自分が知っている限りの情報を伝える。


「ああ。ほら、ギルドってこの国でも支部が色々な町や村にあるけど、ギルドの運営そのものは各国それぞれで微妙に細かい所が違うだろう? 元々ギルドっていうのは冒険者の管理を行なう組織だから、基本的な仕事内容は同じでも、そういった面で各国がそれぞれギルドを……そして冒険者の管理をすることで秩序を保ってきているのは知っているだろう」

「ああ、そうだな」


 自分も冒険者として活動しているエリアスが、ヴァラスの説明に真っ先に頷く。


「でも、ギルドに一度登録してしまえばその登録証は世界各国どこでも使えるだろ?」

「それはそうだよね。じゃあ統一化なんて話は必要ないんじゃないか?」

「だからあくまで噂だけなんだ。その統一化っていうのが何なのか、私にもさっぱりわからないんだからな。私も何で統一化なんて話が出ているのか疑問なんだけどさ」


 ギルドのシステムを理解しているガルクレスとレディクも話に加わるが、元々勇者パーティーにいて、ギルドで仕事を請け負ったりするのはマリユスやベティーナたちが担当していたルギーレは、なかなか話に入れない状況が続く。


「要するにギルドのシステムは世界各国で少しずつ違うけど、既に統一化されているはずのギルドのシステムに更に何か手を加えようとしている連中がいるって話か?」

「ああ、そういうことになるだろうな」

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