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467.ダダ洩れの情報

 本音をいえば、今まで一緒に行動してきたパーティのメンバーを疑うことはしたくない。

 しかし、その裏切り者の可能性がかなり高いと推測できる以上はこれから疑心暗鬼になりつつ行動する未来しか見えないのだ。

 悶々としたまま、二人はその村で食料を買い込んで最低限の準備を整えてから再び出発。

 あの無限通路のタイトフォン遺跡を回って、その上二人の冒険者とバトルまでして疲れているルギーレは、馬車の御者を再びレディクに任せて自分は寝かせてもらうことにした。


(レディクも裏切り者の可能性が無いといえば嘘になるがな……)


 ほら、やっぱり疑心暗鬼になっちまったじゃねえか。

 そう小さく呟きながらも、やはり今までの疲れには勝てないルギーレはそのまま襲ってきた睡魔にも負けて、深い眠りに落ちていった。



 ◇



「……そうか、その二人もやられたってのか」

「ああ。あの二人はBランクの冒険者だったからそこそこやるんじゃないかとは思ってたけど」


 帝都メルディアスにあるグリストリッヒ城。その敷地内の一角にある、帝国騎士団員専用に用意されている宿舎の更に一角。

 そこで今、ドラゴンが創ったといわれている遺跡の話についてティレジュとカインが密談を交わしていた。

 赤に近いオレンジ色の夕焼けの光が室内に差し込み、室温が高くなっている空き部屋の中。他の騎士団院も来ないこの場所は密談をするのにうってつけである。

 しかし、その部屋の温度に反して二人のテンションは下がっていた。


「Bランクの奴二人がかりでも勝てないってなると、あいつ……そこそこできるみたいだな」

「そうらしい。だが、まだお前の実力には及ばないだろう」


 不定期ではあるものの、自分たちに送られてくる情報を聞いている限りではどうやらその男は他の人間たちとパーティを組んで帝国各地を回っているらしい。

 更に、奇妙な武器を携帯しているとの情報も仕入れてある。

 だが報告された情報の中でこの二人が最も驚いたのは、強大な魔力による封印のせいで長年に渡り調査も研究もストップせざるを得なかった遺跡が、その男が現れたことによって踏破されている話だった。


 つい先程送られてきた情報によれば、南のバルトクス遺跡を踏破して北西に向かったパーティが今度は山の中にある洞窟の中のタイトフォン遺跡までも踏破してしまったらしい。

 二つの遺跡からは、それぞれロングソードと大きな盾が発見されてそれをその男が回収したらしいので、この帝国騎士団長と騎士団員の考えも少しずつ変わっていた。


「とりあえず今はその男を泳がせておくとしよう。その男はこの帝国内にあるもう一つの遺跡に向かうはずだ」

「ああ。でも……それ以外にもまだもう一つ気になる場所があったよな?」

「あそこか……あそこは警備が厳重だからそうそう入り込む隙はないはずだし、もし入られたとしてもあそこの封印はこの国から派遣された魔術師が作り上げた魔術の文様があるから、何もできないとは思うがな」


 何にせよ、その男が各地の遺跡を次々に踏破して回っているとしたら、それぞれの遺跡の封印を乗り越えられるだけの何かがその男にはあるということになる。

 だったら今は追うのを止めて、じっくりとそのチャンスを待とうと二人は決めた。


「チャンスが来るのを待って、そのチャンスをものに出来る奴が上に這い上がれるんだよな」

「それはそうだ。人生っていうのは自分の実力もあるが、運の要素も強いからな」


 伊達に修羅場を経験していない騎士団員二人は顔を見合わせて頷き合い、そのパーティに紛れ込ませている自分たちの仲間からの続きの情報を待つために、あらかじめ持ってきておいた紅茶と菓子の準備を始めた。



 ◇



 ルギーレの目が覚めると、既視感のある展開が彼を待ち受けていた。


「……ん、あ、あれ?」


 馬車の窓から差し込むのは太陽の光ではなく月明かりで、その逆のドア側からは話し声が聞こえてくる。


(もしかしてこの展開は……)


 以前にもこんな光景を見たことがあるルギーレは、そのデジャヴを感じつつも馬車のドアを開けて外に出る。

 するとパチパチと火の爆ぜる音がまず聞こえ、それに続いて焚火を囲んでいる複数の人影の姿が彼の目に飛び込んできた。



「あ、ようやく起きたんだな」


 その内の一人……あの町の宿屋でルギーレと一旦別れたヴァラスが声をかける。


「夕食はもうできているから早く食べてくれないか。片付かないから」

「あ、ああ……」


 ヴァラスの隣に座っているレディクに夕食を急かされ、ルギーレはその食事の匂いに腹の虫を鳴かせながら近づいていく。

 だが、ひとたびこのパーティメンバーの中に裏切り者がいるんじゃないかと思うと、いざ食事を受け取ってもすぐにそれを食べる気にはなれなかった。

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