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464.全てお見通し

「これだよこれ! さぁ、さっさと後はここから脱出だ!!」


 どうやら、ドラソンが盾を取っても特にこの広場にも遺跡内部にも変化はないようだ。


「また何か起こるのかと思ったけど、何もないなら後はここにもう用はなさそうだな。だったらドラソンのいう通りさっさとここから出よう」


 最初こそ無限階段ならぬ無限通路で鬱憤が溜まったものの、終わってみれば案外拍子抜けだったな……と思いつつローグは踵を返して、今度は自分が先頭で元来た道の階段を上がろうと足を進ませる。

 だがその彼の首筋に、ヒンヤリとした何かが当たる感触があった。


「その前に君からはお話を色々と聞かせて欲しいんだよな。なぜ私たちを騙してまでこうして一緒に行動しているのか……とかさ」

「……え?」


 後ろから聞こえてくる、首筋に当てられている物と同じぐらいにヒンヤリしているドラソンの声に冷や汗が出つつも、少し身体を動かして振り向いてからその感触が何なのかを確かめようとしたローグ。

 だが、彼が振り向く前にノレバーがローグの腰の武器に手をかける。


「とりあえずこれは没収ですね。こんな物騒な物を持ってたんじゃ油断できないですから」


 伝説の聖剣はノレバーによって没収され、改めて後ろから短剣を突きつけているドラソンが口を開く。


「両手を上げてこっちを向くんだ。ゆっくりとね」


 どこか穏やかな色のあった今までの声と同じとは思えないその冷たい声色に、言われた通りに後ろを振り向くローグ。


「さて……私たちをこうまで騙して何をしたかったんだ? 君は」

「騙すって何だよ?」


 あくまでシラを切るローグだが、二人の冒険者たちの表情は何も変わらない。

 むしろ表情の変化を見せるのはローグの方だった。


「知ってたんだよ、君が私たちを騙していることなんてな」

「は?」


 呆れ顔のドラソンにそう言われてポカンとするローグに、ノレバーからこれまでの真相が語られる。


「あなたたちが何をしているかなんてね、全てギルドに情報が筒抜けなんです。あなたたちをずっと見張っている人がいるんですからね。ローグという名前も偽名で、本当の名前がルギーレだというのも知っているんですよ?」

「え、ええっ……」


 まさか、自分たちのパーティの中に裏切り者がいるのか?

 それとも自分たちのパーティをずっとつけてきている暇な人物がいるのか?

 明らかに挙動不審になるローグ……いやルギーレに対し、ノレバーの口から止めの事実が告げられる。


「それに……ここに来る前に馬車の中で自分の村が壊滅したとか身寄りがなくなったとかっておっしゃってましたけど、それも全て嘘ですよね? なぜならカイン様から、あなたの風貌や服装がギルドで情報共有されているんですからね」

「……なーんだ、知ってたのか」


 挙動不審になっていたルギーレだが、ズバッと事実を突きつけられると色々と吹っ切れてしまったので完全に開き直る。


「そうだよ。俺はあんたたちギルドの奴等から手配されているルギーレだ。でも元はと言えばあのカインが悪いんだよ。俺に変な言いがかりをつけてくるからな。それで俺は逃げた。で、何とかここまで進んできた。そして宝物も回収したんだが、それを今あんたたちがこうして奪おうとしている。俺は俺の目的のために遺跡を回って宝物を集めなければならないんだ。そしてあんたたちからギルドの連中に関しての話を聞こうとしていたんだがな……」

「それはどうやら失敗しちゃったみたいだな。残念だったなぁ?」


 恐ろしい程に無邪気な口調でドラソンが嘲り笑い、ノレバーも鼻で笑う。


「ふっ……甘いですよ。僕たちもギルドの人間ですからここであなたを捕らえます。できれば生きて捕まえてほしいと言われていますが、最悪の場合は生死は問わないともカイン様から通達を受けているんです。それにギルドの仲間も、あなたが昨日寝ている間に通話魔術で連絡を入れておきましたし、もちろんこの盾も渡しませんよ」

「というわけで、抵抗しなかったらケガしないんだから大人しくするんだぞ」


 その瞬間、ルギーレは前蹴りでドラソンの腹を蹴って尻もちをつかせる。

 それを見たノレバーが動く前に彼の首に両手で真っ直ぐパンチを入れ、彼も怯んだところでその手に持っている盾を地面を転がりながら奪い取った。


「だったらこうするしかないよな?」


 最深部で回収したばかりの盾を片手に掲げてルギーレが宣言すれば、二人の冒険者たちは黙って武器を構えた。


「ノレバー、どうやら黙って私たちに盾を渡してくれる相手ではなさそうだな」

「そのようですね。だったら力づくでも奪います!!」


 完全に敵となった冒険者たち二人を相手にすることになってしまったルギーレは、二人を相手にしてせっかく見つけた宝を奪われないように戦わなければならない、という展開になってしまった。

 そうしなければ今までの苦労が全て水の泡である。

 二人の武器はもう嫌というほど見てきているが、ベテラン冒険者のドラソンが探検と魔術で若手冒険者のノレバーがロングボウだ。


「よっ!」


 これでも一応は勇者パーティーに在籍していた身だし、これまでの冒険で戦いの経験も積んできているため、盾で弓と魔術を防ぎながら何とか勝負を繰り広げることができている。

 しかし、余り時間をかけ過ぎると彼らが声をかけたという増援のギルドの冒険者たちが来てしまう。

 それだけは何としても避けなければならないので、何としてもこの二人の冒険者たちから逃れたい……と思うのだが、流石にこういう場所に踏み込むだけの覚悟を持っている冒険者たちともなれば簡単に見逃してくれるはずもないし、すんなりと倒れてくれるわけもなかった。

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