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463.盲点

 とりあえず三人は一旦タイトフォン遺跡の出入り口に戻ってみて、そこでもう一度看板を見てみることに。

 その戻るルートもノレバーが予想した通り、来た道を戻るのではなくそのまま真っ直ぐ進んでみると右へ分かれ道が現れたので、そっちに折れてみると出入り口にたどりついてしまったのだった。


「何だよ……な駄な時間過ごしちまったな!!」


 思わずダンッと地面を足の裏で蹴るローグ。

 それでも何とか気を取り直し、改めて看板を見て自分たちの進むルートを確認してみる。


「えーと……やっぱりこの看板だと左回りの一本道なんだな」


 後は特に看板に変わった所はないんだけど……と首を傾げるドラソンの横で、ローグがいきなり看板をめくってみる。

 するとそこに、最初に看板を見た時には気がつかなかったあるものを発見。


「……あれっ? 地図の看板の裏に変なくぼみがあるぞ?」

「え?」


 何か不自然な点はないかと思い、看板の裏側も確かめてみようと思ったローグのその行動が大きな進展を呼んだらしい。

 ほらここ、と木製の大きな看板をめくって指を差すローグに続いて、二人の冒険者たちも看板の裏を確認してみる。

 するとそこには確かにローグのいう通り、岩の壁が不自然に凹んでいる。


「え、これって看板を取りつけるためにわざと凹ませたんじゃないのか?」

「いいえ……明らかに看板のサイズと合わないくぼみの大きさですから不自然ですね」


 そう言いながらノレバーがくぼみに手を触れてみれば、思いのほかそれはあっさりと奥に押し込むことができた。

 その瞬間、ゴゴゴ……と洞窟の中に轟音が響き渡る。


「えっ、えっ!?」

「何だ!?」


 思わず武器を構える三人だが、その轟音が収まっても特に魔物が現れたとかそういう事態にはならなかったらしい。

 しかし、看板裏の不自然なくぼみがスイッチになっていたらしく何かしらの変化が起こったのは確実なので、今度こそ無駄足にならないように……と願いながら三人は再び通路を左回りに進み始める。

 すると、マップの通りに進んで来た場所が岩壁で突き当たりになってしまっているではないか。

 しかもその岩壁は明らかに自然にできたものではなく、人工的に作られた仕掛けらしい。

 そして人工的な仕掛けはその岩壁のみならず、岩壁を正面に見て左側の岩が横開きのドアになっており、その奥に階段ができていたのだ。


「……行くか?」

「もちろんです。こんな仕掛けがあると分かってしまった以上、進まないで引き返す訳にはいきませんからね」

「そうよね。でもまさか看板の裏にくぼみがあるなんて盲点だったわ」

「それは心理的な要素だろうな」


 看板があれば、普通だったらその表面「だけ」を注目して見てしまうものだし、裏までめくってみるなんてことは普通しない。

 そんなことをするのは余程の変人か、今のローグみたいに疑いの視線を向けた上で何かないかと調べてみる考えを持った人物ぐらいのものだろう。

 その心理的な要素をあえてぶち破ることにより、新たな道がこうして開かれた。


「うわっ、狭いな……」


 ちょっと大柄な人間が二人すれ違うのがやっとと言ったレベルの幅しかないこの階段だと、もし幅のある肩当てをつけている場合は一人しか通れないんだろうな……とドラソンは思ってしまう。

 その一方で、ノレバーは階段の伸び方を考えていた。


「……うん、これなら問題はなさそうですね」

「何が?」


 ノレバーに前を、ドラソンに後ろをという隊列で冒険者たちに挟まれて歩くローグは、先頭を歩くノレバーのその呟きを聞いて意味を尋ねる。


「この階段のことですよ。あのくぼみを押す前は通路に騙されていた私たちですが、今回は問題なく順調に地下に向かって進んでいるようです」

「そうか、それなら安心だな。これがいわゆる封印って奴だったんじゃないのかな?」

「そうかもしれないな」


 ドラソンも後ろから同意の声を上げる。

 今までの冒険者たちは看板の裏の仕掛けに気がつくことがなく、ただ単に同じ場所をグルグル回らされていたので諦めて帰ってしまったのであろう。

 それはそれで、誰か自分と同じようにあの仕掛けに気がつく奴はいなかったのか? と若干呆れてしまうローグ。


(冒険に出る様な奴って、脳まで筋肉に侵されている様な連中ばかりなのか?)


 こんだけここに来る人間たちがいたんだったら、それこそ誰か気づけよ……と結局呆れてしまうローグたちは、左回りの階段をどんどん進んでゆっくり地下に下りて行く。

 どこか悶々としたそんな感情がありつつも、階段も一本道だったようで結局そのまま最深部にたどりついた三人。


「ここでどうやら終わりみたいだな」


 ここにもまだ何か仕掛けがあるのでは? とキョロキョロと辺りを見渡すローグだがその必要はどうやらないらしい。

 なぜなら階段を下りた先に現れた、天井が高くなっている岩壁に囲まれた土の地面の広場の奥の壁に、大振りで縦長の盾が掛けられていたからである。


「おい、あれが宝じゃないのか?」


 真っ先にその盾に向かって走っていくドラソン。

 この後の展開だと盾を取る前、もしくは盾を取った直後に最初の遺跡の時と同じく番人級の魔物が現れるんじゃないか? とか洞窟が崩れ出して閉じ込められてしまうのでは? と考えるローグだが、果たしてその結果は……?

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