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460.作戦変更

「なっ、何だ!?」


 驚きながらノレバーが先にその黒い影の元に辿り着けば、すぐにその正体が判明する。


「ぐぅ、あ……」

「ちょ、ちょっと……ローグさん!?」


 ドラソンも駆けつけてその影の正体がローグだと判明するが、その時頭上からもう一つ影が降って来た。


「っりゃあ!!」

「くっ!?」


 今しがた割れた二階の窓から飛び降りて来たのは、ロングソードを下に向けて突き出す格好で明らかに姉妹を狙っている紫髪の男だった。

 その紫髪の男の突き刺し攻撃を素早く横っ飛びで回避するノレバーとドラソンに対し、攻撃を外した紫髪の男は、石畳の地面に突き刺さったロングソードを引き抜いて二人の冒険者たちをその緑の目で見据える。


「てめぇらか、俺たちの宝を狙っているこいつの仲間ってのは?」


 ギラギラと殺気をみなぎらせる紫髪の男に対して、二人の冒険者たちは応戦するべくそれぞれ武器を抜こうとした……が。


「うっ!?」


 その二人の足元に今度は一本の矢が突き刺さる。

 矢が飛んで来たのはルギーレが落とされ、紫髪の男が飛び降りてきた割れた窓の方だった。

 そこには淡い金髪で黄緑色のコートを着込んでいる男が、弓を構えてノレバーとドラソンを見据えている。


「今ならまだ見逃してあげるよ。さっさと退散しろ!!」

「く……退くぞ!!」

「は、はい!!」


 この形勢は圧倒的に不利だと判断し、ここはルギーレを見捨てた方が得策だと判断したドラソンはノレバーを連れて逃げ出した。

 何とか逃げ切って身を隠して一夜明け、剣の持ち主たちから逃れた二人の冒険者たちは作戦を練り直す。


「ちっ……あのローグとかいう男のせいで全てが台無しだ!!」

「あの方に頼んだのは間違いでしたね」


 プリプリと怒るドラソンと、額に手を当ててハァーッとため息を吐くノレバーのリアクションはそれぞれ全く違うが、どちらも落胆と怒りの色が見えるのは同じである。


「これからどうする?」

「とりあえず、今回は早々にこの町から引き上げましょう。剣を持っているっていうあの人たちの行き先なら大体の見当は付きます。恐らくは北の方にある登山道の先の遺跡でしょう。ですからそこにギルドの人たちにも声を掛けて先回りをしておけば、今回みたいな失敗は無いと思いますよ」


 せっかく探し求めていたお宝の情報を手に入れたと言うのに、まさかの乱入者のせいで全てが台無しになってしまった二人の冒険者たち。

 出鼻をくじかれた形になってしまったノレバーとドラソンだが、まだあの剣を奪い取るという野望は潰えてはいない以上、ここで諦める訳にはいかない。

 しかし、この町でウロウロしていてはまたあの集団に見つかる可能性もあるので、まずは町を出てその登山道に向かうべくギルドの人間に頼んで乗り合い馬車を手配しておく。


「食料は買い込んだか?」

「ええ、問題ありませんよ。それじゃ行きましょうか」

 登山道まではこの町から一日ちょっと掛かる距離なので、食料だけは最低限しっかり買い込んでその馬車へと向かう二人の男だが、馬車の前まできたそんなノレバーとドラソンの前に再びあの男が現れた。


「よっ、お互いどうやら生きていたみたいだな!!」

「な……何で君がここにいるんだ!?」

「またあなたですか……」


 乗り合い馬車の前で待っていたのは、前日の夜中に宿屋の二階から木箱の山の上に落ちてしまったローグという男だった。

 しかも朝なのにかなりのハイテンション。ノレバーとドラソンは更にローテンションになる。

 そのローテンションの二人の様子を知ってか知らずか、ローグはとんでもないことを言い出した。


「その格好だとこれから北の登山道の遺跡に向かうんだろ? 俺も一緒に行くからよろしくな」

「は?」


 この男は一体何を言っているのだろうか。

 これ以上、まだ自分たちの足を引っ張る存在となってしまうのだろうか?


「断る。何で私たちの足を引っ張った人と一緒に行動しなければならない?」


 真っ先にドラソンがお断りの返事を出す横で、ノレバーも無言で首を縦に振って同意する。

 それに対し、ローグからはちゃんとした言い分があるらしい。


「何だ? もしかして昨日の夜の話か?」

「それ以外に何がある?」

「待て待て、それだったら俺にもちゃんとした言い分があるんだからそれ聞いてからにしてくれよ。誤解されたままでああだこうだ言われたんじゃ、俺だってわかってもらえなくて気分悪いしさ」


 そう前置きをした上でローグは二人の冒険者たちに理由を述べようとするが、その言い争いで馬車の出発が遅れているので御者からイライラした口調の声がかかる。


「おーい、乗らないんだったら僕はもう行ってしまうけど?」

「あーすまんすまん、乗るよ!! じゃあ続きは馬車の中で……ってことでほら早く乗った乗った!!」

「え、あ、ちょっと!?」

「おい、そんなあなた強引に……!!」


 ローグは驚くドラソンと罵声を浴びせるノレバーを半ば無理やり馬車に押し込み、三人の乗客を乗せたその馬車は北の登山道に向けて出発。

 こうして、ルギーレは一旦パーティを離れて二人の冒険者たちと一緒に別行動をする展開になった。

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