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459.奪うための計画

 長台詞のルギーレの言い分に、二人の男は再度顔を見合わせる。しかし、どちらの顔にも先ほどのような渋い表情は浮かんでいない。


「う、うん……確かにそういわれればそうかもしれないが……君はどうしたい?」

「この方の言い分も確かに一理ありますね」


 ともに納得した表情を見せ、この男たちとルギーレの共同戦線が組まれた。


「決まりだな。そういえばまだ二人の名前をしらないからよければ教えてくれ。俺はギルドに所属しているローグだ」


 もちろん偽名である。適当に考えただけの名前なのだが、仲間は信じてくれたらしい。


「ローグさんだね。私はドラソンだよ」

「僕はノレバーです。よろしくお願いいたします」


 お互いのことを知ったところで、まずは三人であのロングソードを奪うための計画を立てる。


「とりあえず、俺がまず偵察で部屋に踏み込む。向こうが完全に寝ているかどうかも確かめなきゃいけないし、ただでさえここの宿は古くて汚くてボロい安宿だからな」


 ルギーレの提案にノレバーも同意して頷く。


「そうですね。僕も昼間ここに偵察に来てこの宿の中を歩いたからわかるんですが、古いのもあるしろくにメンテナンスもされていないみたいですから、木製の床でかなりギシギシ音がするんですよ」

「ということは私たちみたいに金属の武器を持っていたり、肩とか胸に鎧を着けているとなると、その金属音と床の軋む音で連中を起こしてしまう可能性が高いな」


 それを考えてみれば、それぞれの武器をこの宿の中で振り回すのはかなり厳しそうである。

 とはいっても中年の冒険者であるドラソンは短剣使いなのでそこまで物音を気にしなくてもいいし、若手冒険者のノレバーは弓使いなのでやろうと思えば遠距離からの狙撃で何とかなるかもしれない。

 しかし、夜の静まっている中で音が響きやすいとなればここは用心に用心を重ねた方が無難だろう。


「しかも相手は多人数って情報があるのでしょう? とすると僕たち三人がいっぺんに踏み込んだとしたら、誰か一人が捕まってしまえばそれで計画が露呈してしまいますね」


 ノレバーが納得し、ドラソンも頷いてルギーレの計画を受け入れた。

 その計画を話し終え、ルギーレはすっくと立ち上がって宿の二階を見据える。


「それじゃ俺が先に行く。何かあったらすぐに戻って来るし、もし戦うことになったら俺は見捨てて逃げてくれていいぜ」

「えっ、でもそれじゃ……」


 あなたはどうするんですか、と言いかけたノレバーを手で制してルギーレは続ける。


「俺から作戦の提案をしたんだし、仲間にしてくれって言い出したのも俺だ。つまりこの作戦は俺の独断だといってもいい。色々と無理もあるだろうし、なるべくあんたらを巻き込ませるわけにはいかないからな」

「……わかった、気をつけるんだぞ」

「ちょ、ちょっとドラソンさん!!」


 少しは引き止めてくださいよ!! とノレバーは自分の相棒を促すものの、それでもドラソンの考えは変わらないらしい。


「いいや、彼の意志は固いだろうから私たちが何をいっても無駄だろう。そのかわり私からいえることは、君も無理は禁物だよ。異変や身の危険を感じたりしたらすぐに撤退しなさい。いいね?」

「わかったよ。なるべくすぐに戻るけど、もし十五分経っても俺が戻らなかったらギルドに戻ってくれ」


 自分で設定したタイムリミットの十五分を胸に刻み、ルギーレは宿屋の出入り口の闇へ消えて同化していった。

 そんなルギーレの後ろ姿が闇の中に消えるのを見計らって、小柄な冒険者のノレバーが口を開く。


「ドラソンさん、あの人……何だか怪しくないですか?」

「ああ、かなり怪しいと思う。いきなり私たちに協力を申し込んできた時点で怪しいし、そもそも本当にギルドの冒険者なのかもわからないからな」


 実際のところ、丸腰の状態で協力を申し込んでくること自体が冒険者だとはとても思えない。

 部屋に武器を置いてきたとさっき言っていたので、もしかしたら寝る時に邪魔な防具も外して置いてあるだけなのかもしれない。

 しかし大柄な冒険者のドラソンは、ノレバーと同じく彼のことを怪しいと思いつつもまだ信じてみようと思っている。


「それでも、あの計画をすぐに立てられるだけの頭の回転の速さには驚いたな。私たちに協力したいと申し出た時のもっともな理由付けもそうだが、踏み込む前の計画の立て方も素人のそれではないように感じたから」

「まぁ、それはそうかもしれないですけど……」


 疑いの視線を未だに止めようとしない相棒を横目で見つつ、とにかく何事もなく剣を奪い取って来てくれればそれで良いとドラソンは思っていた。

 ……のだが。


「うおおっ!?」


 そんな驚きの声とともに、出入り口のすぐ上にある二階の窓が派手に割れる。

 それと同時に、薄暗い町中に降り注ぐ月明かりに照らされた黒い影が落ちてきて、出入口の横に積まれている木箱の山に叩き付けられた。

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