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457.情報戦

 ルディアとの会話を終えてパーティーメンバーたちの元へと戻ったルギーレだったが、先ほどまでの昼食を摂っていた場所に戻ってみると誰もいないことに気が付いた。


(ありゃ? あいつらどこ行ったんだ?)


 まさか自分を置いて先に遺跡に行ったんじゃないだろうな、とあたふたしそうになるルギーレだったが、どうやらその心配は杞憂に終わったらしくすぐにメンバーたちが集まってきた。


「おいお前ら、どこ行ってたんだよ?」

「ん? ああ、僕はトイレに用を足しに行っていたよ」

「私は弁当の空になった容器を捨てにゴミ箱を探しに行っていた」

「俺はレディクと一緒に町中でもう一回情報収集。あんたがなかなか戻ってこねえからよ」

「あ、ああ……すまん。ちょっと立て込んでてよ」


 ただでさえあのカインとやらに目をつけられて緊張感が抜ける暇がないというのに、更にその他の理由でギルドの連中に狙われているとなれば、ルギーレはもう何もかも捨てて逃げ出したい気持ちで一杯だった。

 しかし逃げ出した所でどこに行くというアテも無いし、頼れる人脈は今の所このパーティメンバー以外に居ない状況。

 結局、その日は荷物も色々と買い込んだし馬もしっかりと休ませてから出発した方がいいだろうとパーティ内で結論が出たので、ルギーレのことも考えて町外れで見つけた安宿で一泊することが決定。

 町の中心部にある観光客向けの小綺麗な宿よりも、かえってこういうさびれた安宿の方が周りの利用客の素性も余り知られないので、身を隠すのにはうってつけだとガルクレスが言ったこともあってルギーレも納得する。

 ベッドのスプリングがガチガチに硬かったり、窓に修復した跡があったり床がギシギシ軋み過ぎて今にも抜け落ちてしまいそうな不安に襲われたりするものの、セキュリティの面を考えて我慢することも大切だと感情をコントロールするルギーレ。

 小さいけど数軒隣に飲食店もあるので、夕食はそこで摂ることにした。


「ギルドの連中、まさか嗅ぎつけたりしないよな……」


 相変わらず警戒心を剥き出しにするルギーレに対して、エリアスが苦笑いを浮かべる。


「大丈夫だと思うよ。僕たちだっているんだしいざってなったらまた逃げればいい。それにギルドの連中の情報もいくらか仕入れてきたけど、今の所はそのカインに動きは見られないみたいだ」

「……わかるのか?」


 そもそもそんな簡単にカインとやらの動向が分かるものなのか? とルギーレには疑問なのだが、それについてもエリアスはしっかり説明をする。


「あー、そのカインっていうのがなかなかの実力者だからこそだよ。色々と武功を打ち立てた伝説の傭兵だとか稀代の冒険者だとか大層な噂になっているけど、実際にはそこまでの実力はないらしい。でも、国中で名前や顔が知れ渡っている人間でもあるからさ。ということは君以上に身を隠してコソコソするなんて無理な話だよ。それこそ転送魔術でも使わない限りは行く先々で目撃されることになるんだからね」

「……うーん……転送魔術か……」


 ルギーレはそれを聞いてますます不安になる。


「ちょ、ちょっと待て。だったら待ち伏せとかもあるんじゃないのか?」

「それは……否定できないな。こっちも向こうの情報を全てキャッチできている訳じゃないし」


 気まずそうな顔をしながら、エリアスはテーブルの上のお茶を煽った。


「とりあえず飯を食ったら早めに寝ちまって、朝早く出発しようぜ」

「そうすっか」


 話はそれで終わり、旅の疲れや緊張感もあってすぐに用意された部屋で寝入ってしまったルギーレだったが、夜中に尿意を催して起き上がる。


(あー……酒場で茶を飲み過ぎたかな?)


 呑も飲むといえば飲むのだが、呑んでも酔わないレベルでセーブしておくのがルギーレ。しかし、酒場では会話が弾む余りお茶をガブガブ飲んでいたことが思い出された。

 そしてこの宿屋にはトイレが何と屋外に設置されているらしく、一旦外に出ないと用も足しにいけないという不親切設計だ。


(ま、安宿だから仕方ないのかもな)


 時刻はまだ夜更け。しかもこういう安宿では、排泄関係の設備が整っていないらしく外にあるトイレでは頭にくる臭いが充満している。

 だがその時、立って用を足しているルギーレの耳に気になる音が聞こえてきた。


(……ん? 足音?)


 ザッザッザッと土の地面を踏みしめるのは間違いなく足音なのだが、気になるのはそれが複数あることだ。

 音からすると二人ぐらいではないかと思っているルギーレだが、次の瞬間信じられない声が聞こえてきた。


「おい、本当にここにその剣があるのか?」

「そうらしいですね。今なら寝静まって警戒も緩んでいるころでしょうから、さっさと剣を持ち去ってしまいましょう」


 無意味な戦いをするのは手間ですからね、と言いながら遠ざかって行く聞き覚えのない男の声に、丁度用を足し終わったルギーレは早足で駆け出していた。


(お、おいおいおい……!!)


 この時点でルギーレの頭に真っ先に思い浮かんでいたのは、昼間エリアスの口から語られた情報の内容だった。

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