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455.広まる情報

「はい、お弁当買ってきたよ」

「ああ、すまないな」


 町外れの広場に五人が集まり、地べたに座り込んで昼食を摂る。

 そして前にやった時と同じくレディクとルギーレ以外の三人で情報収集もしてきてもらったのだが、事態は更にがんじがらめの方向に進んでいるらしいと判明した。


「ギルドの連中が?」

「ええ。あのバルトクス遺跡を私たちが踏破したってことがもう知れ渡っているみたいだ」

「まあ、あそこの遺跡の難攻不落さとその異名はかなり知れ渡っているらしいからな。噂が広がるのも無理はないだろう」


 ついこの前、自分たちは「命食いの遺跡」と呼ばれる場所を踏破して、そこに置いてあった宝物らしいロングソードも手に入れたばかりなのに、もう知れ渡っているなんて……とルギーレは頭を抱える。


「おいおい……それって俺の情報も広がっているってことにならないか?」


 自分の姿もいつどこで見られているか分からないので、展開的な意味で仕方がない場合を除き自分は目立たないようにしているルギーレ。

 事実この町でもそうなのだが、自分で情報収集をするためにギルドには出向けないし町中もなるべく歩き回らないようにしている。

 せめて手配が解ければ自由に情報収集ができるのに……と歯痒い気持ちで一杯なのだが、そんなルギーレに更なる追い打ちをかけるような新たな事実がガルクレスから知らされる。


「今の所はあんたの情報が出回っているってのは聞いていない。だけど、この剣を狙っている連中がいるって話を聞いたんだ」

「え?」


 バルトクス遺跡で回収したロングソードをルギーレの前に差し出してガルクレスがそういうが、それがルギーレの心の中のざわめきをアップさせる。


「おいおいおいおい、俺の情報が出回ってないのはいいとしても、それを狙うっていうことは自然と俺も狙われるってことにならないか?」

「……受け答えが何だかマンネリだな。でも、あんたのいう通りこの剣を狙う人たちがいるっていうのは何となくわかるよ」


 ルギーレの返答に冷ややかな目つきで突っ込みを入れるヴァラスが、何故この剣が狙われるのかをなるべく手短に説明する。


「今まで未踏だったその遺跡を最初に踏破した一行、それも遺跡の隅々までを軽くとはいえ全て踏破して、そこから何かを持ち出した。その「何か」っていうのがこの剣だと分かったら、確かにかなりの値打ちがある物だと誰もが思うはず。それが一見古びた剣だとしても、遺跡から発掘されたというだけで鑑定したい学者も山ほどいるだろうしね」

「……人間の欲望って恐ろしいもんだな」


 勇者パーティーで活動していた時も「人間は欲望の塊」だとか「欲望に終わりはない」とかのセリフを耳にすることはあったし、自分も人間の一人だけあって全く欲望がないかといわれれば、それは嘘であるとルギーレは断言できる。


「で、その欲望丸出しでこの剣を狙っているのはギルドの連中か? それとも学者とかか?」


 どっちにしても、この古びたロングソードがマルニスとセルフォンに再会するための手かかりの可能性もあるので、そうそう簡単に手放す訳にはいかないと思っているルギーレ。

 そして、ヴァラスの口から出てきたのはルギーレの予想通りの人物の話だった。


「そういう連中もいるんだが、やはり話題に上がってきているのはカインと、彼の仲間のティレジュという騎士団員の男って話だ」

「二人組……しかも片方は騎士団員だって?」

「そうだ。騎士団がバックについているということは、間違いなくこれまで以上に私たちへの追撃が厳しくなるだろう」


 そこまで追っ手たちが増えてきているとなれば、早急に残りの遺跡も踏破していかなければならないので、ここはさっさと町を出て次のタイトフォン遺跡へと向かうべきだろう。

 しかし、その話の後にガルクレスから手渡されたものを見てルギーレは大事なことを思い出した。


「あ、そうそう……はいこれ」

「これは?」

「これは、って……あんたが欲しがってた魔晶石だよ。俺たちが買ってきたんだ。とりあえず十個もありゃー十分か?」

「お……おう! ありがとな!!」


 そうだ、バタバタしていてすっかり忘れていた。

 魔晶石を手に入れたら、このアーエリヴァの国外で待っているルディアたちやはぐれてしまったままのマルニスとセルフォンに連絡を入れておかなければならない。

 ルギーレは弁当を一気に腹の中に収め、他のメンバーたちから離れた場所で念願の連絡をようやく開始したのであったが、その連絡の中で奇妙な話を聞くことになろうとは思いもしていなかった。

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