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451.無駄な労力と新たな事実

「やっぱりか……」

「やっぱりって?」

「あのドアの横にレバーがあっただろう? 今、俺はそれを一旦上げてきたんだ。そうしたらさっきのもの凄い音がしたんだけど、こっちの状況はどう変わった?」


 ガルクレスとレディクにルギーレが尋ねると、二人は見たままの状況を話す。


「さっき、あんたがそのレバーを上げた時だと思うけど……俺とレディクの目の前でこの穴にどんどん水が貯まっていったよ」

「そうだね。それから奥の方から何かが動くような音も聞こえてきたんだけど、あれはおそらく水門が開く音か何かだと思う。カラカラカラッて滑車が回るような音が聞こえたからね」


 それを聞いてルギーレも頷く。


「じゃああのレバーは下げっ放しにしておこう。手動で水門を操作できるんだったらここの調査もできるだろうしな」


 もう一度レバーの所に進み、再度レバーを下げて水門を操作(?)してから地下二階の捜索を始めようとした三人。

 しかし、その前に上の階にいたはずのエリアスが下りてきて合流した。


「あ、いたいた……ちょっと上に来てくれるか?」

「あれっ、どうしたんだ?」

「ああ、上の方で僕とヴァラスが不思議なものを見つけてね。それを僕たちと一緒に見てほしいんだよ」


 どうやら地下一階でも何かを発見したらしいので、導かれるままに三人はエリアスと一緒に上の階へ。

 その辿り着いた先では、背中越しでも十分にわかるほどにヴァラスが腕を組んで首を傾げる姿があった。


「あ……ルギーレ、無事で良かったぞ」

「俺はまだ生きているよ」

「無事で何よりだ。それはそうとヴァラス、何かわかったか?」


 エリアスとヴァラスは何かを相談していたらしいのだが、ヴァラスは首を横に振って溜め息を吐いた。


「ううん全然。この箱……ビクともしないぞ」


 ヴァラスの視線の先には、シングルベッドサイズの大きな木箱がデーンと床に鎮座している。

 これだけの大きな箱ならば中に何かがあるだろうと思い、エリアスとヴァラスはさっそく開けてみようとしたのだが、どうやらカギがかかっているようでフタがビクともしないのだ。


「だったら壊してみれば良いんじゃないのか?」


 例えば、開かない扉を壊してでもこじ開ける時と同じ感覚でそう提案するルギーレだが、既にその類の方法は同じことを考えてエリアスもヴァラスも試したらしい。


「もうやったんだよ。だけど魔術防壁……それもかなり強力なものがかかっているみたいで、殴っても蹴ってもダメだし魔術でもビクともしないんだ。だからガルクレス、あんたなら今までの経験で何とかならないか?」

「え……」


 そのために呼ばれたのかと話が繋がって困惑するガルクレスだが、彼の困惑の原因はそれだけではない。


「いや、多分俺でも無理だと思うぞ。魔術防壁がかかっているんだったら物理攻撃は無意味だろうからな……一応やってみるけどよ」


 そう言いながらロングソードを腰から引き抜き、風を切りながら木箱を切断しにかかるガルクレス。

 中に大事な物が入っていたら困るのでできるだけ端を狙ってみたのだが、途中で不自然にロングソードが弾かれてしまった。


「えっ!?」

「ああ……やっぱりだよ。恐らくこれは物理も魔術もどっちの攻撃もダメなタイプの魔術防壁だろうな」


 残念そうにロングソードを腰の鞘に収めながらガルクレスは魔術防壁の説明をするが、こんな目の前にあるのに諦められるわけがないだろうとルギーレがレイグラードの柄に手をかける。

 そして自分の体内にある魔力をレイグラードの中に送り込みつつ、狙いを定めて聖剣を振り上げる茶髪の若者。

 そのルギーレの姿を「結局ダメだろう」と冷めた視線を送る他の人間たちだが、その表情が驚きと羨望のものに変わったのはすぐのことだった。


「ふぅぅぅぅ……はああああっ!!」


 気合いを入れて、強大な魔力を放出させながらレイグラードをその木箱に向かってルギーレが振り下ろせば、その木箱にかかっているはずの魔術防壁などまるで最初からなかったかのようにスッパリと木箱の側面が切断された。


「……おい、開いたぞ?」

「な……んだとぉ!?」

「ねえ、まさかその剣って魔術を弾くとかってものなの!?」


 あっけなく開いてしまった木箱に唖然とするルギーレと、違う意味で唖然とするヴァラスとレディク。

 そしてパーティーのリーダーであるガルクレスもまた、ルギーレの持っているレイグラードに興味津々だ。

 しかし、これについてルギーレはどう答えていいのかわからずただ思ったことを口に出してみる。


「さぁ、俺にもわかんねーよ。ただ単にこれを振ってみたら木箱を斬ることができたってだけだぜ。……まあ理由はどうであれ、木箱が開いたんだから中身をチェックしようじゃねーの」


 自分のやったことに対してそれだけ言って、ルギーレは今しがた自分が開けた木箱の中を覗き込んだ。

 そんなルギーレの姿を見て、エリアスはどこか納得したような表情を浮かべつつ心の中でこうつぶやいた。


(レイグラード……ここにあったんだね)

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