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449.デジャヴ

100万PV突破しました。

これからもよろしくお願いします。

 レイグラードを携えて中に踏み込んだその部屋は、円形の広場からうって変わった正方形の部屋だった。

 その正方形の部屋は横にも広いのだがかなり天井が高く、約三階部分位までの高さはあるかも知れない。部屋を囲む壁は途中で途切れており、そこを足場にして窓がついているのが見えるので空気の入れ替えができるのだろう。


(あそこの部分が地上一階だとしたら、俺の居るこの高さは地下二階部分って所か)


 部屋の中からドスン、ドスンと足音が聞こえてきていたのはわかった上でここに踏み込んだルギーレではあったが、今はその音がまるで聞こえない。


(変だな……)


 まるで自分が来るのを察知して歩き回るのを止めてしまったようなその音だが、立ち止まっていてもしょうがないのでルギーレは正方形の部屋の中を警戒しながら進む。

 すると、その突き当たりの壁に奇妙なレバーが設置されている。デジャヴだ。


「またか……」


 これを下げたらまた床が抜けて……とさっきのことを思い出して、今度は下ろすのは止めておこうとレバーには目もくれずにその隣にあるドアを開けようとした……のだが。


「……っ!?」


 突然、後ろから異様な気配を感じてルギーレはバッと気配の方に振り向く。

 そんな彼の目の前に次の瞬間、大きな黒い影がドスンと大きな音を立てて着地した。

 足元の水をバシャッと周囲に飛び散らせ、大きく咆哮を上げるのは異形の怪物である。

 背丈はルギーレのおよそ二.五倍。それだけでもかなりの圧迫感があるのに、一番の特徴はその腕が肩から生えているのが二本の、脇腹から生えているのが二本で合計四本あることだろう。

 足こそ二足歩行で人間の自分と変わらないのだが、相手の腕が四本あると攻撃のアドバンテージは確実に自分よりもあるだろうとルギーレは分析する。

 飛び降りてきたのは窓のある部分かららしく、その手には棍棒らしきものをそれぞれ持っているのでリーチの面でもかなり不利だろう。

 そして、どう考えてもこの状況は友好的な展開になるとは思えないルギーレ。


(何でだ……何でこうも俺が一人の時に限ってこんな魔物が……)


 デジャヴを再び感じる。

 あのスケルトン軍団の時もそうだったのだが、自分が一人になってしまった時にこうやって魔物と遭遇してしまうのはついてないといえる。

 しかし、この状況で立ち向かうのは無謀なのでレバーの横のドアを開けて一旦撤退しようとするルギーレ。

 こんな不利な状況で戦うのはゴメンだとばかりに、木製のドアを押して開こうとする……が。


「……んっ!?」


 開かない。

 もしかして押すんじゃなくて引くのか? と金属製の取っ手を引っ張ってみるルギーレだが結果は同じで開かない。


「うっそだろおい!?」


 どうやらカギが掛かっているようだ。

 くそっと悪態をつき、ルギーレは魔物の方を振り返る。


「っ!?」


 その扉のことで慌てていたのが大きな隙になり、魔物が下の左腕で既に棍棒を振りかぶるのが目に見えた。

 とっさに手に持っているレイグラードを振り回し、パワーを相殺することに成功。


(あっぶねえ……)


 レイグラードの重さで何とかその場は退けることに成功したが、もし魔物にもっとパワーがあったなら自分は打ち負けていただろう。

 それで怯んだ魔物の腹部目がけてスピードのある突きを入れるが、身体の大きさや防御力の違いもあって余り怯んでくれないらしい。


(くっそ、デジャヴだ!!)


 以前にも耐久力のある敵たちと勝負してきた時の記憶が蘇り、この遺跡に入って三回目のデジャヴである。

 しかし、手が二本だろうが四本だろうが人間と基本は変わらないことに気がついたルギーレは、その前蹴りでたたらを踏んだ魔物の左膝の関節目掛けてレイグラードをヒットさせる。


「グギャオッ!?」


 変な声を上げて片膝立ち状態になる魔物は、当然頭の部分の位置も低い場所に来る。

 その頭部のアゴ目がけ、レイグラードを今度は下から上に全力で振り上げるルギーレ。


「ギャン!!」


 聖剣に急所を打ち抜かれた魔物は、まるで尻尾を踏まれた犬のような声を上げて背中から水浸しの床に倒れ込む。

 それでもまだ何とか起き上がろうとしてくるので、ルギーレはレイグラードを振り被って頭部目掛けて何回も何回も振り下ろし続ける。


「この、やろ、くそ、おら、おらあっ!!」


 二度と起き上がれないようにするべく、汗をまき散らしながらそのレイグラードを魔物の頭に振り下ろし続けたルギーレの目の前で、魔物は次第に絶命して行った。


「はぁ、はぁ、はぁ……終わったか……」


 異形の魔物との死闘を自分の勝利で終わらせ、レイグラードを鞘に収めるルギーレ。

 そして、次に彼が視線を向けた先はあの扉のそばにあるレバーである。


(これ……何なんだろうな?)


 鍵がかかっている扉だが、よく考えてみればこんな遺跡のボロい扉なんか前蹴りの一つで開けられそうな気がしたルギーレは、思いっきりその扉を蹴ってみる。


「……らあっ!!」


 気合いを入れながら蹴った扉は思惑通り勢い良く開いたので、その扉があった場所に立って手を伸ばしてレバーを下ろしてみる。

 また落ちるのだけはゴメンだ……と思いながらレバーを下ろしてみるルギーレの耳に、次の瞬間ゴゴゴ……と重々しい音が聞こえてきた。

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