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436.宿屋での戦い

「おいおい、人が食ってるってのに騒がしいのはまったくどこのバカだ?」

「関わんなよあんなの」

「わかってるさ」


 無視を貫くルギーレとガルクレスだが、酒が入っていることもあってますます酔っ払い達の気が大きくなり始めてしまったようだ。

 そしてあろうことか、その酔っ払いに殴り飛ばされた別の酔っぱらいが大きくぶっ飛んで、ルギーレとガルクレスのテーブルに直撃してしまった。


「うおっ!?」

「おわっ!?」


 間一髪で立ち上がってその酔っ払いを回避したルギーレとガルクレスだったが、そのテーブルに置かれていた料理は当然テーブルごと破壊されて食べられなくなってしまった。


「あ、ああ……」


 せっかくの美味しそうな料理が目の前で一瞬にして残飯に変わってしまい、ルギーレは恨みつらみの籠った視線をその酔っ払いたちの方に向ける。

 が、その視線が自分たちを睨んでいると判断した酔っ払いたちによってルギーレの方まで騒ぎが飛び火してしまう。


「何だぁ~てめぇ、文句あるのか?」

「ああ、大有りだな。喧嘩ならせめて外でやってくれねぇか。せっかく頼んだ料理が台無しになってしまったぞ?」


 なるべく冷静にそうお願いするルギーレだが、その口元が怒りでヒクヒクと動いているだけでなく額に青筋まで立っている。


「はっ、うっせえんだよ。さっさと痛い目に遭わない内に失せやがれ!!」


 そう言いながら酔っ払いの内の一人が殴り掛かって来たが、ルギーレよりも先にガルクレスが動く。

 彼は殴りかかってくる酔っぱらいに対して足を振り上げ、正確に男の右の二の腕を蹴って拳を止める。


「うっ……?」


 一瞬怯んだ男に向かい、続けて斜め上に向かって振り上げた足で男の顎を蹴り抜いて昏倒させた。


「ぐほっ……」

「や、やろおおおおおおおお!!」


 口から出血させながら地面に大の字に倒れた男を見て、残った四人がその手に武器を握りガルクレスに襲いかかってくる。

 もうこうなったらやるしかない。

 溜め息を吐いてガルクレスとルギーレは迎撃態勢を取ると、襲いかかってくる酔っ払いたちの方へと向き直った。


 ガルクレスは向かって来る一人目のバトルアックスを持つ右手首を掴み、動きを止めて素早く足払い。手首はそのまま離さず、次に向かって来た女の酔っぱらいのナイフを、その男の酔っぱらいの身体を使って防ぐ。

 力任せに二人纏めて突き飛ばし、別方向から自分に向かって来た女の酔っぱらいのワインボトルをそばの椅子を使ってこれも防ぎつつ、

 逆に椅子の背もたれで女の腹を突いて怯ませてから前蹴りで床に蹴り転がす。


(俺もやるだけやるしかねえよな)


 最後の四人目はロングソードを抜いてルギーレに向かってきたので、ルギーレは素早く近くの丸い木製のテーブルの上を身軽に転がって回避。

 そのテーブルを両手を使って持ち上げ、ロングソードを突き刺してもらう形で防御する。

 武器を封じられる形になった四人目の男の酔っぱらいがアタフタしている隙を逃さず、テーブルごと彼を壁に押し付けて制圧した。

 こうして酔っ払いたちを全て制圧したルギーレとガルクレスだったが、その時酒場の外から叫び声と複数人の足音が聞こえてきた。


「おい、こっちだ!!」

「お前ら全員動くな!!」


 ガチャガチャと重苦しい鎧の音を響かせてやってきたのは、このアーエリヴァ全土の治安を守る騎士団員たちであり、ルギーレにとっての追っ手たちともいえる存在である。酒場で騒ぎが起こっていると誰かが通報したのだろう。

 しかし、それを見たガルクレスはルギーレの手を引っ張る。


「まずい、騎士団だ!!」

「くそ……!!」


 押し付けていたテーブルから力を緩め、宿屋の二階へと走って逃げるルギーレとガルクレス。

 それを見たギルドの追っ手たちも、酔っ払い達を荒縄で拘束しにかかる者とルギーレとガルクレスを追いかける者にわかれて行動し始める。

 こんな状況で部屋に泊まっている暇は……それが実はあったのだ。

 ルギーレは部屋に飛び込んでベッドの下に素早く潜り込み、後はガルクレスに任せる。そしてその数秒後、部屋に慌ただしく飛び込んできた追っ手たちが部屋に一人取り残されている(ように見える)ガルクレスに荒っぽい口調で尋ねる。


「おいっ、あの男はどこに行った!?」

「こ、ここから下に飛び下りて走って行っちまったぜ!」

「そうか、だったら君も参考人として俺たちと一緒に来てくれ。あの男を追うぞ!!」


 追っ手の一人が他の追っ手に指示を出し、バタバタと部屋の外へと再び駆け出して行く一団と一緒にガルクレスも連れていかれてしまった。


(ふぅ……ガルクレスには悪いが、何とかこれで助かったかな……)


 いずれはまたガルクレスと合流しなければならないだろう。

 しかしここで自分が追っ手たちに捕まってしまえば、あのカインとかいうわけのわからないギルドの男の耳にも入って、ますますまずい状況に追い込まれることは目に見えている。

 それだけは何としても避けたかったルギーレは心の中でガルクレスに詫び、まずはつかの間の休息をとることにした。

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