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432.別行動

「じゃ、これがあんたの分の分け前だ」

「ああ、どうも」


 ガルクレスから分け前をもらい、そこでギルドのグループとは別れた。

 ……はずだったのだが、そのリーダーであったはずのガルクレスがなぜかルギーレが帝都メルディアスに行くまでついてきてくれるらしいのだ。


「俺もちょうどメルディアスまで行く用事があったから、ついでに一緒に行こうぜ」

「お、それは心強いな。それじゃよろしく頼むわ」


 こうしてルギーレはガルクレスと旅をすることになったのだが、この先の旅路で問題が発生するのを既にガルクレスは予測しているらしい。


「さってと、これから帝都のメルディアスに向かう訳だけど……あんたと俺は別のルートから帝都に入ることになるなあ」

「別のルート?」


 まだ鉱山の町を出発したばかりなのに、今の段階で既にそんな決定事項みたいに言われても……と困惑するルギーレだが、ここは黙って彼の話に耳を傾ける。


「そうだよ。ちょっとリスクが高いけど、確実に帝都に入るならこうするしかないんじゃねえかな」

「それは?」


 方法によってはかなりのリスクがあるようなので、真剣な表情でその内容を聞くことにするルギーレ。

 一方のガルクレスは鉱山の町で借りた馬をカポカポと進ませながら、遥か遠くの方を指差して続ける。


「あっちの方向に進めば帝都のメルディアスがあるんだけど、俺は陸からこのまま馬で普通に入る。一方のあんたは川から入ってもらうぜ」

「か、川?」

「そう。メルディアスの中に続く細い地下の運河があるんだけど、そこは一種の抜け道なんだよ。……最初に会った時から気になってたんだが、あんたからはすげえ量の魔力を感じるからな。だから帝都に入る前の検問で止められてしまう可能性がほぼ100パーセント。そうなれば場合によっては騎士団に取り押さえられて、そのまま連行されちまうのが目に見えるんだよな」

「……確かに」


 そうなればあの決死の大ジャンプを成功させた苦労が全て水の泡になってしまう。

 それ以外にも自分にとって不利な条件が少しでもあるのなら、例えそれが回り道になったり少しリスクを負う形になったりしても、最終的に結果が良ければそれで良いだろうとルギーレは考える。


「……分かった。それはそれで良いとして、地下の運河に入るのであれば何処かから地上に出て合流しなければならないな」

「そうだな。一旦帝都の街中に入り込んでしまえば人が多いから魔力云々ってのも気にしなくて良いんだけど……あんた、舟には乗れるか? 手漕ぎの木の舟だぜ」

「まぁ、漕げば良いだけだからな」


 即答するルギーレに頷くガルクレスだが、実は問題はそれだけではないらしい。


「ならそれはそれで良いか。でも、まだ問題があるんだよな」

「え?」

「その川の渡しには質の悪い奴がいるって噂を聞いたことがあってさ。強盗みたいな奴で、舟を利用しようとする人にいちゃもんをつけて金品を強奪するんだってさ。リスクが高いっていうのはその侵入経路だけじゃなくて、そうした邪魔者もいるってこと」


 事実、バーレンなどでは川下りを利用する観光客に対して勝手に言いがかりをつけて代金を請求した挙句、それを払うまで逃がさないという悪質な輩の話を知り合いから聞いたことがあるルギーレだが、それと似たようなものなのかなと考える。


「わかった、それなら気を付けよう。それからその悪質な奴以外にも何か注意するべきことはあるか?」

「そうだな……夜になると運河の見張りが緩くなるから、入り込むなら夜の方が良いんじゃねえかな」


 コソコソするのは何だか泥棒みたいで気分が余り良くないが、状況が状況だけに仕方ないだろうと強引に自分を納得させて、ガルクレスが一緒に借りてくれた馬に乗り続けるルギーレ。


(まったく……いろいろとこれから先に必要な情報を集めるだけでも一苦労だし、さっきの町でも結局マルニスやセルフォンに関する情報なんて何一つ得られなかったし……帝都に行けば何か分かるかもな)


 むしろ得られるようになってくれないと自分が困るので、その帝都の広さや情報網の多さがなるべく大きなスケールであるのを期待するしかなかった。

 帝都に辿り着くまでにはあの鉱山の町からまだ二日ほどかかるというので、ガルクレスと一緒にそのまま進むしかないこの状況。

 一緒に行ってくれるのは心強いし、彼も戦える人間だというのはわかるが、それであっても彼をまだ余り信頼出来ないのは少なからずギルドと繋がりがあるからだろう。


(この男は自分が冒険者だと言っているけど、それはつまりギルドと繋がりがある人間でもあるってことなんだ。もしかしたらあのカインとやらの存在だけじゃなく、もっと深い所まで……それこそ何かの裏事情まで知っている可能性もあるな)


 動物的な勘でそう考えてしまうだけあって、警戒心は常に持っていなければならない。

 それを常に念頭に置きつつも、でもこの世界で自分が頼ることが出来るのは今のところでは彼一人しかいないというのが心のチグハグさとなってストレスに変化するルギーレ。

 とにかくまずは帝都メルディアスに向かい、そこで何かしらの情報を集めるのが今の目的なのだが、それをやるためにはまず彼の前に立ちはだかる「タチの悪い奴」をどうにかしなければいけないらしかった。

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