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42.戦いの終わりとこれからのこと

 だが戦いはまだ終わってはいない。

 上からはバサバサと音を立てて迫ってくるワイバーンと、その乗り手である死神が降りてきているのだ。


「よくもヴァレルを……貴様!!」

「よぉ、また会ったな? だけど今の俺は以前の俺とは違うぜ!」


 相棒を屋上から突き落とされて怒りに震えるトークスに、余裕たっぷりといった表情でその相手を見据えるルギーレ。

 そんな彼に対し、トークスが持ち前の冷静さを少し取り戻してこう言い放った。


「ふん……その剣がなければ貴様はDランクの下級傭兵にしか過ぎない男だろうが」

「なっ!?」

「図星か。だったらそれをこちらによこして、負け犬は負け犬らしく地べたを這いつくばっていればいいんだ」


 そう言いつつワイバーンをコントロールし、改めてレイグラードを奪い取ろうとするトークスだったが、ここで思わぬ邪魔が入ってしまった。

 先ほどルギーレに自分が矢を放った時の再現のように、彼のワイバーンに一本の矢が突き刺さったのだ。


『ギャアアアアアアアッ!!』

「ルギーレ、無事か!?」

「はあっ!!」


 出入り口のほうから聞き覚えのある声が聞こえてきたと同時に、気合いの入った掛け声が響く。

 直後、特大のファイヤーボールがトークスとワイバーンめがけて飛んで行った。


「くっ! 仕方ない……この勝負預けよう」

 ギリギリでワイバーンをひるがえしてそのファイヤーボールを避けたトークスは、器用に降下してヴァレルの身柄を回収して空へと飛び去って行ってしまった。


「……終わったみたいね」

「助かったぜ副団長、それからルディアも」

「俺と別れた後、二人に何があったんだ? 詳しく聞かせてくれないか」

「ああ、わかったよ」


 そう言い終えたルギーレはレイグラードを天に向かって高く掲げて、一言だけつぶやいた。


「これは返してもらうぜ」



 ◇



「ふうむ、つまりその炎の悪魔もその黒ずくめの男たちとつながりがあったということか」

「はい。炎の悪魔のヴァレルとトークスがワイバーンに乗って逃げていったので、間違いありません」


 リーレディナ城まで戻ってきたルギーレたちは、一緒に戻ってきたディレーディとザドールに報告をしていた。

 炎に包まれたディレーディの執務室は現在修復活動中なので、会議室を一つ借りての報告だった。

 しかし、ルディアには別に気になっていることがあった


「あの、陛下……私から一つお聞きしてもよろしいですか?」

「何だ?」

「私と一緒に戦っていた、シュヴィスさんとブラヴァールさんはご無事ですか?」


 隠し通路を通って逃げた後、あの炎の悪魔と戦ってくれていたその二人の騎士団員の安否が気になっていたルディアだったが、それは心配ないらしい。


「ああ、その二人だったらもうすでに魔術で治療を受けて復興作業に従事している。ウェザートとロラバートが懸命に治療してくれたおかげだ」

「そうですか……よかったです」

「だったら俺たちも、できる限り復興作業を手伝いますよ」

「それは助かる。それじゃ後はヴァンイストから話を聞いてくれ」


 騎士団員たちの無事も確認でき、数日間は自分たちのできるだけの手伝いをすることに決まったルギーレとルディア。

 だが、その中でルギーレは考えることがあった。


(あの剣がなかったら、俺は下級傭兵……)


 屋上でトークスに言われたあの言葉が、何度も脳裏を駆け巡る。


(あの剣に頼りっぱなしの負け犬……)


 研究所でヴァレルから言われたことも、頻繫にフラッシュバックする。


(つまり俺は、あの剣に頼ってないとまともに戦えないってことか……)


 今までの自分は勇者パーティーに所属していただけであり、戦うことに関しては確かにマリユスたちがやっていた。

 追放された後は、あのレイグラードがない状態で驚異的な力を発揮することができていたものの、もしある日突然その効果がなくなってしまったら?

 今までいろいろと楽観的に考えてきた自分だったが、他人に言われて初めて危機感を覚えるようになった。


(あのレイグラードがここにある限り、きっとまたあいつらはあれを狙いに来るだろうしな……)


 そうなると同じことの繰り返しだろうし、敵の全貌がまだわからない以上また同じことがあればどれだけの被害が出るのかわからない。

 事実、今回はあの炎の悪魔に城と魔術研究所を燃やされてしまっているのだから。

 それに、まだレイグラードの柄の部分についている二つの妙なくぼみの謎も解けていない。

 復興作業をしながらも、ルギーレの頭の中は自分の強さのことと、レイグラードのことでいっぱいになってしまっている状態だった。


(……こうなりゃ、ダメもとで陛下に直談判してみるしかなさそうだな)


 一つうなずいてある決意を固めたルギーレは、その日の復興作業が終わった後に一人でディレーディのもとへ向かった。


「ディレーディ陛下、いらっしゃいますか? ルギーレですけど」


 コンコン、とディレーディの部屋のドアをノックして返事を待つ。

 だが、部屋の中から現れたのはディレーディではなかった。


「どうしたんですか、こんな時間に……」

「あれっ、ヴァンイスト様!?」

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