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427.追いかけっこ

 まずはどこに逃げるかが問題であるが、その前に別の問題が浮上する。

 それは今こうして追いかけられ始めたことによって、予定していたマルニスやセルフォンとの合流ができそうにないことだった。

 いくら今の追っ手が少ないとはいえども、こっちの人数は見ての通り自分一人しかいない。

 気がつけば、ルギーレは追っ手を撒きやすそうな民家の密集している方向に向かって逃げていた。


(くそっ、何でこうもまた追いかけ回されなきゃならないんだ!?)


 心の中でそう毒づきながらも止まる訳にはいかないルギーレは、家と家の間をうまく使いながら全力疾走する。

 時々村人にぶつかったり、何かにつまづいて転びそうになりながらも、捕まってしまえばそれで終わりなので、レイグラードの加護による身軽な動きで走り抜けていくルギーレ。


(別の出入り口はどっちだ!?)


 謎の追っ手たちによって包囲網が敷かれる前に、さっさとまずは逃げ切って村の外へと脱出したい。

 ルギーレはそう考えているものの、このまま追っ手を撒いてスムーズに脱出するのは厳しそうである。


(しゃーねえ、こーなりゃ……)


 チラチラと後ろを振り返ってみれば、空中から浮遊魔術を使って自分を追いかけてきている人間たちの姿が見える。

 あれも数の利を活かした向こうの作戦なのだろうが、ルギーレには得体の知れない恐怖の対象でしかない。


(とにかくあの連中を何とかしないと、俺はいつまでたっても逃げ切れない!!)


 何人追いかけてきているのかは分からないが、空中から追いかけ回されているとなれば地上でいくら頑張ったところでほとんど無意味だ。

 翼を持たない人間が、大空を飛ぶことの出来る鳥の機動力に勝てるわけがない。


(止まったら終わりだ!!)


 追っ手の人数としては、あの最初の山道の時に遭遇した魔物たちと同じぐらいかもしれないのだが、ここは自分が知らない村であるためルギーレにとっては完璧なアウェイ状態だ。

 そのアウェイ状態でも諦めずにとにかく逃げる。

 追いすがってくる敵たちを、近づいてきたところでレイグラードの衝撃波で吹っ飛ばしたり、蹴りを入れて怯ませたりしている甲斐もあって一人、また一人と追っ手は確実に減ってきている。

 そのままさっさと逃げ切りたいルギーレだが、それでも敵たちもなかなかしぶとい。


(お、俺って何か悪いことしたっけ?)


 理不尽にこうして追いかけ回されるような事態になったのを、今までの出来事の中で何か思い当たる節がないかどうか考え直してみても、やっぱり思いつかない。

 そうすると、ギルドと関係のあるあのカインとかいう青髪の男に直談判しに行ってもいいかもしれないと思いながら走るルギーレの目の前に、村を囲っている木の柵が見えてくる。


(くそ……っ!!)


 このままここで追い込まれてしまえばまずいのだが、その先に見える村の外の様子を見てルギーレは飛び越えることに決めた。


(高さはそんなにねえみてえだな。だったら今の俺はレイグラードの加護もあるし、魔力だってとっくに戻ってきてんだから、一気に飛び越えて脱出しちまえばいいんだよな!!)


 だったらもう迷う必要はない。

 今までの冒険の中で培ってきた経験とテクニックを活かし、ルギーレは迷うことなくその木でできている自分の背丈ほどの簡素な柵を一気に飛び越える。

 それだけであればなんてことはない動作だが、もちろんこれだけで終わりではない。

 飛び越えてそこからすぐに後ろを振り向きつつ、レイグラードに自分の魔力を込めて思いっきり横なぎに振り抜けば、それだけで今までの追っ手たちに向かって飛ばしてきたものよりも大きな衝撃波が生まれる。


「うわあああっ!?」

「きゃあああっ!!」


 ルギーレを追いかけていた男女のギルド傭兵は、突然自分たちの身に襲いかかってきた重たい衝撃波の前になすすべなく、そのまま後ろへとバタバタなぎ倒されていくしかできなかった。

 武装している分、生身で吹っ飛ばされるよりも距離は短くて済むのだが、その反面自分たちの重さが増えてしまっていることもあってダメージは大きかった。

 先頭のシャムシールの男が後ろの男をなぎ倒し、連鎖反応でそのまま全員が倒れたことにより、起き上がるのにも時間がかかる。

 その時間を利用して、踵を返したルギーレは振り返ることもせずに村の裏手側にある別の街道へ続く道へと走り出していった。

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