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422.森の守護者たち

 ルギーレはとにかく森を抜けるべく歩き出したのだが、あいにく方角もわからないまま適当に感じた方向に歩いていただけだった。

 だが、それがたまたま森の出入り口方面へと続く道だったらしく、運良く森を抜けることができた彼は早速町か村を探すべく街道に出ようとしたのだが……。


「……なっ!?」


 森の出入り口を守る存在がいた。

 そもそもこの森を歩き回っていたのに、考えてみれば本来こんな夜の魔物たちが活動を活発化させる時間帯で、今まで魔物たちに「一匹も」出会っていなかったのが不思議なほどだった。

 どうやらレイグラードの強大な魔力を恐れて魔物たちが逃げ出していたのではなく、全員でかかれば倒せるぞと意気込んだ集団心理からルギーレをこの出入り口で待ち伏せしていたらしい。

 そして今、ルギーレは自分の持ち物を確認して愕然としていた。


(レイグラード以外何もねえ!!)


 財布も、傷薬などが入っている小袋もない。

 あるのは苦楽を共にしてきたレイグラードだけである。どうやらあの吹っ飛ばされた時に荷物を全て落としてしまったようだ。

 しかし、そんなことは魔物たちにとっては全く関係のないことであり、この森を荒らす人間を見逃す理由にはならないのが無情な現実だった。


(魔物の数は全部で大体三十匹ほど……ボスはあの二つの首を持っているピンク色のでっけー蛇……ダブルヘッダーって奴だな!!)


 ダブルヘッダーをリーダーとする魔物集団は、普通であればルギーレ一人では到底歯が立たない数の多さである。

 しかし、こちらには不幸中の幸いでレイグラードが残っている。

 その上、今のルギーレはあの高さから落ちてこうして無傷でいられる状況なので、コンディションは抜群に調子が良い状態だった。


「はっはー、ならば死にてえ奴からかかってこいよな!! 命の保証はしねえけどよ!?」


 チャキッと音をさせてレイグラードを構えるルギーレだが、だからといってせっかく立ち塞がったのに引き下がる魔物たちではない。

 大小様々な魔物たちを目の前にしても一歩も退く気がないルギーレに対し、痺れを切らした魔物の内の一匹が睨み合いを終わらせて飛びかかっていく。

 それをルギーレは、やけにクリアになっている頭から繰り出される判断力でスッと回避しつつ、左足を軸にする右回りの回転斬りでズバッとレイグラードを一閃させ、魔物を一刀両断した。

 それを見た魔物たちは若干腰が引けつつあったものの、多数で一気に飛び掛かれば勝機はあるはずだとルギーレに向かっていく。

 しかし、今のルギーレにとっては何匹が一気にかかってこようが烏合の衆に変わりはない集団だったのだ。

 なるべく囲まれない位置取りを意識しつつ、レイグラードそのもののパワーと恐ろしく飛んでいく強力な衝撃波を発する斬撃で対抗し、次々に魔物たちを物言わぬ肉片たちに変えていってしまう。

 それは最後に残ったダブルヘッダーに対しても同じことがいえる。


「さーて、残るはお前だけか……」

『シュウウウウウッ!!』


 赤黒い舌をチロチロと口から出しつつ、自分の仲間たちの仇をとるべくルギーレに二つの首が襲いかかっていく。

 しかし、首は確かに二つでもその首たちを支えているのは一つの胴体だけだった。

 ピンク色の胴体をしているだけあって、この薄暗い森の中でもキチンと自分がどこにいるのか教えてくれるダブルヘッダーを相手にした今のルギーレにとって、何も怖いものなどなかった。


「ふ……ふははははははっ!! あめーしおせーんだよ!!」

『シュ!?』


 ルギーレが残像を残しながら自分の側面に回り込んできたと知った時は、すでにダブルヘッダーがシングルヘッドになっていた。

 つまり二つあるはずのうちの首の一つが、すっぱりと根本から切断されてしまっていたのだ。


『シュ……シュウウウウウッ!?』

「はっはっは、これでオメーもただのでっけえ蛇ってわけだぜ。大人しく地面をニョロニョロ這ってりゃいいんだよ!!」

『シャー……ッ!?』


 もはや人格まで変わってしまっているような気がしないでもないルギーレの手によって、本来はBランクというなかなかの高いランクに位置しているはずのダブルヘッダーは、なすすべなくもう一つの首を斬り落とされて地面に倒れ伏した。

 ズゥゥン……というやや軽めの地響きを感じて、戦いが終わったことを実感するルギーレはようやく危機も去ったということで、魔物たちがまたやってこないうちにさっさと森を出て町か村を探そうと決意する。

 しかし……。


「……!?」


 ザシ、ザシ、ザシ、と規則的な音が森の奥から聞こえてくる。

 これはどうやら人間の足音だ。

 まさかマルニスか、人間の姿になったセルフォンが自分を見つけて近づいてきているのかと期待するルギーレだったが、暗闇から現れたその人影は全く予想だにしない人物だった。

 そしてその人物の登場によって、ルギーレはまだこの森での危機が去っていないことを痛感することになるのであった。

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