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418.山の上の城

 翌日。

 選抜されたルギーレ、マルニス、そしてセルフォンの三名はアーエリヴァへと入っていた。

 もちろんあの薬を使ってである。


「さて……入ったにはいいけど、ここは短期決着だよなあ」

『ああ。だが某たちはもう薬が使えないので、城にどこから入るかってことになるのだが?』


 レイグラードの力で魔術防壁を強引に破ることはできるのかもしれないが、何しろやったことがないので何とも言えない。

 それよりも城に乗り込むのであれば、山の上にあるという城の立地条件をこちらの作戦に活かして超高度の飛行で一気に接近し、そのまま降下作戦をした方がいいだろうとの結論に達した。


『あいにく某はアーエリヴァのことについては、グラルバルトほど知っているわけではないからそなたに頼むぞ、マルニス!!』

「任せてください!」


 マルニスは騎士団長ゆえ、城に関することも知り尽くしている。

 だからこその選抜メンバーの一人であるのだが、今回は彼と同じく城のことをよく知っている騎士団が……彼の部下たちが敵として回っている以上、例え城に乗り込んだとしてもこちらが絶対に有利になるとは限らない。


「むしろその時点で不利になるよな」

「ええ、そうですねえ。向こうは圧倒的な戦力差がある。果たして陛下が今の僕たちの話を聞いてくれるかどうかもわかりませんが、とにかく陛下にお会いしなければどうにもなりませんよ」


 自分たちの身の潔白を証明しない限り、アーエリヴァに再び入ることはもうこの先できなくなってしまう。そんな未来を避けるべく、ルギーレたちがこうして乗り込んでいるのはまだ夜も明けきらない早朝の時間帯なのだ。

 事前に魔力を失くす薬を飲んでいるため、ルギーレたちが魔力を使った攻撃は一切できなくなっている。

 しかし、そのリスクを冒してでもこのセルフォンの大きな身体を帝都メルディアスに乗り込ませるにはこれしかないので、早朝の風を切って飛んでいるのはベターな考えだった。


「……見えた、あれが帝都です!!」

『やっぱりこっち側から飛んでくるとなかなか早く着くものだな』


 アーエリヴァの帝都メルディアスは、国内の地図で見るとかなり北東側に存在している。

 西の方に砂漠が広がっている国土を考えると、この東方面は緑が豊かで平原や森などがそこかしこに存在しているので、まさに東西で違った気候や自然環境を持っている国土の広い国ならではといえる。

 そしてその自然環境を利用し、他国軍が歩兵で容易に攻め込むことができない高い山の上に建設されているのが、アーエリヴァ帝国皇帝シークエルが住んでいるグリストリッヒ城であった。


『徒歩でも来られないことはないが、山の上に造られているだけあってかなりキツそうだな』

「はい。それがグリストリッヒ城の強みなんです。空中から襲ってくる敵もわかりやすいですし、歩兵はたどり着くまで時間がかかる。馬も通りにくい登山道を造っているので、攻め込まれる心配は少ないんです」


 しかし、そのマルニスの説明に対してセルフォンはドラゴンならではの視点から見た分析をしてみる。


『確かにそれはそうだな。山の上の要塞みたいな城というだけあってなかなか攻め込みにくいだろうが、反面攻め込まれたら意外と脆い気がするな』

「えっ、どういうこった?」

『戦える場所が限られているからだ。山の上に建造されているというだけでも、例えば平原や砂漠などで戦うよりも挟み撃ちの迎撃がしにくい。更にいえば援軍を山の下から呼ぼうにも、この立地条件は敵も味方も関係なくスムーズに動けんだろうしな』


 しかし、マルニスはそこも考えた上でこの山の上の広大な敷地にキチンと考えを巡らせているのだとも説明する。


「そうですね。しかし僕たちはその弱点をカバーするべく、ワイバーンを使った部隊を組織しています」


 もちろんマルニスやヘルツやカリスドもワイバーンの騎乗訓練は受けているし、もっといえばヴィーンラディから提供してもらった戦闘機というものも配備されており、ワイバーン部隊では対応しきれない強大な敵を相手にする場合に出動させるのだという。

 そう……それこそ強大な灰色のドラゴンが空中から接近している今のように……。


『……ん?』

「どうしました?」

『いや……今何だかとてつもない悪寒がしたんだが』


 グリストリッヒ城に近づくにつれて、得体の知れない悪寒がするのだと言い出したセルフォン。

 魔術が使えない状態で一気に接近して城の中に乗り込む予定なのだが、それを邪魔する何かが近くから感じられるのである。

 とりあえずルギーレとマルニスがセルフォンの背中でキョロキョロと周囲を見渡してみるが、特に変わった様子は見られない。


「気のせいじゃないのか?」

『そう……か。それだったぐほえっ!?』


 突如、何の前触れもなくセルフォンは横っ腹に強大な衝撃を受けた。

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