417.アーエリヴァ奪還に向けて
「そうか……あいつらは今度はアーエリヴァで何かやってんのか……」
意識も徐々にクリアになって、うーんうーんとうなされていた状態のルギーレ。
そして意識がない状態から回復し、自分の国で起こっている何かしらの問題のことを話してもらったアーエリヴァ騎士団員の一人であるヘルツ。
この二人がこうしてアーエリヴァの外にいるというだけでも、今回の事件がなかなか厄介なものであるということを物語っている。
「どうしてアーエリヴァがそんなことになっているのかといえば、それはやはり勇者たちのせいですよね……」
『そうだな。私たちもいろいろと話し合ったんだが、まずはアーエリヴァ側の誤解を解かない限りこの三人が戻れるわけがないだろうな』
グラルバルトのいう「この三人」というのはもちろんマルニス、カリスド、そしてヘルツのアーエリヴァ騎士団員の三人である。
この三人も現在は国家に反乱を起こしたメンバーたちとして追われる身になってしまった以上、アーエリヴァを奪還するためにはそれこそ騎士団員トリオがカギになるかもしれないといっても過言ではないのだろう。
だが、だからといってそれではどうすればいいのか?
う~んと頭を悩ませて、どうやってアーエリヴァの中に入ればいいのかを考える一行。
「ねえ……セバクターの薬の予備は後どれぐらい残っているんだい?」
「今は残り四つだ」
「なるほど。それだったら誰かがアーエリヴァの中に入っていくしかないね」
マルニスが切り出したその作戦が一番ベターかもしれないと結論が出たのだが、問題は誰が再度アーエリヴァの中に入るべきなのか?
それを色々と考えた時、戦力としてのバランスなどで選ばれたのはまずこの二人だった。
「道案内とかを考えたらやっぱりマルニスさんは外せないと思います。騎士団長ですから」
「そうですね。それから魔術が使えるということで僕はセルフォンさんに来ていただきたいんですよ」
『……某がか?』
そこはアーエリヴァを看視対象にしているグラルバルトが行くべきではないのかとマルニスに聞き返すセルフォンだが、マルニスは地理的なものを考えての話だった。
「グラルバルトさんは黄色いドラゴンということで既に存在がバレてしまっています。僕も存在がバレていますがもともと騎士団長なので問題はありません。ですからここは存在がバレていない人たちを中心に計画を進めようかと」
『ふむ。それはわかったが……それだったらアサドールでもいいんじゃないのか?』
何で某を選ぶんだ? とさらに突っ込んだ質問をするセルフォンに対し、マルニスは魔術の観点からこう答えた。
「セルフォンさんは風属性の魔術を使いますよね」
『ああ、そうだが』
「アーエリヴァは土属性の魔物がかなり多いんですよ。ですから土属性に強い風属性の魔術を使えるセルフォンさんの方が、戦いを有利に進められると思いまして」
それに最終的に帝都に乗り込むのであれば、自然が多いアーエリヴァだからこその山の上に建てられているその城に乗り込むことも考えておかなければならない。
とするとドラゴンの空中移動ではなく、風属性の空中移動も使えた方がいいだろう。
『ははあ、それなら某が行った方がいいな。それにドラゴンの姿だと狙われやすくなってしまうし、向こうはその……セバクターが持っている魔力を一時的に消す薬を持っているはずだろうから、現地調達できる可能性もあるな』
「そうです。ですから僕たちでアーエリヴァに乗り込みましょう」
もっとよく考えるのであれば、それこそ学者のアサドールや魔術に強いこの国の人間たちに頼んで魔力を一時的に消す薬を量産してもらいたいところである。
しかし、こんな薬は見たことがないとアサドールもこの国の人間たちも首を捻るばかりだったので、研究から生み出せるとしても相当に時間がかかるだろう。
その間にアーエリヴァでまたこちらに不利な状況に事態が進展してしまうことは、容易に想像できることでもあった。
『それでは私たちは、引き続きこちらで待機をしているとしよう』
「ああ、それがいいだろうな。俺たちもヘルツにはまだまだ聞かなければならないこともあるし」
「頼むよ。それじゃあ僕たち三人で乗り込むとしようか」
しかし、最後に発言をしたマルニスに違和感を覚えたのがルディアだった。
「……あれ、ちょっと待って。セルフォンさんとマルニスさんだけですか?」
「え?」
「え? いやだってほら今……三人って言いましたよね? でも二人しかいないじゃないですか」
その確認に対し、マルニスは頭をバリバリとかいて気まずそうな顔をした。
「あ……ごめん、忘れていました。最後の一人はルギーレさんにお願いしようかと」
「え……俺?」
「はいそうです。向こうには同じく伝説の武器使いである勇者がいる。となればルギーレさんのレイグラードは外せない存在となると思いますから」
病み上がりなのだが、それはどうやら関係ない。
人遣いが荒いなあと考えつつも、ルギーレもこの作戦に参加してアーエリヴァへと入ることになるのだった。




