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414.敵の狙い

「これはニルスという男から貰ったんだ。この世界で勇者って呼ばれているマリユスやベティーナと一緒に行動をしている、俺の雇い主だった男だ」

「その男か……」


 あの地下施設でマルニスとセバクターと対峙したことや、その他いろいろなことが重なった結果、セバクターも一時期はニルスたちと組んでいたことがここヴィーンラディの取調室でわかった。

 だが、自分の年齢については二十六歳だと話してくれたものの生い立ちや出身地などについては何だかうまく濁しているように思えるマルニスと、ヴィーンラディの騎士団長であるジェラード。

 その辺りは無理に聞き出すまでもないことなのだが、ドラゴンたちやルディアなどがこの男に覚えた違和感からどうしてもそこをスルーして進むわけにはいかないように思えて仕方がないのである。

 その一方で、セバクターにとっても例の倒れてしまった二人については気になるらしい。


「そういえばあのヘルツと、それからここで寝込んでいるという話だったルギーレというのはどうなった?」

「ああ、ヘルツの方はやっと意識が戻ったそうだ。ルディアがアーエリヴァから回復魔術をかけ続けてくれたおかげだ。だが……」


 ルギーレの方はまだ満足に動ける状態ではないらしく、レイグラードの大きな秘密がわかった今となっても、動けるようになるにはどうすればいいのか皆目見当もつかないらしいのである。


「僕たちもこのままではアーエリヴァに戻れそうにない。かといって戻らなければどうしようもないから、こうなったら君と一緒にレイグラードの更なる秘密を探りつつ、アーエリヴァで起こっている問題を解決しに向かわないとね」

「そうだな。こんなことは余り言いたくないが、アーエリヴァがヴィーンラディにも変な言いがかりをつけてきているみたいだしな……」

「えっ!?」


 一緒にセバクターの取り調べをしていたマルニスが、アーエリヴァ代表の一人として非常に驚きの声をあげるのも無理はなかった。

 どうしてそんなことになっているのか、今ここでこうしてジェラードから聞かされるまで知らなかったマルニスは、自分と隣り合わせで座っている中年の騎士団長に話を聞いてみる。

 すると、それにはルギーレが絡んでいるのだという話だった。


「アーエリヴァ側から話があってね。どうやら帝都のメルディアスにあるグリストリッヒ城にやってきた青髪の勇者から、ヴィーンラディが犯罪者を匿っているとの通達があったんだ」

「そ、それって国際問題に発展するじゃないですか!?」

「恐らくそれがあいつの狙いなんだろう」


 二人の会話にボソッとした呟きで割り込んできたセバクターが、一体その勇者がどういう意図があってそんな変な話を流しているのかを推測する。


「恐らくマリユスは、ルギーレが満足に動けずレイグラードを使えないこの機会を利用して、アーエリヴァとヴィーンラディをぶつけようとしているのかもしれない」

「それはわかるけど……でも何のために?」

「考えられるのはお互いの潰し合いだろう。アーエリヴァもヴィーンラディもそれぞれが軍隊を持って行動している上に、それぞれにメリットがある」


 アーエリヴァは世界で最も広い国土を持っている国であり、ヴィーンラディは世界で一、二を争うほどの魔術大国なのだ。

 だからこそ領土の拡大を狙う理由がヴィーンラディにあるしアーエリヴァにだって魔術に関しての知識や技術を簡単に手に入れられればこれ以上おいしい話はない。


「だからこそ、ルギーレが倒れた原因を探りにきたのをチャンスと見て民間人の失踪事件をルギーレとその仲間たちのせいにした上に、そのルギーレを匿っていると難癖をつけてヴィーンラディに攻め込む口実を上手く与えることだってできるだろうからな」

「確かに。でも、仮に僕たちアーエリヴァとヴィーンラディをぶつけてどっちかが勝ったとしたら、勝った方にその勇者はつくのかな?」


 マルニスの質問に答えたのはセバクターではなくジェラードだった。


「それもあるかもしれないが……それよりも勇者たちの利点になることはあるだろう。どっちかが勝っても戦争というものは非常に金も人員も兵器も動員しなければならないものだから、勝った方も負けた方も疲弊する」


 程度の差はあれど疲弊したところに、勇者たちが第三の勢力を伴って勝った方に攻め込んでくるようなことが考えられるかもしれない。

 その場合は勝った方が勇者たちの攻撃に耐えられるかどうかが問題なのだが、疲弊具合によっては一気に潰されてしまうのがオチとなる可能性もある。

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