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409.最厳重包囲網

 なぜそれがわかるのかといえば、その西へ向かうドラゴンたちの進行方向に多数の騎士団の部隊が展開していたからだった。


「おいおい、あそこに何かがスッゲー見えっぞ!?」

「……んん……あれは僕たちの仲間たちじゃないか!?」


 懐から取り出した望遠鏡を使って、カリスドの見つけた横に長いその「何か」の正体を確かめたマルニスが、サーッと顔を青ざめさせるのがわかった。

 アーエリヴァ騎士団の黄色をトレードカラーとした旗を多数掲げている、それこそマルニスやカリスドたちと同じ黄色い制服を着込んでいる、騎士団の対空部隊だったのだ。

 そのアーエリヴァ騎士団の団員たちは、明らかに巨大な砲台を設置してこちらに砲口を向けて魔力エネルギーを充填していた。


『まずいおっさん、あいつら本気で撃ってくるぞ!!』

『くっ……避けろ!!』

「きゃあああっ!!」


 グワッと空中で旋回するドラゴンたちが、今の今まで飛んでいたその位置に無数のエネルギー砲が一本の線となって突き抜けていく。

 一発ぐらいならまだ魔術防壁で何とか防げたとしても、二発三発と連続で撃ち込まれたらさすがのドラゴンたちもたまったものではなくなってしまう。

 だが、どうやらマルニスが望遠鏡で戦力を把握する限りではそんな厄介なエネルギー砲台が至る所にあるらしく、このまま下に陣を敷いている軍勢を突っ切るのは無理だろうとの結論が出た。


『くっ、こうなったら迂回するしかないな!!』

『あーめんどくせー!! 何で俺様たちがこんな目に遭わなきゃなんねえんだちくしょー!!』


 悔しさを叫んでも状況が変わるわけではない。

 とにかく今は迂回して軍勢を避けなければならないのだが、敵となってしまった騎士団はどうしても一行をこの国から出さないための策を用意しているようだ。

 それに最初に気が付いたのはルディアである。


「……あの、ちょっといいですか?」

『どうした?』

「エスヴェテレス方面から、かなり広範囲に魔力が張っているのが感じられるんですよ。それこそ地平線の遥か彼方まで続くぐらいに……」


 そのルディアの解析をグラルバルトの背中で聞いたマルニスは、えっ……と同乗している彼女に向かって自分が知っていることを話し始める。


「それ……シークエル様からの命が下った時にのみ発動される、僕の騎士団で最も厳重な包囲網です!」

「包囲網?」

「ええ。国外に出したくない標的がいる場合には、普通は各地の検問所を始めとした警備を強化したりして対策を練ったりするのですが、この魔力の張り方は間違いありません……最厳重包囲網。国境をなぞるように、そして雲まで届くほどの高い魔術防壁を張って何としてでも標的をこの国から出さないようにするための包囲網ですよ!」


 つまり、魔術防壁を国境に沿って張り巡らせることによって標的をこの国の中に閉じ込めてしまえば、どこにも逃げられなくなってしまうという究極の包囲網がそれである。

 だが、手間もかかるし魔力の消費量も尋常ではないので今回のように皇帝のシークエルが直接その命令を下さない限りは、この最厳重包囲網が張られることはないのである。


「待て待て待て、じゃあ陛下は何としてでも俺たちを捕らえるために!?」

「それしか考えられないだろう。少なくともそうでなければここまでのことはしないはずだからな!!」

『それは……参ったな……』


 ルギーレのこともあるし、何より一緒に運んでいるヘルツもこのままではまずい。

 かといって国外に逃げることができずに、このまま国内をウロウロとさまよっているだけではいずれ騎士団に追い詰められて捕まってしまうのは目に見えている。

 ただでさえ先ほど、自分たちに向かって騎士団が無数のエネルギー砲を撃ちまくってきたのだから、生死を問わずに捕まえろとでも命令が下っているのだろうとマルニスは推測する。


『そこまでのこと、俺様たちがやったみたいなことにされてんのか!?』

「どうやらそうらしいな。俺たちはどう考えたって助ける側の人間なんだけどな!」


 憤りを隠せないエルヴェダーとカリスドだが、今はそれよりも自分たちの身の安全を考えなければならない。

 この国の騎士団長であるマルニスに対し、ルディアが魔術師としての観点から脱出の手立てを聞いてみる。


「それよりもまずはこの包囲網を……魔術防壁をどうやって突破するかを考えましょうよ。ほら……魔力の消費量も尋常ではないってことですから、いつかはこの魔術防壁がなくなりますよね?」

「はい、なくなりますけど……持って三日ですかね?」

「それだと防壁がなくなる前に私たちが捕まっちゃいそうな気がしますね……じゃあどうにかして解除できないんですか?」

「帝都に行けば解除できないことはないんですが、まず帝都こそ厳重な護りで固められてしまっている気がします。これだけの部隊が動いて、こんな包囲網が張られているってことは、それだけ僕たちを捕まえるのに躍起になっているはずですから」


 しかし魔術防壁が切れるまで待つのは厳しい。

 あのグラルバルトの地下通路だって、いずれは騎士団に乗り込まれるだろう。

 だったらここはもう、自分たちが民間人たちを捕まえただのという冤罪を晴らすしか道はないのかもしれないだろうとルディアたちは決意した。

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