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406.対策

 まさか倒されてしまうとは思ってもみなかったし、そんなやり方があったなんて……と悔しさを噛み締めながらベティーナはその場を離脱する。

 どう考えても今の自分一人では勝ち目がないだろうと考え、ルディアたちがジルトバートに気を取られている間にさっさとワイバーンでその場から離れつつ、これからどうしようかと思考を巡らせる。


(ひとまずマリユスとニルス様に連絡を入れて……)


 その後のことはまた話し合って決めるつもりではいるが、敵もまさかルギーレなしでここまでの実力や仲間を獲得しているとは、なかなかの想定外の事態だった。

 しかし、それならばこちらもできることはきっとあるはずだ。

 失敗から学んで次に繋げていける者こそ一流であると、どこかで聞いた覚えのあるベティーナは、今は別の場所で活動しているはずのマリユスにまず連絡を入れ始める。


『……俺だ』

「あ、マリユス? まずいことになったわ。実はジルトバートがね……」


 最強の兵器であると信じて疑っていなかった、巨大人型兵器ジルトバートのまさかの方法による敗北を間近で見ていた彼女が、そのことを自分のパーティーのリーダーに伝えると、リーダーは納得した様子で返答をする。


『……ああ、わかった。それならこっちも準備を進めておく』

「余り驚かないのね?」

『そりゃまあ、まだあれは一号機だからな』

「えっ?」


 一号機?

 そんな話はまるで聞いていないんだけど……と片手でワイバーンを器用に操縦しながら確認するベティーナの耳に、マリユスからそれについて説明が入る。


『まあ、その一号機もなかなかのものだったがまだまだ試作機の段階だったから、こっちとしてもニルスと色々話し合って研究して、改良を重ねた二号機を造ろうって話になったんだよ』

「そうなの? それだったら言ってくれれば良かったのに」

『ああすまん、言い忘れていただけだ。それはそうと今回のそいつらとの戦いでまた改良すべき点が見つかったのは、俺たちにしてみれば好都合といえるだろう』


 自分のミサイル攻撃を逆手に取るという形でダメージを受け、結局倒されてしまったジルトバートだったが、敗北してしまったとはいえ得るものは大きかった。なのでこちらとしても対策を練ることができると呟くマリユスだが、それよりもベティーナには気になっていたことがあった。


「わかったわ。それじゃそっちには期待するとして、そっちの作戦の進み具合はどうなったのかしら?」

『こっち? こっちに関しては順調にエサを撒いてそれにみんなが食いついてくるように仕向けたから、そろそろ離脱する』

「そうなの。だったらあの連中を追い込むことができるってわけね」


 ベティーナはほくそ笑む。

 自分の方はまさかの失敗という形に終わってしまった今回の作戦だったが、彼の方は事前に自分やニルスと打ち合わせしていた通りに進んでいるらしく、その結果が今から楽しみだとイメージを膨らませていた。


『そうだな。信用を築き上げるのには時間がかかるが、信用をなくすのはまさに一瞬だということを身をもって感じることになると思うぞ』

「そうよねえ。じゃなかったらこんな大掛かりな作戦を考える意味がないもんね」


 はっはっはと笑いあうこの男女の勇者たちが考えていることは、間違いなくルディアたちにとって悪い方向に進むことである。

 もちろん、こうして潜伏部隊やジルトバートを倒すのに必死だったルディアたちが、よもやそんな展開になっていることなど知る由もない。

 そしてそのマリユスとベティーナたちの罠に引っかかる前に、まずはやらなければならないことができたのでさらにその罠も上手くいくだろうとベティーナはマリユスに伝える。


「噂が流れるのはなかなか速いからね。それにほら、騎士団の人間がのこのこやってきたからその男も洗脳して今回ジルトバートの操縦を任せたわけだけど、今ごろはその男を助け出してあたふたのてんやわんや状態だと思うわよ」

『それはやはり好都合という他ないな。その連中が帝都に戻ろうが他の町に向かおうが、結局どう転んでも同じ展開になるように俺が仕向けているんだからな』

「ふふふ、それもそうね。ジルトバートを失なったのは痛かったけど、これで一気にあいつらを追い込めるかと思うと必要な犠牲だったかもしれないわね」


 それじゃそっちに向かうわ、と言い通信を終了させたベティーナの考えている通り、マルニスやルディアたちはあたふたしながらも、自分たちを待ち受けている最悪の展開に向かって物理的に進んでいたのだった……。

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