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405.最強の存在

『うおっ!?』

「あ、あっぶねぇ!?」


 ジルトバートの肩のパーツが開いて飛び出てきたのは、円筒状の砲弾だった。

 それが火を噴いて自分たちの方に向かってくるものだから、距離をとって大きく回避するグラルバルトとエルヴェダー。

 だが、その砲弾を回避してそれで終わりかと思いきやどうやらそうではなかったらしい。


「ちょ、ちょっとこっちに向かってきますよ!?」

『何だと!?』


 なんと、避けて回避した砲弾が空中でくるりと反対側に向きを変える形で旋回し、今しがたかわしたはずの二匹のドラゴンたちを猛追し始めるのだ。

 当然ドラゴンたちもバッサバッサと翼を動かして逃げ回るが、砲弾の方が速いためにどんどんその距離が縮まっていく。


『くっそおおおおおおおおおおおおおお……』


 このまま自分がやられてしまって終わりか。

 魔術を使おうにも詠唱しているだけの時間がないと悟るエルヴェダーだったが、その瞬間ふいに後ろから迫っていた砲弾が大爆発を起こした。


『おおおおお……お!?』


 何が起こったのかと思って後ろを振り向いてみれば、そこには粉々になった砲弾が爆風の中からチリとなって地面へと落下していく様子と、もう一方のグラルバルトに向かっていく砲弾に向かって魔術を放っているルディアの姿があった。

 彼女が魔術を使って砲弾を撃ち落としてくれたようであり、それで何とか危機の一つは去ったわけなのだが、まだまだ油断はできない。


『くっそ、こんな奴どーやって相手すりゃいいんだよ!?』

「まったくだぜ!!」


 魔術が効かない、かといって物理攻撃も全然効果がないどころかこちらの武器が終わってしまうかもしれない。

 まさに「最強の存在」といえるかもしれないこんな兵器を相手にして、どうすればいいのか皆目見当もつかないエルヴェダーたち。

 だがその一方で、ルディアは危険ではあるがこのジルトバートにダメージを与えられるかもしれない方法を思いついていた。


『グラルバルトさん、マルニスさん!! 私に考えがあります!!』

「考え?」

「はい! それはですね……!!」


 その考えを話している最中にも、容赦なく襲い掛かってくるジルトバートのロングソードや追尾機能がついている砲弾。

 余り詳しく説明するだけの時間もないのだが、そこまで詳しく説明するほどの内容でもない上に、ルディアにはある確信があるからこそ、この作戦の提案であった。


『それは危険だが……ううむ、やむを得ん。それしかないならやってみよう!』

「ちょ、本気ですか!?」

『ああ。今ちょうど私たちの方にも攻撃が来ているからそれを利用するんだ!!』


 グラルバルトはそう決意すると、空中で大きく身を翻して一旦ジルトバートから距離を置く。

 だが、そんなグラルバルトに迫っていくのがジルトバートの肩から再び発射された数発の追尾型砲弾たち。

 その光景を視界に捉え、マルニスがグラルバルトに向かって叫んだ。


「来ましたよ、グラルバルトさん!!」

『わかった!!』


 マルニスの報告を背中から聞き、砲弾に追われていることを知りながらグラルバルトは空中で大きく旋回して後ろをちらりと振り返る。

 その砲弾たちは黄色いドラゴンを追いかけながら、確実に速いスピードで距離を詰めてきている。

 それをプレッシャーとしてヒシヒシと感じながらも、グラルバルトは視線を前に戻して「目標」に向かって一気に突き進む。


『お……おいおっさん、何するつもりだぁ!?』

「そ、そうか、あのドラゴンはああしてダメージを与えるつもりなんだ!!」


 驚きと焦りを隠せないエルヴェダーの背中の上で、グラルバルトのやろうとしていることに気が付いたカリスド。

 その視線の先では複数の砲弾に追いかけられているグラルバルトが、振るわれるジルトバートのロングソードを身体をひねりつつ回避し、ジルトバートの胸に向かって一気に突き進む。


『……掴まれっ!!』

「きゃあああああっ!!」

「くう……っ!!」



 しかし、何も自分でそのジルトバートの胸に向かって体当たりをかますのではない。

 体当たりをしてもらうのは自分の後ろからしつこく追いかけ続けてきている、複数の砲弾たちだったのだ。

 ルディアはこの砲弾たちが先ほど自分たちを追いかけていたのを見ていて、グラルバルトの動きよりもワンテンポ遅いことを見抜いていたのだった。

 その特性を逆に利用し、ギリギリまでそれを引き付けてから上空に向かって急激な方向転換をすることで、追いかけきれなくなった砲弾たちを当てることによってダメージを与えようという作戦だったのだ。


(誰がこんなものを造ったのかはわからないけど、人間が生み出したものなら必ず壊せるはず!!)


 ものには限度というものがある。

 それを体現するかのように、追いかけていた目標にすんでのところで回避されてしまった複数の砲弾たちは、自分たちを撃ち出してきた主の胸に向かって一直線に激しい音を立てながら突っ込んでいった。


「くっ……まさかそんな手が!!」


 ルディアたちがジルトバートと戦っているのを、距離をとって巻き込まれないようにしながら見ていたベティーナは、まさかの作戦に舌打ちを漏らすしかなかった……。

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