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401.鈍足の進軍

 その薬を打たれた人間たちは、抵抗してギラギラとした光を放っていた目の光が次第になくなっていく。

 とはいえ民間人たちが目隠しと猿ぐつわをされているために、その様子は薬を打っているベティーナからは見えないものの、彼女はこの薬を打つことによって何がこれから起こるのかを知っているため、別に見えなくても問題はなかった。

 そして抵抗していたその民間人たちの身体から力が抜けて、だらりと寝転がった状態に変化する。しかしこれで命が終わったわけではなく、むしろここからが始まりといえる状態になっているのだ。


「ふふふ……さぁ、果たして向こうはどう出てくるでしょうねぇ……?」


 勇者の影響力は、まだこの悪事が知られていない場所であればあるほど大きなものとして広がっている。

 世界中でいろいろな問題を解決してくれて、人々に平和と幸せをもたらす存在とされている勇者たちが、まさかこんなことをしているとは思ってもみないはずであるとベティーナは思っている。

 そして、先ほどまで一緒にここにいたマリユスはすでに次の行動をするべく動き始めている。

 それがあってこそ、自分たちが勇者として返り咲ける上に邪魔な奴らを壊滅させられるという一石二鳥の展開が待っているのが、今からでもその頭に浮かぶベティーナ。

 そんな彼女の目の前では、ゆっくりと起き上がった民間人たちがもぞもぞとうごめいているので、一人ずつその拘束を解いてやるベティーナ。

 そして事前に用意しておいた武器の山から一つずつそれを持たせ、部下として動いてくれている盗賊たちおよそ三百人とともに動き出すのを見送る。

 ここに確実に近づいてきている、かつてのパーティーメンバーだった男の仲間たちを排除するために。

 更に例の人間に、後ろで横倒しになっている赤くて大きな金属製の人型兵器を起動させて確実にその連中を殺すために。



 ◇



「くそっ、倒しても倒してもキリがねえぜ!!」

「どこかにリーダーみたいなのがいるんじゃないのか?」


 ルディアたちは地下水脈の至る所に待ち構えている潜伏部隊を倒しながら進んでいるのだが、倒しても倒しても至る所にそうした部隊が展開しているため、どうしてもなかなか進めない状態が続いていた。

 もちろんルディアたちも、探査魔術で相手の部隊がどこにどれだけ展開しているのかを確認しながら進んでいる訳なのだが、思った以上に相手の戦力は大きいようである。

 カリスドはベティーナたちに捕らわれていただけあって相手の戦力を把握していたはずなのだが、どうやら敵の方はまだまだ余力を残しているらしい。


『怯まず突き進め!! 私たちが怯んではどうしようもないぞ!!』

『わーってらぁ!!』


 グラルバルトとエルヴェダーのドラゴンたちも人間の姿で戦う。

 そのドラゴンたちは人間の姿になっても力は健在であり、相手が人間たち十数人で一気にかかってきたとしても、例えばエルヴェダーの場合は槍の一振りで生み出される衝撃波でまるで木の葉のように吹っ飛ばされてしまう。

 グラルバルトは拳一発、蹴り一発で人間たちを次々に沈めていくが、どこにどうやってどれだけこの人間たちを武装させて待ち構えさせていたのかがわからないまま進んでいく一行。

 そして気になるのは、カリスドと一緒に捕らわれていたはずのヘルツという男のことであった。


「おい、ヘルツの奴はまだ見つからねえのか!?」

「いいや、僕もまだ見ていない」

「くっそー……あの野郎どこに捕まってんだよぉ!?」


 ルディアとグラルバルトとエルヴェダーはそのヘルツという男の顔を知らないので、そのヘルツを探し出すことができるのはカリスドかマルニスだけなのだ。

 しかし、そのやり取りを横で聞いていたルディアが一つの予想を立てる。


「もしかしてこの潜伏部隊たちの中にはいなくて、カリスドさんが最初に捕まっていた本部隊の方に連れ戻されたとかってことはないんですか?」

「あー……それも確かにありえるかもな。でもこいつらを倒さなきゃ進めねえから、もっと気合い入れて進むしかねえだろーよ!!」


 そう叫びながらロングバトルアックスを振るうカリスドを先頭に、少しずつではあるが確実に地下水脈を制圧していくルディアたち。

 だが、次にそのルディアたちの前に立ちはだかったのはまさかの人物たちであった……。

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