表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

410/629

400.カリスドからの情報

 だが、カリスドは当たり前のように答え始める。


「そんなもん、俺がヘルツを見捨てて逃げたくねえって気持ちで命がけで引き返して、あいつらが追いかけてきていないかどうかを確認してきたからに決まってんだろーが」


 別に俺は裏切ってなんかいないぜ、とカリスドは最後に付け加える。

 そもそも裏切ったといえば、自分やマルニスがその昔このアーエリヴァ中を旅していた時に、先代の騎士団長が裏切って帝国にクーデターを起こしたのだけで十分らしい。


「マルニスと友達のブラインが同時に騎士団をクビになって、それで二人で旅に出て俺と出会ったんだよ」

『そうなのか?』

「ああ。まあ色々あったみたいで最終的に帝都に戻ってきてそこで俺がチャンピオンだった闘技場にチャレンジャーとしてマルニスが挑んできて、俺が負けちまったってわけさ」


 そして闘技場絡みでも騎士団に関する鬱憤が明らかになり、マルニスやヘルツといった小さな反乱軍の手によって腐敗した騎士団の実態が明らかになった。

 その結果、最終的には当時の騎士団長をマルニスが打ち倒し自らが皇帝に任命される形で、新たな騎士団長としてこうして活動しているのだ。


「それで俺も騎士団に入ることになって、今こうして騎士団で働いてっけど……この国の崩壊を望んでいるって話をしていたぜ。俺たちが捕まった連中はさ」

「あの……もしかしてその敵たちの中に勇者のマリユスさんがいませんでした?」

「あー、そーいやそいつが連中を仕切ってたぜ。それから金髪の何てったっけ……ああそうそう、ベティーナってのも一緒にいた。というかそもそも俺たちはマルニスと一緒にそいつらについていったんだが、地下で魔物に襲われて一度散り散りになって……あっ!!」


 そうだ、これも話しておかなければならねえなとカリスドが思い出したのは、マルニスたちにとって衝撃の事実だった。


「俺たちが地下で襲われた魔物がいただろ?」

「ああ、いたねえ。細かいのが多くてほとんど覚えてないけど、それがどうかしたのかい?」

「どうもこうも……そいつら勇者たちがその時俺たちを襲ってきた魔物たちと同じ魔物たちを従者として持ってたんだがよぉ……」

「えっ、そうなの!?」

「ああ、この目で実際に見たから間違いねえよ。そしてこれは単なる偶然って言えっかなぁ?」


 点と点が線で繋がろうとしている。

 勇者たちがワザと魔物たちをけしかけて襲わせて散り散りにさせ、はぐれたふりをしてここに民間人たちを集めていた?

 それらが全て本当だとしたら、自分たち騎士団を追っ払うために何でもするのが勇者たちのやり方なのだろうとマルニスは察した。


「……なるほど、そうなると前にルディアさんたちから聞いた他国での勇者たちの話についても納得が行きますね」

『ああ……勇者たちはもう勇者でも何でもねえってのはそういうことさ。あいつらは裏でそういう悪どいことをやってるってことだよ』


 マルニスが納得する横で、そうだろとエルヴェダーが力説する。

 そして聞くところによれば、カリスドが捕らわれていた横にその大型の人型兵器があったのだという。


「あんなデカブツ見たことねえけど一体何なんだ? それにあんなに人間を集めて何をしようってんだ?」

『それを探るのが私たちの今の仕事だ。つまり、今はその調査が終わるまでは戻れんのだよ』


 しかし、だからといってこれから先の果てに待ち受けているあの赤くて大きな人型の巨大兵器に勝てるのだろうか?

 勝てない限り先はないと考えているルディアだが、今のメンツでは勝てるのだろうか?

 いくらドラゴンが二匹いるとはいえ、全く未知数のその赤い兵器に……。


「……!!」

「あっ……この先だ!!」


 ルディアがそんなことを考えていた矢先、とっさにマルニスとカリスドが身構えたので残りの全員も身構える。

 そしてカリスドの指し示す先には、大きく開けた岩場の広場があった。

 そこで明らかに魔力が集まっているのを確認したルディアたちは、意を決して広場に向かって歩き出すのであった。



 ◇



「へえ、潜伏部隊と戦い始めたのね。まさかここまで来るとは思ってもみなかったけど、邪魔をするなら始末してしまいましょう」


 部下の盗賊たちからの報告を聞き、ベティーナたちはルディアたちがこちらに向かって接近しているのを確認する。

 地下通路を根城にしている盗賊たちを大金で買収し、自分たちの部下として使うことで人員の現地調達に成功したマリユスたちだったが、まだやらなければならないことがある。

 それは足元に転がっている、盗賊たちに頼んで誘拐してきてもらった多数の一般人たちを使うことである。


「ふふふ……この薬を使うには多少もったいない気もするけど、それでも色々と頑張ってニルスが開発してくれたんだから、思う存分使わせてもらわないとね」


 ベティーナはそう言いながら、まるでミノムシのようにぐるぐる巻きで縄で縛られた上に、口と目を布で塞がれた一人の人間の首筋に、その薬品を詰め込んだ注射ポンプの針を突き刺した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価などをぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ