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396.情報の整理

『人の安眠場所に勝手に入るのは感心せんな』

「……っ!?」

『あっ、おっさん!!』


 声がしたのは、ここから直通で地上に出られる出入り口に続く通路の方だった。

 その声のした方に全員が一斉に振り向いてみれば、そこには人間の姿になったグラルバルトの姿があった。

 彼がなぜここに……という疑問は彼自らが説明してくれる。


『人間たちを送っていって疲れたから一休みしようと考えて、久しぶりにここまで来てみたら今度はこんなことになっているとはな』

『おっさんおっさん、ちょっと待ってくれよ。俺様たちはこの地下で真実を確認するためにここまで来たんだぜ?』


 だからおっさんの心の安らぎ処を荒らそうなんて考えていないんだ、と弁明するエルヴェダーだが、グラルバルトからの反応は次のようなものであった。


『それはわかっている』

『えっ?』

『私だって何も感じないままここに戻ってきたわけではない。君の強大な魔力を感じて何かをしようとしているのはわかったんだが、それよりもこの地下迷宮の荒れようの方が重大だろう』


 そもそもの話、この近くではすでに絶命している行方不明者の人間たちが所々に倒れていたのを見つけていたというグラルバルト。

 だが、今はこの全員の話がとっ散らかっているので一旦整理をして、このアーエリヴァで何が起こっているのかを把握することが先決だった。


「……というわけで、僕たち帝国騎士団はマリユス様と一緒にこの地下迷宮を探索に来たのですが、途中で魔物の集団に襲われてはぐれてしまいまして」

『その途中でさまよっていたところを、中に入ってきたエルヴェダーとルディアに出会ったんだな』

『そーそー。でもその後に俺様たちはでっけえサソリに襲われてよお。再びはぐれちまってマルニスたちを捜してたんだよ』


 でも……とエルヴェダーは一旦言葉を切ってから続ける。


『その勇者様とやらが、中央広場で大勢の人間たちを縛って地面に転がしている姿を見ちまったら、もうあんな奴勇者でも何でもねーって誰でもわかるぜ』

「そうですよね。でも、その地面に転がされていた人たちも全員一緒に消えてしまったんですけど、マリユスたちは一体どこに行ってしまったんでしょう?」


 魔物たちに襲われたのをこれ幸いとばかりにマルニスたちを振り切って、マリユスたちが恐ろしいことをしでかそうとしているのは間違いなさそうである。

 だが、果たしてこの地下迷宮のどこかにまだ彼らはいるのだろうか?

 まずはそれがわからないと追いかけようがないので、ルディアが探査魔術でこの迷宮中を探ってみる……が。


「……何か、そこかしこにいっぱい魔力の反応があってどれがどれだかさっぱりわからないです」

「じゃあ結局わからないってことですか?」

「そうですね、残念ながら……」


 そもそも、一般人たちが誘拐されてここまでやってきたその動機すらもわかっていない今では、彼らが何をしようとしているのかを知る由もないのが現実だった。

 とりあえずそれも大事なのだが、本来のルディアとエルヴェダーの目的はこの地下迷宮でレイグラードに関しての情報を集めることだったので、すでに目的は達成されたといえる。

 だから自分たちはこれで失礼して、まだ寝込んでいるであろうルギーレの元へと引き返すつもりだったルディアとエルヴェダーだが、それに待ったをかけたのがグラルバルトだった。


『帰るのは構わないが、まだ必要な情報があるのではないか?』

「えっ?」

『いや、必要な情報はもう手に入れたはずだからこれで帰ろうかと……』


 思っているんだ、と言いかけたエルヴェダーの言葉を手で遮り、グラルバルトはもっともなことを言い出した。


『これで戻ったとしても、ルギーレを回復させる手段がないのなら同じことじゃないのか?』

「あ……それもそうですね」

『そっか。だったらよぉおっさん、その回復手段は知っているか?』


 こんな大昔のことが記載されている文献まで持っているとなると、きっと回復手段だって彼は知っているはず。

 七匹のドラゴンの中で最年長の存在なのだから、レイグラードのことだって詳しいはずだ。

 そんなルディアとエルヴェダーの期待に対して、グラルバルトが口に出した答えは……」


『私も知らん』

『へ?』

『その文献にはレイグラードの真実が載っているだけで、回復方法は私も知らない。だからこのアーエリヴァで色々と話を聞いてみたらどうだ? 私にはそれが一番回復への近道だと思うがな』


 どうやらこのアーエリヴァでやることが増えてしまったらしい。

 それもルギーレ抜きでの話だが、ここまで来てしまった以上は目の前の問題を一つずつ片づけていくしかなさそうだった。

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