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2.地下にて

「これは多分……ここに魔力をこうやって送り込めば……ほら」

「あっ……!?」


 女の手を当てられた文様が、ほのかに青白く輝き始める。

 その光は文様全体に広がっていき、ついには壁を両側に開くドアへと変えてしまったのだった。

 ゴゴゴ……と重苦しそうな音を立てながら開かれた壁の先からは、この遺跡の中から感じ取れる異質な気配がより強くなっているのがルギーレにもわかった。


「うっ……なんだこの気配!?」

「これは……複数の属性の魔力が混ざり合っているわね。ほら、人間も魔物も火属性が強かったり水属性が強かったりするでしょ。それと一緒なんだけど、これは……こんなの初めて感じるわ」


 たまに二属性、まれに三属性が混ざり合う人間や魔物が産まれてくることはあれど、ここまで多くの属性が混ざり合っている魔力はこの女も初めて感じるらしい。


「このまま進んでいいのか?」

「ん……ちょっと待って。探査魔術で中の様子を探ってみるわ」


 目を閉じて気を集中し、両手を胸に前で合わせて探査魔術を発動する女。

 こういった建物の中や洞窟などの内部の生物の気配を察知できるので、初めて踏み込む場所では非常に有効な魔術である。

 だが、女の探査魔術の結果はいぶかしげな表情で伝えられる。


「……生物の気配がしないわ」

「え、そうなのか?」

「ええ。だけどこれだけの魔力、しかも複数の属性となるとこの先にはトラップがある可能性が高いわね。先に進むんだったら気を付けて進んだほうがいいわよ」

「お……おう」


 でも、とそこで女は今のフロアの中に視線を向ける。


「私が引っかかってるのはそこじゃないのよ」

「え?」

「ここに来るまでに気が付かなかったかしら? このフロアの中に人骨が放置されていたのを」

「あ……」


 そう言われてルギーレは思い出す。

 このフロアを歩いているときに、明らかに人間の頭蓋骨や肋骨の形をしたものがところどころにあったのを。

 ルギーレのその反応を見て、謎の女はさらに続ける。


「それから足跡もあったわよね。しかも人間以外の。あれはこの遺跡の中に魔物がいたって証明になるわ」

「確かにそれもあったけど、でも俺は魔物になんか遭遇してねえぞ?」

「全部討伐されたらしいわよ。一度ここに簡単な調査が入ったんだけど、もともとここには魔物がかなりいたらしくて、結局魔物の討伐をしたらしいんだけど、その時に調査道具が壊されてしまったらしいの」


 だから騎士団と調査部隊はいったんシャフザートに戻って、もっと準備を整えてからまた来るらしい。

 それとは別に遺跡の周辺で素材集めを依頼で出していることもあり、こうしてルギーレがやってきたのだが、いつのまにかこの女が一緒についてくることになったらしい。


「じゃあ行きましょ。私はこの先で予知夢があっているかどうかを確かめたいの。あなたはこの先に興味はないのかしら?」

「まあ、あるっちゃあるけど……騎士団を待ったほうがよくないか?」

「それならまた日を改めてきたほうがよさそうね。私は先に進むから、あなたはどうぞ帰って」

「いや……俺も行くわ」


 こうして謎の金髪女と一緒に、壁の向こう側へとルギーレは進む。

 そんな壁の向こう側にあったのは、地下に向かって進む螺旋階段であった。

 どうやらこの螺旋階段で一本道になっているようだが、その階段も短く終わって地下一階部分へとたどり着いただけだった。

 その先にはかなり大きな部屋があり、まるでこの場所が聖域のようにも感じられる。


「ここが最深部か?」

「どうやらそのようね。それで……魔力はあれから感じるわ」

「え、あれって!?」


 女の指差す先。

 そこには、古びた台座にまっすぐに突き刺さっている一本のロングソードがあった。柄の部分は赤く、見るからにギザギザして刺々しいデザインになっている。

 このヘルヴァナールという世界においては、戦闘用の武器や防具、アクセサリーなどを作るときにはその作成過程で魔力を流し込み、使用者の持っている属性の威力や身体能力などを強化するのが常識だ。

 もちろんルギーレが腰に携えているロングソードも、魔力を流し込んで作られたものである。

 しかし流し込める魔力は原則として一つだけ。

 二つも三つも魔力を流し込めば、今度は武器の耐久性が格段に落ちてしまうことがすでに世界中で知られている。


「あの剣には複数の属性の魔力が流し込まれてるってのか!?」

「魔力の出どころからするとそれしか考えられないわね。となれば、あの剣は触った瞬間に朽ちてバラバラになってしまうかも……」


 だが、実際は触ってみなければわからない。

 ルギーレは本来の目的も忘れ、その剣を握ってみたいという不思議な気持ちがわいてきた。

 それを見た女はフラフラと剣に近づいていくルギーレの姿を目で追いつつ、うんうんと意味ありげにうなずくだけだ。


(ここまでは予知夢と同じ……あら?)


 うなずいて首を下に向けたときに、ふと視線の先にあるものに気が付いた女。

 それと同時に表情が変わり、続けて大声をルギーレに向かって出した。

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