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386.砂漠の地下迷宮

『追っ手は来ていないようだからその心配はないが、この地下からは人間や魔物たちの気配が山ほどする。用心して進むしかないな』

「そうですね……それでは行きましょう」


 出入り口に入るため、目の前にある三十段ぐらいの長い石造りの階段を降り、その先のこれまた石造りの扉を開ける。

 その先からはヒンヤリとした空気が流れ出てきた。


『この地下迷宮は壁も地面も見ての通り石造りで、ちょっとやそっとでは壊れる心配はないってあのグラルバルトのおっさんが言ってた』

「そうみたいですね。それに強固な造りをしているこの地下迷宮には、そこかしこの壁や床に灯りを灯すための魔晶石が埋め込まれているみたいですから、暗闇の先から何が出てくるかわからない恐怖に怯えながら進まなくてもいいのは嬉しいですよ」


 しかし、この地下迷宮のことを知り尽くしているのはグラルバルトだけなので、ここは以前エルヴェダーがこの迷宮に来た時に困らないように、グラルバルトから貰った地図を頼りに進むことにする。

 その地図を手に持ちながら迷宮を進むエルヴェダーに対して、ルディアが気になったことがあるので歩きながら質問をする。


「そういえばここって何のためにグラルバルトさんが造ったんですかね? まさか魔物たちを地下に逃がすためですか?」

『いいや、違う』


 そもそも、グラルバルトはここを造った存在ではないのだ。


『ここを造ったのはあのおっさんじゃなく、このアーエリヴァ帝国の人間たちなんだってよ』

「えっ、そうなんですか?」

『ああ。見ての通りここの上は砂漠になっているからよ、その砂漠の過酷な環境から逃がれて移動するのに、人間たちがこの地下迷宮を造ったんだって』


 砂漠というものは見ての通り環境としては非常に過酷である。

 暑さで体力を奪われて、水分がなければまともに進むこともできない。

 更に水分があったとしても、砂の地面は普通に街道を歩くよりも歩きにくい上に、キャラバン隊の馬車の車輪が砂にハマってしまって進むことが困難になる場面も何回も人間たちは遭遇している。


『そういう様々な困難をなるべく少なくするために、人間たちはこうして地下を進むことにした。天井がこうして高いのも、地下通路にしては横幅が人間十人ほどの余裕があるのも、馬車を入れて通りやすくするためだっておっさんが言ってたぜ』


 今の入ってきた出入り口は人間たちのものだが、場所によっては馬車が出入りできる出入り口も造られている。

 ルディアが魔物の隔離に……といった予想は見事に外れたその逆で、上に広がる砂漠にはサンドワームや殺人サソリ、大型のクマなどの凶暴で危険極まりない生物もいるので、この地下通路ができてから砂漠を安全に通り抜けられるようになって人間たちの生活に大きな余裕ができた歴史がある。


『だが、ここにもどうやら勇者マリユスとやらの手が及んでいるらしい。俺様もこの世界を看視している以上、しっかりと調査はしておかなきゃな』


 すると、エルヴェダーの斜め後ろを歩きながら聞いていたルディアがその話に関連したことを言い始めた。


「そうだ、ギルドの冒険者たちが話していたんですけど……。ここにはどうやら巨大なサソリが棲みついているらしいですね」

『サソリ? あー、そーだそーだ、そんなこと言ってたっけな。地上をウヨウヨ闊歩している小型サソリの親玉みたいな奴がこの地下にいるって。おかげでこの場所を通りたい人間たちにとっては危険な存在で、最近はアーエリヴァ騎士団で討伐命令も下ったみてーだしよ』


 しかし、そのサソリに対して騎士団では手こずる報告が山ほど出てきているのも冒険者たちからの報告があった。


「でも、そのサソリはなかなか頭がいいらしいんですよ。配下の小型サソリたちを上手く操って騎士団を撃退しているらしいので、いくら馬車の移動もできるように天井を高くして、通路の幅を広くしたとしてもやはり地下通路は地下通路であり、壁がある以上逃げられる空間が限られてしまいますからね」

『そりゃまあそうだろうなあ。上の砂漠のように四方八方に逃げることができる場所じゃないから、囲まれて追い詰められたらそれこそ終わりだ。それにサソリは毒を持っているから、解毒剤や解毒の魔術はここを通り抜けるのには必須だという話だったしな』

「そもそも……私はそのサソリの姿を考えただけで気持ち悪くなるんですけどね……」


 虫が余り好きではないルディアが明らかに嫌そうな顔をして首を横に振るものの、ここを通り抜けていかなければならないのでどこかで遭遇は覚悟しなければならないだろう。

 しかし、遭遇しそうなのはそのサソリ集団だけではないらしいことが、この二名がが集めてきた冒険者たちの話からわかった。

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