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378.主犯の行方

 一方でルギーレが倒れたことなど知る由もないエルヴェダーやルディアたちは、落下傘部隊となって地上へと逃げていってしまった敵たちを捜そうと考えていたのだが、そこに魔術通信でルギーレが倒れたとの連絡が入った。

 というわけでこちらも一旦捜索活動を、合流したヴェンラトースとハワードに任せることにして、大急ぎで王都へと戻ってきた。


「うーん……確かにこれは変な魔力ねえ」

『俺様もこんな魔力は感じたことねえけどよ、とりあえずしばらくゆっくりさせておいた方がいいだろーな』


 城の中の一室で、ベッドの中でうんうん唸っているルギーレの様子を見てルディアもエルヴェダーも、このまま彼が戦線に復帰するのは難しいだろうと考えている。

 何が原因となっているのかわからない状態では、手の施しようがないというのが事実だったからだ。


『とりあえずセルフォンに連絡とって、何とかしてこっちに来てもらったほうがいいかもしれん。吾輩たちではわからんからな』

「わかったわ。あー、いろいろとやることが増えてなかなかハードだけど、首突っ込んだ以上は頑張るしかないでしょ」


 ただでさえ今回の麻薬事件の主犯がまだ逃げている最中で、早急に追いかけなければならない状況の上にルギーレが戦線離脱してしまうとなると、ルディアだけでは負担が大きくなってしまう。

 ひとまずルギーレとレイグラードはここに置いて行き、セルフォンが来るまでの間ルディアとエルヴェダー、さらにアサドールも加わって例の麻薬事件の主犯とされているアルツという男を捜そうと決めた。


『ルギーレのことも確かに大事だが、それよりも取り逃がしちまったアルツって奴をさっさと見つけねえと、いろいろと立て直されてまた厄介なことになりかねねえぜ』

「そうね……その人を見つけて倒さない限りこの国の事件は終わらないわ。ルギーレを置いていくのは気が引けるけど、すぐに見つけて倒しちゃえばいいのよ」


 そう言って意気込むエルヴェダーとルディアだが、アサドールはうーんと首を傾げる。


『しかし、麻薬事件の主犯を追うのはいいにしても当てはあるのか? それもないのに闇雲に捜し回っても見つからない気がするんだが』

「それはそうなんだけど、落下傘部隊で降りて行った場所は大体わかるからその周辺を徹底的に捜すしかなさそうね」


 今のところはそれぐらいしか奴らの手がかりがないので、こればかりは運だと考えるルディアたち、

 しかし、その話を横で聞いていたジェクトからこんな話がもたらされる。


「なあ、レイグラードの加護を受けていたり伝説のドラゴンたちだったらそれぞれ嗅覚で追うことはできないのか?」

『嗅覚だと?』

「ああ。聞いた話だと、その麻薬を満載した飛行船を谷底で爆発させて処理したんだろう? だったらその周辺にはまだ麻薬の匂いが残っているはずだから、それを元にして主犯の人間たちを追いかけられるような気がするんだがな」


 ジェクトは何も思いつきでこう言い出したのではなく、自分の経験からこうすればいいのではないかと提案しているらしく、自分の所属しているバーレン騎士団が以前に解決したとある事件について話し始める。


「バーレンでも麻薬に関する事件はなかなか多い。情けないが国が余り潤っていなくてな。貧しい我が国では犯罪に手を染めて金を稼ぐ者も後を絶たない」


 その犯罪は例えば海産物の密猟であったり、盗賊団を結成して道ゆく人間たちから金品を巻き上げたり、密入国の手助けで金を稼いだりと多岐に渡る。

 そして今回の事件と同じく、バーレンでも麻薬に手を染めて金を稼ぐ人間がまだまだ沢山いるのだ。

 そうした麻薬関連の事件で経験があるジェクトは、解決の糸口としてこんな情報をもたらした。


「麻薬を扱う人間は、捕まえてみればそいつもまた麻薬の常習者だったというのは非常によくある話だ。むしろ気持ちよくなれる薬がそばにあって、一切手を出さない方が奇跡に近い」


 だからルギーレが倒したジェディオンも、ルディアたちがこれから追いかけるアルツという男も絶対に麻薬の常習使用者だとジェクトは睨む。


「本来は取り締まる側の騎士団員だからこそ、自分たちの仲間がまさか麻薬を使っているとは思わない。バーレンでも騎士団員が麻薬を使っていたことが発覚して、すぐさま処刑された事件もあったからな」

「……怖いのね、麻薬って」

「怖い。一回だけなら……という安易な気持ちで手を出したら最後、ズルズルと引き込まれて抜け出せなくなってしまう。それぐらいの依存性があるからな」


 もちろんジェクトは麻薬を使ったことはないのだが、麻薬常習者を取り押さえた時やその後の捜査でそうした証言を得たことがあったので、自分は絶対に麻薬には手を出さないと誓っている。

 そんなジェクトのアドバイスもあって、まずはその麻薬の匂いを覚えてそれをたどっていけばもしかするとアルツたちにたどり着けるかもしれない。

 行き先の決まった赤と緑のドラゴンたちは、ジェクトにルギーレの看病を任せて一人の少女を連れ、北へと向かって全速力で飛んで行った。

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