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374.大空の追撃

『ルディア、しっかり掴まってろ!』

「う、うん!!」


 ルディアを背中に乗せた一匹の赤くて大きなドラゴンが、ヴィーンラディの王都から北へと向かって飛び去って行く。

 行き先はもちろん、先に北に向かっていたハワードとヴェンラトースが取り逃がしてしまったという大きな飛行船の元である。


『しかしまぁ、敵もそんなことを考えていたなんて到底信じられねえんだがな……』

「私もよ。まさか飛行船を爆破して空中から麻薬をまくなんて……」


 実際にそんなことができるのかどうかと聞かれれば、このどちらも専門家ではないのでわからない。


『へへ、も、もう……止められねぇぜ。あいつが乗っている飛行船……が、爆発すれ、ば……麻薬が空から降り……注、ぐ!!』


 だが、敵の一人がこうして事切れる前に笑いながら言い放ったことが現実に起こりえるのだとすれば、それを止めるのが世界の看視者たるエルヴェダーの役目でもあるのだ。

 ルディアはそれを止めるべく、ルギーレの代わりにこうしてエルヴェダーの背中に乗って進んでいるのだが、実際のところ自分たちだけで大丈夫なのだろうかという不安が付きまとっているのもまた事実だった。


「敵の戦力がわからない以上、このまま突っ込んでいいのかしら?」

『俺様もそこは気になるけどよぉ、だからって今こうやってまごまごしてたって進む話も進まねえぜ。だったら突っ込んで一気にぶちのめしちまうだけだろーよ』


 熱血漢のエルヴェダーらしい言い分だが、ルディアは予知夢を見る時とはまた違う不安を覚えていた。

 しかし自分も一緒に行くと決めてこうしてついてきてしまった以上、もう後戻りはできないのだ。

 せめて将軍のジェラードも一緒に誘えばよかったかなあと思い始めたころ、雲をかき分けて進んでいた赤いドラゴンの視界に何かが飛び込んできた。


『ん……おい、あれじゃねえのか?』

「え? あ……そうかしら?」


 その飛行船とやらを実際に見たことがないので、エルヴェダーもルディアもハワードとヴェンラトースからの情報を頼りに飛行船を探すしかない。

 そしてその飛行船らしき物体が、何故かこっちに向かってぐんぐんとその影を大きくしているのだ。

 黒く塗られている気嚢が非常に不気味な存在感を示しているが、だからと言ってここで退くわけにはいかないエルヴェダーは、ルディアに魔術防壁を張るように指示を出しつつ飛行船の側面から回り込んでいこうとする。

 だが……。


『くっ、飛行船から矢が飛んでくる!! 回避すっぞ!!』

「うわっ!!」


 人員がそれなりの人数で乗れるように設計されているらしいこの飛行船では、どうやらそれなりの人数の敵が乗っているらしい。

 それはそれで倒すまでなのだが、ここでエルヴェダーにとっては問題が。


『くっそ、何も積んでねえんだったら俺様の炎で焼き尽くしてやるんだけどよぉ、爆破したら麻薬が降り注ぐんだろ!?』

「そうね……だったら中に乗り込んで倒すしかなさそうね」

『ちっきしょう、めんどくせーったらありゃしねえ!!』


 この飛行船がもし王都にたどり着き、その上空で大爆発でも起こそうものなら、それだけでヴィーンラディの王都ケーフベルクは麻薬まみれになってしまう。

 それだけは何としても避けたいので、ケーフベルクにたどり着く前にどこかで撃墜しなければならないのだが、麻薬の散布されてしまう危険性を考えれば炎の魔術……いや、それ以外の魔術も飛行船に向かって放つわけにはいかなかった。


『くっそ、こーなったら力任せに突撃すっきゃねー!!』

「ええっ!?」

『それしかねーだろ!! 厄介なシロモンだぜ。下手に攻撃したら爆発しちまうかもしれねえんだからよ!!』


 仮に海の上とかであればまだ爆発させてもいいのだろうが、陸地の上では絶対にダメだ。

 それを考えて、エルヴェダーはいったん高度を下げて飛行船の下から突き上げることにする。

 飛行船の乗員たち……この場合は敵たちが乗っている場所から考えれば、真横は見えるものの上や下は見える範囲に限りがある。

 となれば下から突き上げてやればそれでどうにかなるだろうと考えたエルヴェダーだったが、それよりも有効かもしれない手段をルディアが思いつく。


「ねえ、だったら上から下に押して落としていけば?」

『はっ?』

「だって、結局は下に下ろさないと何も始まらないでしょ。それにあなたの重さを考えれば、下に向かって下ろせるだけの重さはあると思うのよ」


 もちろん鋭い爪を立てないようにする配慮は必要だが、少しずつ下に下ろしていくことで何とか解決できるかもしれない。

 イチかバチかでやってみるだけの価値はあるかもしれないと納得したエルヴェダーは、いったん下げた高度を一気に上げて飛行船の上へと回り込み、翼を激しく動かしながらゆっくりと高度を下げ始めていった。

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