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373.黒幕の企み

「一足遅かった!」

「悔やむのは後だ。すぐにでも空を飛んで追いかけなければ、麻薬が上空から散布されてしまうぞ!!」

「……ああ、そうだな」


 地面を蹴りつけて悔しがるハワードと、冷静な口調でこれからの行動を提案するヴェンラトース。

 彼らがどうしてここまで悔しがっているのかというと、これから空を使った激戦が行なわれる予感がする出来事が起きていたからだ。

 それは、黒幕と判明したアルツという騎士団員を調査に向かった先で発見したものの、彼は空に向かって魔力をエネルギーとする飛行船を飛ばしてしまったからであった。


(まさかあんな手を使うとはな……)


 飛行船という乗り物はワイバーンほどのスピードも出なければ、ルギーレたちが戦いを繰り広げている船のように多くの荷物や人員を載せられるわけでもない。

 しかし、ゆったりとした空の旅を楽しみたいという旅行者たちには非常に人気が高く、飛行船による各国を巡るツアーなども開催されているだけあって、この世界では娯楽の一つとなっているのだ。

 そんな用途で使われる飛行船だが、アルツという男はどうやらその飛行船を恐ろしい目的のために使うらしく、すでに飛行船が出発して空の彼方へと飛んで行ってしまったところにハワードとヴェンラトースが到着したのだ。


「くそっ、このままワイバーンで追いかけようにも、敵の攻撃がすさまじくてすでにワイバーンが殺されてしまったからな……」

「ああ、だったらどこかで飛行手段を得なければ……」


 ハワードの言うとおり、二人はこうしてワイバーンを使って飛行しながらこの北の地までやってきた。

 最初は空を飛んでいたという二足歩行の大きな金属の人型の物体を探しにやってきたはずだったのだが、地上で不審な飛行船を見つけたので降りてみて調べてみることにしたのである。

 そこまでは良かったのだが、それはどうやら騎士団に不満を持って裏切っていた騎士団員たちと、その騎士団員たちと手を組んだ麻薬組織の残りの連中だったようであり、二人が乗っているワイバーンを見つけて総攻撃を仕掛けてきたのだ。


「あれだけ抵抗されてはどうしようもないな……」


 ハワードが魔晶石を使い、王都へと連絡を入れているのを横目で見ながらヴェンラトースは呟く。

 迎撃態勢に移る騎士団員たちや麻薬組織の連中に指示を出しているのは、金髪を短く切った一人の騎士団員だった。

 それは副騎士団長であるハワードが、以前耳にしていた腕の立つ騎士団員だとすぐに頭の中の記憶と照らし合わせて判明したのだ。


(ハワードが言うには、その騎士団員はアルツという名前の腕の立つ騎士団員らしいな。しかし彼もまた、我が国の騎士団に不満を持っているとは……)


 当初は彼が何を企んでいるのかわからない状況だったが、部下となった騎士団員たちや麻薬組織の連中に指示を出して自分たちの乗っているワイバーンを撃墜させようとしてきた時点で、すでに反乱を起こした人間となってしまう。

 となれば当然ハワードもヴェンラトースも迎撃に移るのだが、さすがに数の暴力で一斉に攻撃されれば弓と魔術によってワイバーンが撃墜され、二人は近くの森の中へと落ちてしまった。

 幸いにも森の木々がクッションとなって大したダメージもなく生き延びることができたのだが、そこから近くの飛行船のある場所までたどり着くには二人を仕留めるべく襲い掛かってくる敵たちを倒していかなければならなかったのだ。


(さすがに俺達でも数が多すぎた。気が付けばあの飛行船が空へと上がっていき、俺たちが足止めされている間に逃げてしまった……)


 それでも部下たちを倒して主犯のアルツの元へと大急ぎで向かおうとしたのだが、事切れる寸前の騎士団員の一人からアルツが何をしようとしているのかを聞き出して唖然とするハワードとヴェンラトース。


「へへ、も、もう……止められねぇぜ。あいつが乗っている飛行船……が、爆発すれ、ば……麻薬が空から降り……注、ぐ!!」

「何だと!?」


 それだけ言って事切れてしまった騎士団員の話が本当であるならば、上空で飛行船を爆発させて、その飛行船の中に積んである麻薬を爆発の衝撃で全てまき散らす。

 そうすれば、以前の調査で分かった麻薬を撒き散らして人間たちの世界戦争を引き起こそうとする企みを一気に実現できるまたとないチャンスになるのだ。

 そんなことはさせてなるものかとギリギリと拳を握り締めるヴェンラトースだが、ハワードが通信を終えて彼に朗報をもたらした。


「王都からの連絡だ。どうやら、王都で待機していたエルヴェダーとあの預言者が飛行船を追いかけてくれるらしい」

「ここにきて預言者頼みか……」


 正直、反預言者派であるヴェンラトースは乗り気ではない。

 しかしこの状況下ではああだこうだと言ってはいられないので、そこはぐっと気持ちを抑え込んでエルヴェダーとルディアに任せるしかなかったのである。

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