表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

377/629

368.ギルド長の目的

「……へ?」

『ぎ、ギルド長?』


 ルギーレのみならず、伝説のドラゴンであるアサドールまでもが驚きを隠せないその事実。

 先ほどまでルギーレと戦い、そして狂っているこの騎士団員を殺した黒ずくめのこの男がヴィーンラディのギルド長である、デレクだって?


「先に潜入していたって話はクレガーさんから聞いていましたけど……もしかして、俺たちのことを知らされていなかったんですか?」

「知らされてはいたのだが、この暗闇で恰好や顔がよくわからなくてな……やっと今しがたこうして気が付いて、お前たちに味方をしたってことだ」


 だからすまなかったと頭を下げられたのだが、ルギーレとアサドールは困惑しっ放しだ。

 通路の中で戦った時も逆光でよく見えなかったらしいのだが、とりあえずなんにせよ誤解が解けたことで一安心である。

 だが、まだ彼に聞かなければならないことは山ほどあるのだ。

 そしてアサドールにも。


「それはいいんですけど……アサドールさんはギルド長のこの人と面識はなかったんですか?」

『ないな。そもそも吾輩はギルドにはいかないし、ギルド長という人物はたいてい部下にギルドの運営を任せて自分は与えられた部屋でいろいろと忙しくしている人間だと思っていたからな』

「まあ、それはある。俺は確かにギルドの一番奥の部屋で手続き関連の最終決定をしたり、依頼の報酬の流れを見たりして不正や怪しい箇所がないかをチェックしたりする人間だから」


 その日々の業務の中で、彼はある日ギルドにやってきた依頼の中に妙なものがある事に気が付いた。


「複数の依頼が同じ人物から出されていたんだ。そりゃまあ、依頼自体が複雑だったり余りにも多くの人手を必要とするものであれば、求人をたくさん出してそうやって募集をかけるパターンがよくある」


 しかしその依頼主が記載している住所へと向かってみると、そこにあったのは古い工場を建て直している場面だったのだ。


「建て直すだけだったら確かに人手が必要だろうから、その人手を募集しているんだと思ってギルドの依頼として許可を出してしまった。だが、それが間違いだった」


 建物を建て直すということはなかなかに危険も伴うために給料は高く設定されていたのだが、それもカモフラージュの一種だった。

 建て直しが終わるまでの期間雇用とも書いてあったのですっかりそれを信用しきっていたデレクは、よくギルドに仕事を探しに来た連中の数人をそれ以降見かけなくなってしまったのだ。

 期間雇用で食いつないでいるような人間たちが長く働ける仕事を見つけたのだろうかと最初は思っていたのだが、その後も仕事を探す人間たちの間でちょくちょくその工場が噂になり始めたのだ。


「それが麻薬を取り扱う工場だったと?」

「そうだ。表向きは食品の加工をするための工場ってことになっていたんだが、ふたを開けてみれば地下に麻薬を製造するための工場を製造していた。その実態を知ったギルドに仕事を探しに来ていた数人の連中が消されたのも納得がいく。この船に乗り込んだのは、その工場を建て直して麻薬の製造工場を造った人間がこの船の連中とつながりがあったからだ」


 どうやら話はそう単純ではないらしい。


『まさか、麻薬はこの国で製造されて国外に流されているということか?』

「それもあるし、逆ルートもある。海を使うルートとは考えたものだな。確かにこの世界はこの陸地一つしかないから、なかなか海の方にまで注意を向ける人間は多くない。魔物だって確かにいるけど、わざわざ船に向かって突進しようとする魔物はいない」


 この船は普通の船ではなく、浸水事故を防いだり魔物との衝突時にも打ち勝てるように船底や船体を特殊加工しているので、安心してそういった品物を運べるということらしい。


『船を海に浮かべてしまえば、船体の加工は塗装でカモフラージュできる部分もあるし、船底なんて海に潜らない限りは調べようがない。ましてそれが貨物船となれば部外者を立ち入らせないようにするための口実なんていくらでも作れるから、堂々と麻薬を運べるわけだ』

「そうだ。実際に船の下には多数の麻薬の隠し場所があった。俺が他の船に乗り込んでいろいろと調べた結果、この船と変わらなかった」

「なら、さっきみたいに爆発するものを使っていたとしても浸水しないように手を打っていたってわけですね」


 結局、心配するだけ無駄だったということになってしまう。

 だがそうだとわかれば、この船たちをさっさと海の底に沈めてこんな商売が二度とできないようにしてもらうだけだ。

 そう意気込むルギーレだったが、デレクからの答えは首を横に振るものだった。


「いいや、それはダメだ」

「何でですか?」

「この件には王国騎士団が絡んでいる。内部の事情をハッキリさせるためにも、証拠はしっかり集めなければならない。援軍に来てくれたついでに証拠を集めるのを手伝ってくれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価などをぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ