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367.甲板決戦

「うわっ、くっ!!」

『くそ、吾輩が何とか奴を引き付けるからあの男をぶちのめせ!』

「む、無茶ですよ!」

『いいからやるんだよ!!』


 口論していても始まらない。

 無茶を承知の上で、危険な矢を飛ばしてくる男を相手にして戦わなければならなくなってしまったルギーレとアサドール。

 こんな時にジェクトとクレガーが一緒にいてくれたら少しは楽なのかもしれないが、向こうと連絡を取っている暇がなかった以上こうして二人だけでこの異様な騎士団員に対抗するしかないのだ。


(ってか、この矢を何発も撃ち込まれたら爆発で船がぶっ壊れて俺らも一緒に終わりだぜ!!)


 そう、相手の使う大爆発を引き起こすその屋は確かに殺傷能力が高いのはよくわかった。

 しかし裏を返せばこの船の底に穴をあけて水を引き入れる結果となり、最終的には先ほどジェクトとクレガーの二人から連絡があった通り地下にいるのであろう麻薬漬けの人間たちも一緒に海の底に沈んでしまう結果が見えている。

 そんな死に方をするのだけは絶対に嫌なルギーレは、早くこの男を倒してその沈没を防ぐことしか頭になった。

 ……それはいいのだが、今回の相手の騎士団員は普通の人間ではないらしい。


『お主、前に強化人間に出会ったとか言っていなかったか?』

「ええ、まあ……」

『あの男はおそらくその強化人間の一種なのではないか? どうも目つきが変だ』


 今は余り長く会話をしている暇がないので、攻撃しては近づいての不規則な会話のキャッチボールが続く。


「強化人間……はい、確かにありましたけど」

『じゃあマリユスとかニルスとかいう連中が関わっていても不思議ではなさそうだ。もうあの弓使いは人間ではなく化け物になってしまっている。ここで葬ってやるしかあるまい』

「確かに目の焦点が合っていないしなんだかうつろですけど、いったい何をどうしたらああなってしまうんですかね?」


 こうしてヒットアンドアウェイ戦法を繰り返すだけでも男の異常さがわかるのだが、それよりもルギーレが気になっているのは逃げて行った黒ずくめの男だった。

 その男が入っていった艦長室からこの異様な騎士団員が出てきたのだから、艦長室の中にはきっと何かがあるはずだ。

 だとしたら船を爆破される前に何としてでもこの騎士団員を倒して、さっさとあの男を追わなければ。


「モタモタしてたらさっきの奴に逃げられちまいますから、さっさと片付けちまいましょう!」

『そうだな』


 とはいうものの、うかつに矢を放てば何らかの影響があって爆発しないとも限らない。

 だったらなるべく武器や魔術を使わずに仕留めるべきだと思うので、ルギーレはまずアサドールのあの魔術に任せる。


『なかなかすばしっこいぞ、あの男』

「そう言いながら足止めには成功しましたね!」


 ルギーレの言うとおり、少してこずったものの何とか甲板の床からツタを伸ばして騎士団員の足に絡ませて転ばせ、動きを止めることに成功した。

 だが、そこから近づこうとしてもその男は足に絡まったままのツタを取ろうともせず、弓を使って攻撃を仕掛け続けてきている。

 確かにツタを取るよりも攻撃をした方がいいのはわかるが、だとしてもそれを全く気にするそぶりを見せないというのは異常だ。


「くっ!」


 男の放った矢が頬をかすめるが、それに構わずルギーレは突進を続ける。

 しかし、彼よりも先に男に肉薄する影があった。


「……え?」

「ぐがっ!?」


 ツタが足に絡まりながらも、何とかもう一方の足で立ち上がることに成功した男の胸を刃が貫く。

 それは、今しがた接近していたルギーレのレイグラードによるものではなかった。

 なぜならルギーレが走り寄っていたのは男の真正面であり、そのまま彼の胸を一突きにして終わらせる算段だったからだ。

 なのに今の男の胸からは()()()()()()()()()()()のだから、どう考えても位置関係がおかしい。

 それは男が背中から一突きにされたということを示すものだが、男の背中の方にあるのは先ほどあの黒ずくめの男が入っていった艦長室の出入り口だけだった。


(ということは……)


 こんなことをする人間はたった一人しかいない。

 そう、つい先ほどまでルギーレとアサドールが追いかけ続けていた水色の髪の毛を持つ黒ずくめの男の姿が刺された騎士団員の男の背後にあったのだ。


「な、何で……?」


 どうして背後から仲間を一突きにして殺すような真似ができるんだ?

 続きをそう言いたかったルギーレだが、彼が口を開く前にその黒ずくめの男は右手に握っているロングソードの血を振り払って口を開いた。


「お前たちが敵ではないとわかったからだ」

「え?」

『何だと?』


 つい先ほどまではルギーレと戦っていたはずのこの黒ずくめの男がいきなりそんなことを言い出したので、戦っていた本人も援護に駆け付けたアサドールも困惑を隠せない。

 もちろんそれはこの男もわかっているので、まず彼は自分の身分を明かすことにした。


「俺はデレク・シャレーフォン。ヴィーンラディ王国のギルド長だ」

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