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362.船に潜入

 問題は、ここからどうやって船に潜入するかである。

 それを考えると、正直どうやって突っ込むかが話の流れになるのだが、ここで二つの案が浮かんだ。


「どうにかして騒ぎを起こして、敵の意識をそっちにそらしている間に忍び込むか?」

「いや……ここは荷物か何かに隠れるかしてこっそりと忍び込んだ方がいいと思う」


 ジェクトとクレガーがそう言い合っているのだが、結局どっちの案も敵に気づかれる可能性が高いとなると、どっちかに絞らなければならないだろう。

 そこでここは、こういった戦略に関しては素人同然といえる立場のルギーレに判断がゆだねられる。


「じゃあルギーレ、お前が決めろ」

「え、俺ですか?」

「そうだ。俺もジェクトもどっちも譲れない気がするからな。このままここで言い合っていたら敵に見つかる可能性も高いから、ここでどっちかに決めてくれ」

「え、えー……」


 どっちがいい?

 いや、どっちを選んでも結局は敵に見つかってしまいそうな気がするので、ここはリスクが少なそうな方で行くことに決めるルギーレ。


「じゃあ……隠れて進む方がいいと思います。夜だからうかつに騒ぎを起こすとそれだけで見つかってしまいそうですし、音が響かないように闇に紛れて進んだ方が得策かと」

「わかった。それじゃ隠れて進めるルートを探そう。とりあえず目指すのは停泊しているあの大きな帆船だとして……」


 どうやって潜入するか。

 その答えを導き出してくれるのは、この港の中に乱雑に置かれている多数の荷物の山だった。

 それに身を隠して進む男たち。

 当たり前だが纏まって向かうと足音もするし、人影がはみ出て奴らに気づかれる可能性もあるので、ここは一人ずつ順番に進むことにした。


「よし、ここまではまあ順調か。それにしてもこんなに多くの船団を従えていられるってことは、やっぱりこっちの町はなかなか騎士団や警備隊の目が届いてないんじゃないんですか?」

「ああ……お恥ずかしい話だが、まさにその通りさ。どうしても王都周辺に住める場所が限られてしまっているからこそ、こっちまではなかなか手が回らないんだよ」


 もちろんこの港町にも警備隊の人間が常駐しているのだが、それは普通の警備隊ではなく泳げる人員ばかりを集めて結成された沿岸警備隊の人間たちだ。

 その人間たちから上がってくる情報としては、普段は特に代わり映えのしないことばかりであった。


「報告の中には船団に関しての話とかはなかったんですか?」

「それが全然。俺たちも今回の件で初めて聞いた」

「だとしたら、そこまで古くからやってるってわけじゃないんですかね……」


 船団が寄せ集めの船ばかりでできているのは、もしかしたら急ごしらえの結果なのかもしれない。

 だがそれにしても、先に潜入しているはずのデレクとかいうギルドトップの人間からの連絡がないのも気になる。

 それをクレガーに尋ねてみるが、彼も話としてはこちらに向かったというのを聞いているだけで細かい部分は知らないのだとか。


「ここまでまっすぐに来てしまったが、途中の村や町に立ち寄ってデレクを探すべきだったかと思っている。しかし、今の段階ではもう無理だ」

『無理って……と、とりあえずこの船団の中を調べてみないと何とも言えんだろう』


 アサドールも若干呆れ顔だが、そうこう話しているうちに上手く物陰に隠れながら四人は船にたどり着いた。

 だが問題はここから先だ。

 何も証拠をつかめないで帰りました、となってはせっかく情報をくれるために命をかけているデレクに申し訳ない。


「ずいぶん大きな船だな……こうなったら二人ずつで手分けして探したほうがいいか?」

「そうですね。それじゃあ俺と……誰にします?」

『吾輩が行こう。戦いに慣れている者同士でそちらは進めた方がいいだろうからな。何かあればすぐに連絡しろ』


 こうして何度目になるかわからない分担作戦が開始されたのだが、その船の中で思わぬ事実を四人が発見してしまう。

 なぜならまず、国は違えど戦える人間同士であるジェクトとクレガーのコンビが、その大きな船に乗っている人間が怪しい連中だけではないのを発見してしまったからである。

 それは、見回りの人間たちを上手く隠れて回避しながら進んだ先で発見した、船底への階段を下りた先にあるものだった。


「……おい、これって……」

「これは麻薬だけの問題じゃなさそうだ。どうやらとんでもない犯罪を犯している人間ばかりがこの船に乗っているらしいな」


 船底に設置されている簡素な牢屋。

 そこには多くの衰弱した人間たちが、鎖につながれて薬漬けにされている光景だった。

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