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361.港町スーランックス

 キャラーセリッシー教というインチキ宗教を使って、この国の象徴であるルディア……予言者を真っ向から否定する人間の心を巧みに利用した資金集めをして、その成分が含まれている麻薬を世界中にばらまくというとんでもないことを計画しているであろう、今回の敵。

 もし、研究所であの蝶と戦った時に粉に触れていたら一体どうなってしまっていたのか?

 考えるだけでも恐ろしいその事実だが、そうだとしたら早くそれを止めなければならないだろう。


「急がなきゃならないですけど、その南の町って言うのはなんていう場所なんです?」

「この王都からまっすぐ南に向かって川を何回か超えた場所にあって、海に面している港町のスーランックスってところだ」

「港町か。なら、エルヴェダーは連れて行けそうにないな……」


 その話をずっと黙って聞いていたエルヴェダーは、だったら……とこんなことを言い出した。


『なら、俺様はルディアを一緒に見ているぜ』

「え?」

『だってよぉ、いくらあの騎士団長がああやって言ってくれてるってもよ。騎士団とか警備隊すべてを統括できるわけじゃねえだろ。それに警備隊長が北に向かって、副警備隊長が南に向かえば、それだけで警備隊のトップ二人がいなくなるからな。だから警備をするって意味でも、俺様がここにいた方がいいだろ?』


 自信たっぷりにそう言うエルヴェダーだが、はたしてそれを宰相のレラヴィンや国王のエルシュリーが許してくれるかどうかである。

 しかし、そこは何千年も生きているドラゴンであり貿易商でもあるエルヴェダーにとっては交渉できない相手ではないと思っている。


『なーに、俺様が海とか水に弱い存在だということをちゃんと話せば向こうだってわかってくれるっての。それに植物扱うこいつだったら水にも強いっていうか、水は栄養分みたいなもんだから楽勝だぜ』

『時と場合によるがな』

『つべこべ言わずにとっとと行ってこいや。その変な名前の宗教と麻薬組織の本拠地かもしれねえ船をぶっ潰した報告、待ってっからよ』


 そう言われて送り出された一行は、目立たないように夜になってからドラゴンの姿に戻ったアサドールの背中に乗って、一気に南へと飛んでいく。

 ルギーレはドラゴンの背中に乗ったことがあるが、ジェクトとクレガーはワイバーンに乗ったことはあれどドラゴンの背中、しかもハイスピードなのは初体験なのでその風圧に慣れていない。


「ぐおっ、押しつぶされそうだ!」

「ちょ、ちょっとスピード落としてくれ……」

『仕方がないな』


 スローダウンして要望に応えたアサドールだが、南に向かって一直線に進むだけなので目的地までは割とすぐであった。

 しかし、問題も本題もここからなのである。


「ああ、あれだな……俺が見た船団だ」

「この夜の闇の中でもわかるくらいに大勢の船で来てるってことは、ヴィーンラディの目の届かない個所を熟知している人間がいるってことだろうし、念には念を入れているって感じか」

「敵の数とかってわかったりします?」

『敵の数……ううむ、どれが敵でどれが味方かはわからないが、とりあえずそのすべてが敵だと思っておけば間違いないだろうな』


 とはいえ、このままバッサバッサと敵の本拠地に近づけばこっちの存在がバレてしまうので、ここはいったん地上に降りて徒歩でスーランックスの港町の中に入り、そこから船を目指すことにした。


「さぁて、俺はこの辺の地理がまるでわからないんで頼りはアサドールさんとクレガーさんですよ」

「この国には来たことはあるが、俺もこっちのほうに来たのは初めてだ。よろしく頼む」

『まぁ……吾輩もそこまで詳しく知っているわけではないのだがな。どちらかというと警備隊の任務でお主がここまでやってきたことがあるんじゃないのか?』


 アサドールの質問にクレガーがうなずく。


「まあ、あるにはあるけど……俺は王都で生まれ育った人間だから多分あんたと同じくらいの知識しかないかもな」

『そうか……だったら中に入ってみよう』


 夜なのですっかり寝静まっているそのスーランックスの港町の中に、人間三人と人間に擬態したドラゴンが入っていく。

 潮の匂いが鼻を掠め、何もなければ新鮮な魚介類などが売られているらしいのだが、今はさすがに時間帯が時間帯なので賑わいは全くない。

 だがその反面、船を停泊させて怪しいことをコソコソやっている連中の姿や話し声がよくわかるのはルギーレたちにとって非常に喜ばしいことだった。

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