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35.道案内と正体解説

「ヴィーンラディの預言者の噂はどうやら本当だったらしいな。……だったら、その予知夢を信じなかった我からのお詫びとしてあの剣を渡そう」

「陛下!?」


 いったい何をおっしゃるのですか、と先頭を進むルギーレが驚きの声を上げる。

 それに対して、ディレーディは「ただ渡すだけではない」と話を続ける。


「あの剣の研究をしたいのは山々なのだが、今はそれよりもあの炎使いの男を倒すのが先だ。おそらくあの男に対抗できるのは、剣に選ばれたお前だけだと我は思っている」

「俺が……ですか?」

「そうだ。剣があるのはこの帝都の中にある魔術研究所の中。ただし我も研究をするためにそこに保管をすると報告を受けただけで、詳しい保管場所まではわからないからザドールに案内をしてもらえ」


 そんな会話をしつつ長い地下通路を抜け、ザドールの言うとおり街の中に出た一行。

 しかしそのザドールはディレーディを一人にしておけないので、代わりに誰か案内できる人物がいないものかとキョロキョロあたりを見渡す。

 すると一人、見知っている人物の姿を見つけた。


「あっ、おいユクス!!」

「ん……あれ、ザドール……あっ、陛下!! ご無事でしたか!?」

「なんとかな。それよりもお前に頼みがあるのだが、この二人を魔術研究所の中にある例の剣の元に案内してやってくれ」


 ザドールとディレーディの姿を見つけて近づいてきたのは、赤を基調とした騎士団員の制服の胸に、副騎士団長の地位にあることを示す階級章がまぶしく光っている金髪の若い男、ユクスだったのだ。

 燃え盛る城から人々を先導して避難させてきた彼だったが、まさか魔術研究所に二人を案内しろというのは予想外の指示であった。

 しかしこれは、これ以上あの炎の悪魔に好き勝手させないための皇帝陛下直々の命令でもあった。


「え……俺があの剣の場所に?」

「そうだ。お前なら場所がわかるだろう。あの剣があればこの火災をこれ以上広げなくて済むかもしれないんだ。頼むぞ!」

「は、はい!」


 若干戸惑ったためにあたふたしながらも、ユクスはルギーレとルディアを伴って再び城への道を戻り始めた。


「いったいこの火災は何があったんだよ!?」

「一人の賊がすべてやったんですよ! 炎の悪魔って呼ばれている傭兵とか言ってましたけど、今はディレーディ陛下の寝室でシュヴィスさんとブラヴァールさんがその男と戦っています!」


 そのルディアの報告を聞いた瞬間、ユクスの表情が一気に凍り付いた。


「炎の悪魔だって? そいつはまずいな……」

「知っているんですか?」

「ああ。傭兵仲間だった奴らからの話によく聞くやつだよ。そもそもルギーレも傭兵だったんだろ? 知ってんじゃないのか?」


 だが、あいにくルギーレは勇者パーティーに所属して世界中をめぐっていたにもかかわらず、その男の話を聞いたことはなかった。

 それをユクスに伝えると、彼は驚きの声を上げた。


「ええっ、知らねえのかよ!?」

「ああ、俺は聞いたことなかったぜ。かなり狭いコミュニティの中でしか有名じゃないんじゃねえの? あの炎の悪魔だかって呼ばれてる奴はさ」

「んー……まあまだ若い奴だし、最近になって騒がれ始めたやつだから知らねえのも無理はねえのかもな」


 そう考えなおしたユクスは二人を先導しつつ、あの炎の悪魔と呼ばれている男について話し始めた。


「その炎の悪魔の本名はヴァレル・ジュノリー。正確な年齢はわからないけど、確かまだ二十代だって話だったな。戦い方はロングソードの二刀流による双剣術と、炎の魔術を駆使する戦い方だ」


 だけど、とユクスの声のトーンが重くなる。


「そいつはあだ名の通り、炎の魔術の強力さが恐ろしいんだ。魔力がかなりあるだけじゃなくて、その魔力が濃いんだよ。ほら、魔力の濃さも魔術の効果にかかわるだろ?」

「ええ、確かにそうですね。あの男は確かに魔力がかなり濃かったです」


 その濃い魔力から繰り出される魔術の炎を、自分の武器に乗せて広範囲に飛ばすこともできるのだが、それ以上に恐ろしい攻撃の仕方があるらしい。


「あいつの剣、燃えてただろ?」

「え? いいえ、燃えてませんでしたよ?」

「そうなのか? だったらそいつはまだ手の内を隠しているみてえだな」

「え、それってどういう……」

「そのままの意味だよ。あいつは、自分の剣に炎をまとわせて攻撃をするんだ」


 それを聞いたルギーレが首をかしげる。


「それって剣が溶けたりしないんですか?」

「どうやら特注の素材を使っているらしくて、燃やしたまま攻撃ができるらしいんだ。だからそれに対抗するなら水系統の魔術か、遠距離攻撃しかねえだろう。だからあいつは炎の悪魔って異名を持ってる……っと、着いたぞ!」


 走りながら会話をしていたおかげで息苦しさを感じる三人の目の前に、目的地である茶色の外壁が特徴的な三階建ての横に長い建物……魔術研究所が鎮座していた。

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