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359.まだいたんだ?

「陛下、報告はまだもう一点ございます。よろしいでしょうか?」

「ああ……わかった。それじゃ最後まで頼むぞ」


 だが、次のジェラードからの報告もなかなかに驚きを隠せないものだった。


「はっ。それでは次の報告ですが、南側に向かわせているギルド長のデレクからの報告です」

「謎の船団の調査だな。それで?」

「それなのですが……どうやら船団以外にも厄介な連中がいるようでして」

「何?」


 エルシュリーを始めとした一同は一体どんな厄介な連中なのかと思ったのだが、その内容を聞いてまた驚愕することになる。


「キャラーセリッシー教……というインチキ宗教が、どうやら南の方から徐々に勢力を拡大しているようなんです

「へ?」

「そ、そのヘンテコな名前の宗教ってもしかして……ジェクトさん!」

「ああ、間違いないな」


 キャラーセリッシー教。

 それは研究所の連中が資金集めに麻薬組織と組んで、でっち上げたインチキな宗教のことであった。

 この国には予言者であるルディアを敵視している人間も少なからずいるので、そうした人間たちを信者にして食い物にしつつ、言葉巧みに資金を集めていたのだという。

 そしてジェラードは、ジェクトとともにそのキャラーセリッシー教に乗り込んだ人間を呼ぶ。


「宗教の内容につきましてはそこにいらっしゃるバーレンのルーデン隊長と、それからこれから呼ぶ彼の方が詳しいかと思いますので、そちらから説明をさせます」

「俺もやった方がいいんだな?」

「ええ、お願いします。あなたと一緒に先に潜入したヴァスロール副長が怪我の治療が終わりましたので、ヴァスロールが来るまでにまずは残りの報告を進めさせていただきます」


 キャラーセリッシー教の説明は後回しにして、ジェラードからその宗教が勢力を広げている件について話を進めてもらう。


「デレクたちは南へと進軍する途中で、いくつかの村や町へと立ち寄りました。その中でキャラーセリッシー教は信者を増やして資金を集めているようです」

「その資金が麻薬組織に流れていると?」

「どうやらその様です。デレクが調べたところによれば、騎士団にもその麻薬組織や宗教団体とのつながりがある者がいるようで」

「インチキね……。確かにこのヴィーンラディには人間が住める場所が限られているから、そういう事情も調べてなるべく人目につかない町や村で少しずつ勢力を伸ばしていく、といったところでしょうか」


 レラヴィンの呟きを聞いていて、警備隊の総隊長であるヴェンラトースが今後の方針を決める。


「それでは、私は全警備隊に連絡を取ってあらゆる町や村でその宗教が活動していないかを洗わせましょう」

「いいえ、ちょっと待ってくださいジルトラック隊長」

「え?」


 せっかく行動することを決めたというのに、まさかの待ったをかけられてキョトンとするヴェンラトース。

 その彼の決意を止めたレラヴィンには、ちゃんとした理由があってのことだ。


「確かにそれはいい考えですが、あまり派手に行動すると怪しまれます。それに警備隊の人間たちが動けば向こうに警戒心を与えることになるでしょう。騎士団も同じです。ですからここは、南の方で一番大きく信者たちを集めている場所をまず摘発して、そこから徐々につぶしていくのがいいかと」

「警戒心ですか……」


 それもそうかと考えるヴェンラトース。

 ならば自分がその大きな場所へと向かい、そこでいろいろと調べればいいと考えたのだが、それもレラヴィンに待ったをかけられてしまう。


「いいえ、この件に関してはルギーレさんとドラゴンのお二人、ルーデン隊長で進めていただきたく思っています」

「えっ!?」

「お、俺たちは動くなってことですか?」


 ヴェンラトースだけではなく、ハワードまで驚きを隠せない。

 だがそれでも、動けない理由はきちんとあるのだ。


「先ほど団長より報告があったように、向こうの組織にはどうやらこちらとの内通者がいるらしいとのこと。騎士団も警備隊も。ですからここは外国からやってきたあなたたちと、ドラゴンの方々にお任せしたいのです」

「わ、私は……?」


 恐る恐る手を挙げながら質問するルディアに対し、レラヴィンは彼女を行かせない理由を説明する。


「危険です。一度この国を離れたとはいえ、あなたは預言者としてこの国では有名な存在です。今回の研究所の調査につきましてもかなりリスキーでした。結果的に生きて帰ってこられたからよかったですけど、次もまた生きて帰ってこられるとは限りません」

「それは……」

「反予言者派の人間がどこにいるかもわかりませんし、今回ばかりは行かせられません。それを理解していただかないと困りますよ」

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