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355.ガーディアン

 しかし、その追いかけっこはすぐに終わりを告げてしまった。

 女が逃げ込んだのは、研究所の一番奥にある大きな部屋だったからだ。

 そこは行き止まりであり、もう女が逃げられる場所はない。そう考えているルディアだったが……。


「観念しなさい、もう逃げられないわよ!」

「しつこい女は嫌われるわよ。あなたも同じ女だったらわかるでしょ?」


 そう言いながらルディアにナイフを向けてくる女だが、それでもルディアはひるまない。


「わかるわよ。でも、そもそも嫌われるとかそういう話以前の問題だし。私の仲間を傷つけておいてよくもそんなに平然としていられるわね?」

「だって私にとっては仲間なんかじゃないし。敵だし。だからその敵の仲間であるあなたも、ここでくたばってほしいんだけどね」


 でも、と女はナイフを下げる。


「あなたと遊んでいる時間はないのよ。悪いけど、遊び相手は他のに任せるわ」

「他の?」

「そう、他の。あなたが誰なのかっていうのは知っているから、それ相応のちゃんとした相手を用意したわよ」


 どうやらルディアのことを知っているらしいこの女は、ナイフをしまって代わりにズボンのポケットから取り出した細長い筒についている赤いボタンを押した。

 ……だが、何も起こらない。


「何よそれ? ハッタリ? じゃあ私の方から……」

「ふっ!」

「ぐえっ!!」


 前蹴りをルディアに食らわせて先制攻撃に成功した女は、起き上がろうとする彼女の頭をグリグリと踏みつける。


「ぶっ……」

「誰が今すぐ来るっていったのよ? もうちょっと待ちなさいよね」

「ぶええ……」

「あ……来たわね。それじゃ私はここで退散させてもらうわね!」


 とどめにルディアの頭を思いっきり蹴り飛ばし、女は窓を開けて迷いなく飛び降りていった。

 その頭の痛みを何とか回復魔術で回復していたルディアの耳に聞こえてきたのは、ウイーン、ガシャーンという聞きなれない音だった。


(な、何なのこの音……!?)


 意識も回復したので頭をさすりつつ起き上がったルディアの視界に飛び込んできたものは、自分の背丈の二倍はあろうかという体躯を持っており、横幅がかなり大きい金属製の機械兵器だった。

 言うなれば、馬車の人が乗るための車の部分ぐらいの大きさがある。

 そんな巨体に足が生えていて、全体が丸っこくてさらに腕のようなものまで生えている。

 そして背中からはうねうねした触手みたいなものが生えており、先端には物を掴むためであろうか……三本の金属製の指がついている。

 一目見て直感した。この機械兵器はただものではないと。

 どこから現れたのかをきょろきょろと周囲を見渡して探ってみれば、奥の壁の一部が横開きに開いているので、その中に格納されていたのだろうと一瞬でルディアは理解する。


(これって……)


 そういえば、まだ自分が予言者としてこの国にいたころに風の噂で聞いたことがある。

 現在開発中の次世代の兵器が、魔術研究所のどこかにある。

 それはあくまでも噂であり、王族関係者などの一部の者しか知らず、予言者である自分ですら教えてもらったことはなかった。

 しかし今、こうして目の前に仁王立ちしているこれこそがもしかしたら……。


(だからこの部屋、かなり天井が高いのね!?)


 そもそもこの兵器をどうやってあの女が動かせるようにしたのか。そして人一人が通るのがやっとのドアしかないこの部屋からあんな兵器を出すのはどうやるのか?

 いろいろと突っ込みたいルディアだが、それをやるのはこの機械兵器にではなくてあの女にだろう。


(くっ……これじゃ逃げられないわね!)


 そのドアを塞ぐようにして機械兵器が立ちふさがっているので、部屋の外に逃げることはできないだろう。

 だったらさっきの女のように、自分も窓から飛び降りるか?


(いや、ダメだわ……そんなことをしたらこの機械兵器が暴走して研究所をメチャクチャに破壊しかねないわよ!!)


 ならばここで自分がやれるだけやるしかない。

 あの女から何としても話を聞き出さなければならないので、ルディアは身構えて魔術を詠唱する。

 だが、それを察知した機械兵器はルディアに向かって両腕を伸ばした。


「……!!」


 咄嗟に魔術の詠唱を中断し、ルディアはそばにあるテーブルの下へと潜り込んで身を低くしながら全速力で這う。

 その瞬間、さっきまで自分が立っていたところにその腕の先から発射された弾丸の雨が襲い掛かった。


(な、何なのよあれ!? 反則もいいところじゃない!)


 今までいろいろな生物兵器などと戦ってきたルディアだが、今回のもかなり手ごわそうだ。

 やっぱりこんな機械兵器と戦うのを止めて逃げ出した方がよかったかと思った時にはもう全てが遅く、嫌でも戦って倒さなければ彼女を見逃してくれなさそうだった。

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