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348.研究所の黒幕

 撃たれてしまったルギーレとルディアは、なすすべなくその場に倒れてしまった。

 それを傍らで見たエルヴェダーはもちろん助けに入ろうとするものの、サルインの槍によって妨害がされる。


「どっち見てんだよ。おまえの相手は俺なんだよ!」

『くっ……!』


 こうなったらもうやむを得ない。

 エルヴェダーはこの研究所がもしかしたら最終的に崩壊してしまう可能性がある事も頭の片隅に置きつつ、今の修羅場を脱出するためにさっさとまずはこのサルインとの決着をつけることにする。

 それはもはや、ドラゴンと人間との圧倒的な力の差を見せつけられるだけのものとなってしまった。


「うおらああああああああっ!!」

『……むん!』

「え?」


 突き出された槍を瞬時に見切ったエルヴェダーは、自分の槍でそれを受け止めたり弾いたりするのではなく、左手でぐっと柄の部分をつかむことに成功する。

 そして人間の力では到底抗うことができない圧倒的な握力で、槍の動きを完全に封じてしまった。


「なっ……くそ、離せ!!」

「おい、離せっ!!」


 先ほどルギーレとルディアに向かって発砲して、二人を数秒でノックアウトさせてしまったサルインの相棒も助けに入るが、エルヴェダーはそんな彼にも容赦はしなかった。

 向けられたハンドガンの銃口に対し、右手で握ったままの自分の槍を突き出してそのハンドガンを弾き飛ばしたのだ。


「はっ!?」

『てめぇらに命令される筋合いなんてねえんだよ、この弱っちい人間どもがよぉ……』

「な、ななな何だこいつ!?」


 エルヴェダーの本当の正体が、まさかこの世界を看視しているドラゴンたちの中の一匹であるなどとは、到底この二人は夢にも思っていない。

 それでも必死で抗おうとする二人に対し、まずエルヴェダーはハンドガンを弾き飛ばした槍を使ってヴィルリンの胸を突き刺した。


「ぐふっ!?」

「なっ!?」


 一瞬のうちに胸を刺されて絶命したヴィルリン。

 その現実を飲み込む前に、今度はサルインが掴んだままの槍ごと片手で振り回され始めた。


「う、うおああああああっ!?」

『ふん!』

「うわああっ!!」


 この状況であれば、自分から槍を手放せばこれ以上振り回されずに済んだはずだったのだが、いきなり人外の力を発揮してきたエルヴェダーを相手にしていたことで自分のポジションまで頭が回っていなかったのだ。

 水が天井から降り注ぐ中で振り回されたサルインは、エルヴェダーが彼の槍を手放したことによって槍ごとそのまま壁に吹っ飛んで行ってしまった。

 しかし、そんなサルインを見てもエルヴェダーは容赦しない。


【なめやがってクソ馬鹿どもが~、水を被っていても心の火はつきっぱなしだぜ俺様はよぉ~~~!!】


 心の中でそう考えているエルヴェダーの口元には、いつの間にか小さく笑みが浮かんでいた。

 それに気づかないままではあるものの、何とか体勢を立て直して再び襲い掛かろうとするサルインに対し、エルヴェダーは彼の首を掴んで片手で上に向かって持ち上げる。


「うぐぅ、あ、ああああっ!?」

『答えろよ。この研究所を牛耳っているのは誰だ? 誰かが地下のあの工場を動かすように指示を出したんだろう?』

「ぐ、ぐるじぃ……!!」

『言葉出せるなら答えられるんだろ? おら、さっさと答えやがれ!!』


 何だこいつのパワーは。

 さっきまで槍を突き出してきていただけのこいつじゃない。優勢に立っていたはずだった自分が、今ではこうして首を持ち上げられて尋問されている。しかも片手で持ち上げられているというその事実が、サルインにとっては信じられないものだった。

 しかしこの状況から一刻も早く抜け出したいと思っているサルインは、首の苦しさに耐えながらも何とかエルヴェダーに説明する。


「お、女……だ!」

『女ぁ?』

「そー、だ! 黒っぽいシャツを着ている、髪の色が二色の女だ!! そいつがここのボスだ!!」

『……へぇ、あいつかよ』


 この場所に来る前に、地下で初めての遭遇を果たしたあの逃げ足の速い女。

 あいつがまさかここの研究所を操っている黒幕だったなんて。


『わかった。いいことを聞かせてもらったぜ』

「だ、だったら下ろしてくれ……」

『ああ、下ろしてやるよ』

「……ぐがっ!?」


 首の骨がバキッと音を立てて折られ、サルインがそこで絶命する。

 それを確認したエルヴェダーは、お望み通り地面に投げ捨てるようにして彼を下ろしてやった。


『お前を殺してからな』

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